第2話
了解しました。
それでは、**第1話(全3,000文字予定)**を、1,000文字ずつ3分割でお届けします。
タイトルは、物語の導入にふさわしいものをつけて進めます。
---
第1話 《奇跡の門》
[1/3 - 導入]
深い霧がカテドラルの森を包む朝――鐘の音が、静かに世界を起こし始める時だった。
聖堂の扉の前に、ひとつの揺れる命が置かれていた。
淡い産衣にくるまれた赤子。
濡れた石畳に抱かれ、泣き声もなくただ冷たさに震えていた。
扉がきい、と軋んで開く。
「あら……?」
白い修道衣の裾を揺らして、シスターが一人姿を現した。
その名はエリス。若くも慈愛に満ちたカテドラルのシスターだ。
「まあ……こんなところに、赤ちゃん……?」
足元を見た瞬間、彼女の目が驚きに見開かれる。
エリスはそっとしゃがみ込み、震える小さな命を両腕で包んだ。
「あらあら、こんな場所に捨てられて可哀想に……。でも、ね――」
その小さな体を優しく抱きしめ、額に唇をそっと寄せながら、彼女は囁いた。
「私たちのこの“場所”に捨てられていたことが……あなたにとって、奇跡でありますように」
その瞬間――赤子の泣き声は止んだ。
不思議なほどしっかりと、赤子はエリスの顔を見つめた。
その瞳は、生まれたばかりとは思えないほどに静謐で、光を宿していた。
---
赤子はその日、カテドラルの庇護を受け、「フェリス」と名づけられた。
その名には、"信じる者"という古語の意味が込められている。
以後、フェリスはエリスを“母”と呼び、
朝には祈りを捧げ、昼には経典を学び、夜には星空を見上げる、平穏な日々を重ねていった。
けれど、それはほんの短い“静けさ”に過ぎなかった。
運命は、この小さき命を決して平穏には許さない。
そして――“それ”は、6年目の朝に訪れた。
---
次に、**[2/3 - 祈りと幻影]**を続けて執筆します。準備が整いましたらお知らせください。
ありがとうございます。
それでは、第1話の**[2/3 - 祈りと幻影]**をお届けします。
---
第1話 《奇跡の門》
[2/3 - 祈りと幻影]
六年が経った。
少年フェリスは、今や寺院の人々にとっても欠かせぬ存在となっていた。
静かで聡く、誰よりも丁寧に祈りを捧げる姿は、年嵩の修道士さえ感心するほどだ。
そして、彼が何よりも大切にしている日課は――
“女神メイガス”への朝の祈りだった。
「メイガス様……今日も、皆が穏やかでありますように。
母さんが笑っていますように。パンが焦げませんように……あ、昨日の小鳥も無事でいますように……」
祈りは、まるで友だちとの対話のようだった。
像の前で手を合わせるその姿に、誰もが微笑ましさを覚えていた。
しかし、その日――六月の朝、やわらかな陽光が差す礼拝堂で、
フェリスは、**“ありえぬ光景”**を見る。
いつものように祈りを捧げていた彼の前で、
女神像が、淡い金色の光を帯びて揺れ始めたのだ。
空気が重くなる。
何かが、来る。
フェリスは息を呑んだ。
次の瞬間、像から溢れ出た光が、ひとつの人影を形作った。
揺れる金髪、透き通る衣。
母のような、姉のような――慈しみに満ちた瞳を持つ、神の姿。
「……メイガス、さま……?」
小さな声がこぼれた。
幻影は、ゆっくりと微笑む。
『早く、大きくなって……わたくしの“ファイノール”……
そして――運命に、立ち向かって』
それだけ言い残し、幻影は淡く溶けていった。
---
驚きと興奮のまま、フェリスは母エリスの元に駆け込んだ。
彼の目は真剣で、震える手は言葉よりも語っていた。
「……祈っていたら……メイガス様が、現れて……僕に言ったんだ。“ファイノール”って……!」
エリスは驚いたように目を瞬かせる。だがすぐに、柔らかく首を振った。
