第三十七節 ラップ音

ドン.

壁から音が…

ドン.

床から音が…

パキパキパキ…

天井にラップ音が響いた.

わたしはドアに手をかけ,逃げようとする.

ガチャガチャ…開かない――!

まるで,外から押さえられているかのように,ドアは開かない―――

パキパキパキ…バキバキバキ

大広間に,閉じ込められた人々が一斉にドアに体当たりした瞬間―――

――天井にラップ音が再び響いた.

取り乱す者……

泣き喚く者……

扉を壊そうとする者……

バタンッ……!

烈しい音を立て,観音開きの扉が開く.

水の詰まった袋が破れるように,人々が廊下に流れ込む.

パチンッ――!

烈しい音とともに,天井の灯りが堕ちた.

――ピチャッ

石の壁に血液が飛び散る.

グレーと赤のコントラストが,美しく映えた.

血が,ダラーっと壁を滴り落ちてゆく.

ポタッポタッと床が血に侵食され,染まる.

大広間から流れ出し,ここに来た人々が絶句する.

大広間とともに,壁の照明が落ち,辺りは真っ暗になった.

人々は逃げ惑い,絶叫が私の耳をつんざく.

人々が散りゆく.

大広間に戻る者,先に進む者――

大広間に戻った者は,一瞬にして,そこに溶けた.

私立ちが去ると,血染めの廊下に静寂が戻った.

私たちが去ると,血染めの廊下に静寂が戻った.

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