キミはボクの太陽。

ヒロまるだし

キミはボクの太陽

むかし、むかしの大むかし。

深い深い森の中には、魔物がいるといわれていた時代のおはなし。


ボクは小さい。リンゴよりかは大きくてかぼちゃよりかちょっとだけ小さい。


ニンゲンのように手はあるけど細いしチョコンとしか生えてない。でもニンゲンと違って足はない。


そしてボクの色はまっくろくろっけだ。


ボクには友達がいない。太陽の光すらも通らない深い森の中に住んでいる。


ボクは太陽から嫌われているから、太陽の日差しを浴びれない。太陽ともトモダチにはなれない。


でもそんなボクにも、トモダチになれたのはお月様だ。

夜になって、木に登った上にあるお月様をずっと見ていた。


喋りかけても喋らないけど、たくさんの宝石のようなキラキラした中で一番明るく照らすお月様とはトモダチになれたけどやっぱりさみしい。


ボクはやっぱりひとりぼっちだ。


そんなある日、小さな泣き声がした。

ニンゲンの子供の泣き声だ


ボクは近くまで行くと泣いてる子供がいる。


「どうしたの?」

ボクは声をかけたが幼い少女はずっとないていたがボクをみて、キョトンとした顔をしていた。ニンゲンの子供から泣かれたり叫ばれたりされないのは初めてだった。

「あなたはだぁれ?」

だれと聞かれてもボクにはおかあさんもいなければ、おとうさんもいない。

「この森に住んでるマモノさ」

「マモノ?ふふふっカワイイマモノさん」

「マモノってなまえじゃない。ボクにはなまえがないんだ。」

「じゃあ!まっくろくろっけだから、クロちゃん」

「クロ?クロか…いい名前だね」

ボクがニコリと笑うとカノジョもニコリと微笑んだ

「私はソヨだよ。道に迷っちゃって…帰り道がわかんないの」

「じゃあボクが案内してあげるよ。」

ボクは森の外まで案内してあげた。少女はボクの方をみる。

「お礼に私の家に招待したいから一緒にきてよ!」

「ゴメンね。ボクは太陽から嫌われてるから。一緒にはいけないよ。」

「そっか…また会える?」

「君がここに来てくれたらまたあえるよ。」

「じゃあ!またね!」

ソヨは、見えなくなるまで手を振った。


おなかがすいたなぁー。と思っているといい匂いが漂ってきた。

それはだんだんと近くになってくる。

トコトコトコと足音まで聞こえてくる。

ボクは木のもの影からひょこっと顔を出すとソヨがいた。


ソヨは嬉しそうにボクに駆け寄ってくる。

「これ!道案内してくれたお礼。」

布を取ると、中から現れたのは見たこともない食べ物だ。

「コレは何?」

ボクは首を傾げてソヨをみると。

「私が焼いたチェリーパイだよ。」

「チェリー?パイ?」

ボクは細い手で僕よりも大きなチェリーパイを食べる。

サクサクの食感にトロトロしたものが甘酸っぱさをかんじさせる。

「おいしい!!!チェリーパイ!おいしい!」

ボクはお口いっぱいに頬張ると、お口の中はサックサクしている。

嬉しそうに食べるボクをみてソヨも嬉しそうだ。


「ねぇ!クロってトモダチいないの?」

「いないよ?モグモグ…」

ボクはチェリーパイを食べながらソヨを不思議そうに見つめると、ソヨは手を広げた。

「じゃあ私とトモダチになろうよ!」

トモダチ?ソヨとトモダチ…

ボクは嬉しくてピョコピョコと何度もジャンプした

「嬉しい!!ソヨとトモダチだ」


「じゃあ今日から私があそびにくるよ。」

ソヨとは色んな話をした。

森の外のお話をボクに話してくれた。森の外には不思議な事がいっぱいだった。

ユラユラと揺れながら聞くボクにソヨもまた嬉しそうに話をする。


ひとりぼっちだったボクに初めてニンゲンのトモダチができた。

その日からソヨは山へと遊びに来てくれた

雨が降っても風が吹いててもソヨは遊びに来た。

ソヨは少しずつ大きくなっていく。

「ソヨはあんなに小さかったのに、大っきくなったね」

「ニンゲンだもん!そりゃあ成長するよ!いまで14つ」

「ボクは小さいままだよ。」

「クロちゃんはその大きさでいいんだよ!その大きさがいいんだよ。」

ソヨはいつも会うと嬉しそうにニンゲンの友達の話をしてくれた。


ソヨにはトモダチ以上に好きな人がいるらしい。

ソヨは頬を赤らめて話をしてくれた。その表情はとても幸せそうだ。

「私はね、その人に恋をしているの」

「コイ??コイってなんだろう?」

ボクは傾げていると、ソヨはコイについて教えてくれた。

「その人の事が特別で、その人のことしか考えられない事だよ」

「じゃあボクはそのコイとやらを応援するね!」

「ほんと!ありがとう!!!」


雨が降った日、ソヨは森に来て泣いていた。

僕はソヨの近くにいって肩に登り、泣いてるソヨの頬にスリスリとする

「暖かいね…クロちゃんは…」

「大丈夫だよ!ボクがずっとそばにいるから!」


次第にソヨは元気になって行った。


ソヨは20つになった。

相も変わらずソヨは嬉しそうに僕の所にきてくれた。

「今日はねー!これをやいてきたんだ!」

それはチェリーパイだった。

何度食べても、ソヨが作ってくれたチェリーパイはおいしい。

モグモグするボクにソヨは笑顔を向けてきた。

「明日からは、夜になったらこれるよ。」

「そうなの!!やった!」

ピョンピョンと飛び跳ねるボクにソヨは微笑んでいた。

「だからね!夜になったら連れていきたい場所があるから一緒に行こうね」

「うん!一緒に行くのだ!」


ある日の夜、ボクはソヨに連れられて夜道の中を歩いていると川のせせらぎが聞こえてくる。野原の真ん中にポツンと箱のようなものにあかりが灯っていた

太陽みたいに眩しい明かりではなく、優しいあかりだった。


「あれはなに?」

ボクが聞くとソヨはボクに微笑みかけた。

「あれが私が言ってたニンゲンのおうちだよ。」

「おうち!」

ボクがピョンピョンしながら、ちかくまでいくと

ソヨもうれしそうにドアを開いておうちの中をみせてくれた。


何もかもがキラキラしていた。木の香りがする。

ソヨはいった。

「天井なら太陽が差し込まないから、もしクロちゃんがいいなら寝泊まりしに来てね。」

「ほんと!!うれしい!!」

ピョンピョンはねるボクに同じようにピョンピョンとはねだした。


ソヨは24つになるとお腹の当たりが膨らんでいた。

ボクは不思議に思ったからソヨに聞いてみる。

「赤ちゃんができたの。だからあんまり山には行けなくなっちゃう。」

頬を赤らめながら幸せそうにお腹を撫でるけど、ボクを見て申し訳なさそうにしていた。

「えへへ。ソヨが幸せそうならよかった!じゃあボクが会いに来るね!」

「ありがとう」


ソヨに赤ちゃんが生まれたみたいだった。

ソヨはボクに赤ちゃんを窓越しからみせてくれた。


赤ちゃんは嬉しそうにボクに手をふる。

うれしいけど、赤ちゃんに対してソヨは、見たことない表情をむけるのは、ちょっぴりさみしい。


「ムタっていう名前にしたんだ。」

「ムタくんかー!いい名前だね!」


夜になるとボクはソヨの家にいく。

ムタくんは大きくなってソヨと出会ったくらいまでに大きくなった。ボクともあそぶようになった。

ソヨともトモダチだけど、ムタくんともトモダチになれた。


追いかけっこをしたり、おにごっこをしたりしてあそんだ。

ムタくんが大きくなるにつれて、ソヨの腰は曲がっていくし、身体も小さく細くなっていく。

そして昔の面影はあるけど、顔はシワシワになっていく。でも、ボクはソヨともトモダチだ。


ソヨは外に置かれた椅子に座っていた。

ボクがやってくると嬉しそうにほほえんでいる。

「今日も会いに来てくれたのかい?うれしいねぇー…」

「そりゃあくるさ!ボクはソヨとトモダチなんだから。」

ソヨはびっくりした顔をした後、嬉しそうに笑っていた。

「シワシワになったワタシをクロちゃんはトモダチと呼んでくれるのかい?」

「あたりまえじゃん!ソヨはボクのトモダチだよ」

「また会いに来てくれるかい?クロちゃん」

「あたりまえさ!また夜になったら会いに来るよ」

ソヨは山には来なくなったけど、夜になるとボクがあいにいった。


ソヨはだんだんと目が見えなくなって耳も聞こえなくなっていく、だからボクは肩に登り耳元で話すと「そうかいそうかい!」と嬉しそうに話を聞いてくれた。


とある日、

ソヨは元気が無くなっていた。コホンコホンと咳をする。

「あと何回、クロちゃんと会えるんだろうね」

またコホンコホンと咳をする。

「何回でも会えるさ!ボクがここにくる。絶対に夜になったらまた遊びに来る。」

「クロちゃんは優しいねぇー。私も長生きできるように頑張らなきゃねぇ…」


ソヨと見上げた夜空のお月様を眺めた日。

ソヨはボクを見つめた。

「ねぇークロちゃん。」

「どうしたの?ソヨ」

「あなたは魔物なんかじゃない。」

首を傾げて聞くボクにソヨがいった。

「あなたは山に住む妖精さんだよ。」

「ようせい?」

「人々に笑顔を届けてくれる。優しい心を持った真っ黒い妖精だよ。」

「えへへ、ソヨがそういうんならそうなんだろうね。」

ソヨはまん丸いお月様を見てボクにいう

「クロちゃん…私がもし居なくなったらお月様を眺めてね」

「どうして?」

「ワタシはお月様の所にいるとおもうから、あなたをずっと見守っているから。」


雨がポツポツと降った日

ボクはソヨの家にやってきて、窓からチラリと家の中を覗くと家族があつまっている。

何やら重苦しい空気だ。

ベッドに寝転がるソヨの姿があった。

寝転がっていたソヨがボクに気がついた。

「クロちゃん…きてくれたんだね。」

「でも、今日で最後だよ…」

「ずっと、そばに居てくれてありがとう…」

ソヨは一筋の涙を流して眠ってしまった。

ボクはぴょこぴょことジャンプするけど、そよは目を開けることは無かった。


十字架の石の下にソヨの匂いがする。

お土の中に入ってしまった。ソヨとはもう会えない。

寂しくて、悲しくて、ポロポロと涙があふれてきた。

これがソヨが言っていたお墓というものなのだろう。


ポロポロ泣くボクはソヨのお墓にスリスリと頬をこすりつける。

「ソヨ…また遊びに来るね!」

ボクはソヨの眠っているお墓をスリスリするとその場から立ち去った。


ボクは満月が出た日ソヨが言っていた夢を見る。

ソヨは夢の中で小さかった。

長く遊んだ後、太陽の光がソヨの後ろからさした。

ボクに向けて手を振る。

「またね!クロちゃん」

「うん!またね!ソヨ。」



ソヨはひとりぼっちのボクの闇を永遠と照らしてくれたキミはボクの太陽トモダチだから。


やっぱり君とはまた出会いたい。また…どこかで…








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