第6話 蛙卵僧侶

 この日カエルに飲まれた悲惨な光景──

 廊下中に溢れかえったカエル

 圧で窓ガラスが割れ、教室になだれ込む

「きゃー!」

 女子生徒の悲鳴

 蛙に体中張り付かれ──

 裾の隙間から体の中にまで入ってくるよ。

「うぼえっ」

 口の中から入り込み、呼吸が出来ない先生。

「なにこれ……」

 突然カエルの卵が産まれて来て戸惑う生徒。

 産まれてきた卵はたちまち巨大化し、弾けると……出てきたチビカエル。

 モップで叩き潰して弾ける内臓。

 しかし増殖し続けるカエル。

「これが……世界の終わりか……」

 校舎の裏手から、騒がしい校舎を見上げる私。

 時折窓から溢れたカエルが落ちて来る。

 腕に抱いた華久良の顔に落ちて、バウンドする。

「……」

 泡──卵を吐ききって、今は穏やかな顔で眠っている。

「カエルがいっぱい」

 ぼーっと見上げるアッ君。

 足元アッ君の肩に手を寄せるフレンドリーさん。


「──何を呆然としている」

 そこにスタッと降り立った影。

「誰?」

 振り向くと、僧侶の格好をした坊主の男。

 すっとした顔をしてる。きっと髪があればイケメンなタイプだろう。

「世界はまだ終わらないぞ、私がいる限りな」

 そしてその首にかかった数珠は──カエルの卵が連結した輪っかだった。

「あ、ケイランさんだ」

 知ってるらしいアッ君。

「誰それ?」

「蛙の卵と書いて、蛙卵ケイランと申します」

 手を合わせて頭を下げる。蛙卵。

「近所のお寺の人」

 僧侶の袖を引っ張るアッ君。

「蛙のお寺なの?」

「お寺と神社をハイブリッドでやってまして。神社の方でカエルを祀っております」

「そんなのありなんだ」

「普段は僧侶の方がお葬式などで儲かるのですが……神社の方が特色が出しやすく……全国のカエル愛好家の聖地として、繁盛させていただいております」

「果たして信仰とはいかに」

「あと、初詣なんかは、やっぱり神社が人気ですね」

「……なんか良く分からないけど、蛙に詳しいってことですね」

「ええ……」

 一歩ずつ踏み出し、校舎へと近づく蛙卵。

「この学校で、蛙の解剖が行われ過ぎたのでしょう……今まで苦しくもひらかれた、蛙たちの怨念が、形となったのです」

 ついさっき……解剖したカエルの顔が目に浮かぶ。

「どうすれば……彼等の苦しみをほどくことが出来るのですか……?」

 なんか私まで言葉が巫女スタイルだな。

「それは……カエル達が満足できるように──彼等が受けた痛みと同じように、生きた人間を解剖して見せてやればいいのです」

「そんな……」

「人間が自分たちと同じように苦しむ姿を見れば、満足して成仏してくれるはずです」

「……同じようなこと、言い方変えて二回言いましたね」

「ちょっとわかりにくかったかなと思って……」

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