「夢……だったのかもしれないわ、フェリス。きっとあなたの祈りが強くて……想いが形になったのね」
「違う! 本当だった!」
「……でもね」
エリスは少し困ったように微笑む。
「もう少し大きくなっても同じことが起きたら、今度は本当に信じるわ」
その言葉に、フェリスは唇を噛んで俯いた。
だが、胸の奥で確かに火が灯っていた。
――“ファイノール”とは、何なのか。
その問いが、彼の中で静かに芽吹き始めていた。
---
続いて、**[3/3 - 再びの啓示、そして約束]**を執筆いたします。
よろしければ、このまま続けます。
ありがとうございます。
それでは、第1話の完結となる**[3/3 - 再びの啓示、そして約束]**をお届けします。
---
第1話 《奇跡の門》
[3/3 - 再びの啓示、そして約束]
それからさらに六年が過ぎ――
十二歳の誕生日、つまり彼がこの寺院に拾われた“記念の日”がやってきた。
朝。
いつものように、誰よりも早く起きたフェリスは、女神メイガス像の前に座っていた。
今日の風はあたたかく、カテドラルの塔からは鐘の音が祝福のように響いていた。
「……僕は、六年前のあの言葉を覚えている」
独りごとのように呟いたフェリスは、そっと瞳を閉じ、両の手を重ねる。
――再び、祈りが始まる。
「メイガス様……あなたは、あの日、僕に『運命に立ち向かって』って言ったよね。
……でも、まだ僕には、それが何か、分からない。
だけど……今日、少しだけなら、分かる気がするんだ」
言い終えた瞬間。
――光が、再び降った。
目の前に、あの金色の光が現れ、揺れ、形をとり、
六年前と同じ、いやそれ以上に、はっきりと姿を現した。
女神、メイガス。
だが今回の彼女は、確かに“語りかける者”として、そこにいた。
『……また、大きくなったわね……わたくしの“ファイノール”。
まだ、運命の時ではないけれど……。あなたは、その日へ向かって、歩いていくの。
決して逸れてはいけない。すべての“ホリクス”が、あなたに宿るその時まで――』
その言葉とともに、女神の幻影は再び光となって消え去った。
だがフェリスの心には、もはや迷いなどなかった。
---
すぐに母エリスへ報告に向かったフェリスは、かつてと同じ言葉を口にする。
「また……メイガス様が現れたんだ。前よりも、はっきりと」
今度ばかりは、エリスも否定しなかった。
彼の瞳を見た時、
それは――幻想などではないと、もう母の勘で分かってしまったのだ。
「そう……本当に、また現れたのね」
フェリスは頷く。
「でも、メイガス様は“まだ時じゃない”って……そう言ってた」
「そう。なら、焦ることはないわ」
エリスはそっと彼の髪を撫でた。
「……あと、数年だけ様子を見てみましょう。それまで、あなたらしくあってね」
「うん」
その日、少年フェリスの心は静かに強く、ひとつの約束を結んだ。
“その時”が来るまで、自分は進み続ける。
女神が言った「ファイノール」という言葉の意味を、きっとこの手で見つけるのだ、と。
---
そして、3年後――
人が十五歳を迎えると同時に行われる《成人の儀式》の日が訪れる。
その儀式の場で、
フェリスはついに自らの宿命を知ることになる。
――五つの
“調和者(ファイノール)”として覚醒し、
女神メイガスの「我が子」として選ばれし存在であることを――。
これは、その運命に至る“始まり”の物語である。
(第1話 完)
---
ご希望どおり、全体でおよそ3,000文字の構成でまとめました。
この続き(第2話)もご希望があれば、成人の儀式と“属性との共鳴”の描写へ進めてまいります。ご指示ください。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます