28話「迎え人」

眠る為、結いた髪を下ろし。

変わる気にしない長い髪を壁へとおいやる。

部屋が暗い事を確認して、そして瞼を下ろす。





ガラガラと。カタカタと物音が聴こえ、瞼を上げる。

(……?)

(何だろう??)

こちら側が物音を立てるわけにはいかないので、布団に包まれたままで大人しくしている。

…………なんてわけはなく。窓が開けられたと同時に外へと出た。

の場所は学園の外にある禁忌の地付近。だから、どれだけ物音を立てようが気にされない。此処ここに好き好んでは来られない。

(髪、結えばよかったな。)

長くて量の多い髪がとても重い。やっぱり少し動きづらい。

「……。」

(…………あぁ、すぐに来た。ワタシは眠いのになぁ。)

(……ぁ、あの服……………………はぁ。縁は切れてなかったんだ。)

見覚えのある橙色の着物。その下の黒い着物。

あれは、■■家の従者だけが着るもの。つまり…………………………………………

(これとの縁が切れていないのは厄介かも………………?)

全てわかっていて見逃されていた、という事。

「異児。主人がお前がそろそろ熟れる頃だろうという事でな、今迎えに来た。」

(名前は昔のままで、ワタシへの態度も変わってない…………。)

「…………幼少の頃にワタシを見捨てておいて、今更迎えに来たんですかぁ??」

「そういう命令だったのだ。仕方ないだろう。」

「…………はぁ。まぁ取り敢えず、ワタシは何処どこにも帰る予定は在りません。」

「その反応をする事はわかっていましたが……さて。」

従者が武器を取り出したところを見て、憩も武器…………を手に取る前に近くの屋敷へと駆けた。




彼処あそこ。あの屋敷なら…………)



(…………あの屋敷には、仏壇がある。もしものときは頼ろう。……の前に崩れないといいなぁ。)

今にも壊れそうな屋敷の中に駆け込み、戸を閉めた。

(閂……はどっちでもいいや。どうせ戸ごと壊されるだろうし。)






奥の部屋の仏壇の前。

ワタシは正座になおって仏を見る。

(…………。)

(…………。)

遠いところからドギャン、という少し小さな音がした。

きっと、戸が壊された音だろう。

(………………。)

それでも立たない。まだ正座になおったままでいる。


(…………。)

ギシギシと、床が軋む音が聴こえ続けている。

…………しかし、それでもその場から動かない。この部屋の襖が開かれる瞬間までは動かない。


キシキシ、と。近くから床が軋む音が聴こえてきた。

…………もうじき、襖が開くだろう。







カタン、と音がして襖が開いた。

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