31話「厄介仏」

明寂。つまるところの早朝にて。

日が昇る様が見られ、離れ離れとなっていた七不思議達が集合する。

「なんか……色々と大変だったね。」

「ね……。」

「……そうなの?」

現在の場所は美術室。

集まっているのは三番目の2人と、仲良く眠っている(新しく入った)二番目と四番目の2人、そして七番目のボク。あと……一応五番目もいる。

「…………あれ、故ちゃんは?」

「知らない……けど、気配が楽園の方にあるから死んだんだと思う。」

「そっか……。」

「……あの、憩さんは」

「知らん。どっかに居るだろ。」

そう口を挟んだのは五番目だった。

「お前達は休んでおけ。何かあったら私が出る。」

「じゃあ……そうさせてもらおうかな。ここの3人は疲れたから…………保健室のベッドで寝るか。」

「はいおやすみ〜。」

真面目な声色なのに若干五番目に茶化されている事だけはわかる。

「おやすみ……。」

でも本当に眠いので反応する気力はない。ボクは2人を(若干引き摺りながら)保健室へと向かった。




五番目視点

「…………よし、行ったか。」

「お前達、下がって離れて隠れとけ。」

「ど……どうして?」

「…………わかりました。路、ここは従おう。」

「……お兄ちゃんがそう言うなら……。」

妹の方が兄の腰を持ち、そのまま引き摺って準備室へと入っていった事を確認する。

(……ここで戦うのはダメだな。先生はいない。兄妹は頼れない。戦えるのは私だけ。)

穢れた気配がこちらへと向かってきている事が判っている。

(兄妹も学園も巻き込めない。私の技の範囲は未だに解っていない……。)

(外に出られるのは今だけなのかもな。アイツがこちらへと来てしまう前に…………こちらから往く!!!)

「私は外に出る事にした。だから出てもいいぞ。」

「わ……わかった…………。お兄ちゃん、お兄ちゃん…………。」

もうじき朝になりきる。だから私も長時間は戦えない。


私はドアを開けて美術室から出た。



美術室から少し離れた場所で立ち止まり、瞼を閉じる。こうすれば気配を探れる。

(方向は…………寮、ではない。)

(正門、でもない。)

(…………体育館の方か。いや。近くに武道館があるからそっちか?)

(…………む、離れたな。次は……………………)

方向は南。そちらにあるのは……ちょっとした空き地。だから戦うのには丁度良い。

私はさっさと動く為に蝙蝠のような形の羽で低空を飛んで征く。

(それにしても…………あの占い師。す〜ぐ騙されて…………。)

(この世界の神と仏にマトモな奴はいないってわかってる筈なのにな……………………?)

そんな事を考えながら飛ぶ。

(さっきまでは戦うつもりでいたが、短時間で済ませたいから戦う事は考えない方がいいな。)

(…………首根っこ掴んでコンクリートの味でも教えてやるか。そこからは……まぁ……)



正面に件の占い師を捉えた。

(……うわ、その着物は寝間着か。)

コイツが口を開けば仏のせいで被害が起こる。その前に終わらせなければならない。



片腕を占い師の首元目掛けて伸ばす。

(口は開かせない。すぐに仕留める。)

首元を掴み、そのまま身体をコンクリートに叩きつける。

空いた手は拳を作り、そして________________________























首だったであろう部位を掴み、引き摺って学園……ではなく塔へと歩く。

私は、血と肉で汚れてしまった鉄臭い手を気にせずに自身が燃え尽きる事だけを気にする事にした。

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