【短編】ヒカリノソノ
ムスカリウサギ
光の園
①
赤や緑や、
青や光。
ぐちゃぐちゃテクスチャ、しっちゃかめっちゃか、
ぴかぴか、ちかちか、道化だらけ。
「やあやあ、ようこそ。光の園へ」
ゲートの手前には、一人の道化。
手にはステッキ、派手派手な服。
真っ赤にぷくんと膨れた風船、
ぐいっとわたしに差し出して。
「貴女に幸運が訪れますように」
いやいや、やめてよ。
薄気味悪い。
ここはどこ?
尋ねるわたしに、道化はぺろりと舌を出す。
「光の園だよ」
そうじゃない。
②
赤い風船、緑の風に、
青いお空へ飛んでいく。
鮮やかな色、原色の色、ちかちか、まばたき、やかましい。
「寄ってらっしゃい見てらっしゃい、愚かな
騙るの間違いじゃないのか?
いや、道化なりの美学なのかと、
ちょっぴりこっきり、思ったけれど。
無視だシカトだ全力スルーだ。
「まあまあ、そんな寂しいこと言わないで」
えぇい、離せ近寄るな。
「話せ? 地下寄るな? わかった地上で話そうか」
ダメだ、話が通じねぇ。
③
赤色鏡、
緑の
青い大人がか細く泣いてる。
ぐすぐす、すんすん、時々、ちらちら。
「ああ私は憐れな囚人さ、ちら」
こっち見んな、
いちいちいちいち鬱陶しい。
ウザイ大人は相手にしちゃダメ。
見えないように見ないように。
「おいおいキミキミ。こんな阿呆、相手にしなくちゃ損だよぉ?」
自覚があるならやめてください。
いい大人なんだからやめてくれって。
「ははは、やめないよ。これがわたしの仕事だからね」
ウザ。
「そうさ、わたしは自由人なのさ」
ゅ、が、ゆ、に大きくなったね。
そしたら、頭が濁ってしまったの?
ああ、大人になるって哀しいことなの。
④
赤い四角に、緑の三角、
青い花丸、ぷかぷか浮いて。
いよいよ意味がわからない。
浮いてる図形は一体なぁに?
図形、数系、崇敬の念を。
文章、勲章、揃えば優勝。
犯罪、万歳、叫べよ喝采。
嫌だ、嫌だと、
ふわふわゆらゆら、やって来る。
やあやあようよう、手を挙げて。
「おやおやとうとう、お帰りで?」
えぇえぇところで、どちら様?
⑤
赤い光に、緑の光、
青い光が混ざってぐちゃぐちゃ。
ド派手な道化は、あざとく笑う。
「如何でしたか、光の園は?」
ちかちか光がかちんと来たの。
「それはそれは」
キレやすいのよ現代人。
「どうしてどうして」
お見知り置きを。
「貴重なご意見感謝いたします」
どうせモニタの向こう側。
偽造捏造脚色まみれ。
「それではどうぞ、お帰りはこちら」
光の園から逃げた先は。
真っ暗闇の、わたしの世界。
【短編】ヒカリノソノ ムスカリウサギ @Melancholic_doe
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