第5話 保健室

 校内を走る私、

「あ、ごめん」

 途中生徒にぶつかりそうになりながら。

 一階にある保健室はさほど遠くない。

 走った他ので勢い余ってちょっと行き過ぎて、戻って入ろうとしたら──

「だめ……湾田わんだー君……あなたと私は……生徒と保健室の先生」

「そんなこと……どうだっていいじゃないか……! 好きだ……保健室の先生……!」

 え、何この面白そうな展開。

 誰もいない……こっそり足を忍ばせて保健室の中に入る。

 ベッドの方から声が聞こえる。カーテンの裾からこっそり中をのぞく。

 思いのほか近くて、目が合いそうだったので急いで身を引く。

「湾田君……!」

 白衣の裾がこすれる音……くちゃくちゃ音が聞こえる。

 気になって覗き込むと……めっちゃキスしてる。

 ベッドの端に座って、向かい合って──

 お互いの顔が重なって、口元は見えないけど、背中が揺れてる。

 ……わー。

 倒れ込む。白衣を脱がして、その下のブラウスのボタンを開ける。

 スカートの下に手を入れて……

「うわっ……」

 湾田君の背中がピクリと震える。

「……カエル?」

 そしたら中から出てきたカエル。

 起き上がった先生。

 またスカートの中からカエルが出て来る。

 ポンポン、ポンポン……

「ギャー!!」

 湾田君の悲鳴。

 段々数が増えて来て、カーテンの間から濁流の様に流れ出て来るのです。


 保健室から流れ出たカエルの群れは廊下を流れていく。

 私も一緒に流された。顔にカエルが張り付いてる感覚が気持ち悪い。

 十字になってる所で群れから逃れ出て、ケバブカーのある外へと出る。

「フレンドリーさん!」

「おお、友達さん。丁度いいところに救急車、通ったよ」

 見ると小さいおもちゃの車に乗った五歳ぐらいの少年がいる。

「アッ君ね。救急車ごっこしてるの」

「何の役にも立たねえよ!」

「アッ君に失礼だぞ! せっかく来てくれたのに」

「それはごめんアッ君──華久良」

 倒れたままほっとかれてる華久良。

 手足がぶらぶらしてて糸の抜けた人形みたい。

 口からはいた泡──

 なんかさっきよりも粒が大きくなってて、透明の中に黒い斑点が見える。

「これカエルの卵だ!」

 なんだろ、流行ってんのかな、カエルの出産。

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