27話「し に たひつるし」

「…………あ〜……でもまぁいい…………」

「…………ちょっと考えさせて。考えるというか連絡を入れさせて。」

「そのくらいならいいよ。終わったら言ってね。」

「…………うん。」


それにしても、だ。

(なんであんな事言ったんだ、ボクは。)

(頭がトチ狂ったのかもな。)

(……………………まぁでも……この現象はよくある事……か。)

特に、明らかな強者が相手だとよくある。この世界は、順位が高ければ高い程恩恵を得られる。

ボク楽園の天使調律者もその順位の対象外だとは思うけど。)

(これ以上は考えなくていいか。)



「…………上の人は休暇感覚で七不思議しても良い、って言ってるけど。」

「?」

それだけでいいんじゃないかと思いつつ、そのまま話を聞く。

「…………決められないならお前が戦って決めろ、だってさ。」

「え、戦うの?」

「…………らしいよ。」

「ボク達はまぁ、それでいいけど。君はどうするの。」

「……………………じゃあ____________」






椎名 式と名乗った人物は差していた傘を閉じ、そのまま動きに沿って構えた。

「こっちはわたくしが出るね。今の最適解はそれな気がするからさ。」

そう言って四番目は前に出た。

「あ、待って。」

そして、それを故が制止した。

「ここ、正門の前だから移動した方がいいかもね。【完全なる移動ディメンション・キーパー】」

視界が鉄の塊に覆われたかと思えば、見知らぬ場所へと連れてこられていた………………故はついて来ていないらしかったけど。

石の壁。まるで城壁のような見た目…………

「…………ここは、コロシアムか。」

「コロシアムなら好き放題戦えるんじゃない?」

「戦えるだろうけど、一応ルールは決めておこうか。」

「…………先に3回死んだら負け、でいい。」

「「じゃあそれで。」」



審判はボク。そして右に調律者、左に四番目。

それを確認したボクは合図を1つ入れた。





四番目視点

さて、と。困った事になった。

今まで……生前の出来事を合わせてもわたくしは戦った事なんてない。今回が初めてになる。

(戦い方を知っていただけだったんだよ。わたくしは。)

(だからって名乗るのは…………違ったかな。)

(自意識過剰すぎたね。自分の能力をよく解ってないのに。)

「…………来ないなら、征くぞ。」

「うん、そうして。」

閉じた傘を構え直した調律者が目前へと迫って来ている。

(何か。何か出来ない…………?)

昔、属性を使って戦っていた事は憶えている。…………でも。


…………でも、能力は使った事がなかった。

調律者が振り下ろした傘が身体に当たりそうになり、少し余裕を持って避ける。

(…………何ができそう?わたくしに何が出来てしまいそう?)

だから、円盤もパーツも持っていない。持っているのは、使い古したメガホンだけ。

(…………何もできない。)

相手は調律者。間違えても負ける事は決まっている。

攻撃できない。避ける事しかできない。

(避け続けるのは、余計な体力を使う。)

何もできない。何もできない。だけど、ずっと余裕だけはある。

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