26話「このアリスは白ウサギが好きらしい」

夏休みのとある日の夜。七不思議のうちの一番目、四番目、七番目が校門の前にいる人物と話をしていた。

「わたくしは、もう君とは関わる気が無いよ。」

「でも、アリスは一緒にいたいよ。」

「わたくしは、嫌。」

目の前の女性は困ったかのような仕草をした。

「…………もしかしてアリスの事、嫌い?」

「嫌い。だいっっっきらい。二度と顔を見せないって約束したのに、それすら破ってくれるんだもん……。」

「でも、アリスは好きだよ。」

「……………………はぁ……。」


「わたくしは下がるね。じゃ。」

そう言って四番目はそっぽを向いてどこかへと去って行った。

「あ、ちょ、私着いてく!」

そしてそれを聞いた故が追いかける為に去っていく。

「いってら〜。」

ボクはそう言っておいた。



「…………なんでアリスの事が嫌いなのかな。」

物静かな金髪の女性はそう言った。

「ん〜……何か、理由になりそうな出来事とかは無いんですか?」

「何かあったかな……。」

「うんと…………ええと……。」

ボクと先生はその様子を見守っている。

「…………。」

「…………。」

「…………あ!」

女性は思い出したらしい。

「昔……まぁ中学生くらいのときだったかな。」

なんか語りだしたので先生と一緒に話を聞き続ける事にした。

「私に能力が出てきたときに起こった事故なんだけど…………能力が出てきて、すぐに暴走しちゃって……それで、そのまま彼のお父さんとお母さんを殺しちゃったの。」

「……だから、嫌いになるならそれが原因かな、って思う。」

「…………まぁ……それじゃない?」

「それ……ですかね。」

「……ちゃんと謝ったんだけど、やっぱり無理だったよね。」

「まぁ……両親殺してるのはね……。」

「殺人は許される事は無いので仕方ないですね。」




ー故視点ー

学園の裏まで行ってしまった四番目の隣に立ち、話すように促す。

「……どうして嫌いなの?」

「…………。」

「…………あのね、わたくしの両親を殺された、のはまだ赦せるよ。謝ってくれたから。」

(あぁそうなんだ……。)


(…………え、それ以上の何かがあるの?)

「じゃあ何がダメだったの?」

「………………小学生のときから中学生の期間中にさ、アリスにいじめられたんだよね。」

「本人は忘れてるから、かもしれないんだけどさ。そっちを謝られてないんだよね。」

(…………確かに、それはダメだ。)

「…………それは許さなくていいよ。だって謝られてないんだし。」

「だよね。いいよね別に。」

「うん。私は今のその意思のままでいいと思う。」

「………………なんか、ありがと。」

「………………うん。どういたしまして。」


「……どうするのこれ。あっち戻る?」

「戻ったらどうなるの。」

「……争いになるんじゃない?私が君の事を擁護すると思うから。」

「…………まぁ、そうなっちゃうよね。」





ーフィリア視点ー

四番目と故が一緒にこちら校門へと戻ってきた。

「お兄様、戻ったよ。」

「ん、おかえり。…………何か話せた?」

「うん。嫌いな理由も分かったよ。」

「…………だから言うんだけどさ、四番目が君を嫌ってるのって普通なんだよね。」

(……来てる。音だけ聴こえてる。)

「……やっぱりそうだよね。アリス…………」

「「「「…………。」」」」

(やっぱりいる。確かにいる。)

(あぁ……調律者が門の近くで彷徨うろついてる……。)

「これ、私は帰っていいですよね。」

「まぁ……先生は帰っていいと思うよ。後はボク達がどうにかできそうだし。」

「…………じゃあ帰ります。また今度。」

「またね〜!」

「じゃあね。」

「センセイ、またね〜。」

先生は寮がある方向に歩いて行った。



「で、原因は何?何がどうなったらこうやって嫌いを貫き通せるの。」

「そこの人から両親がどうのこうの、ってのは聞いたけど。さすがにそれを引き延ばしてる訳じゃないんでしょ。」

(……近い。凄く近い。)

(あと、この調律者は多分『処刑』だ。)

(…………なら、そっちに処分は任せた方がいいな。その為にこっちに近付いてるんだろうし。)

(……あと、二番目になってくれないか頼んでもいいな。……まぁ、調律者が二番目なのはおかしいけどさ。強さ的に。)

「うん。あのね、両親の事は赦したらしいんだけど……いじめてたのに謝ってないらしくて。」

「あぁ……そういう事。」

「アリス、1回もいじめた事なんてないよ。だって、白ウサギくんの事は小学生のときからずっと好きだから。」

「……わたくしの名前は白ウサギじゃないから。それと、いじめられた側は生涯永久に忘れられないの。君が生涯永久に忘れたとしてもね。」

「でも、アリスは本当にいじめてないよ……?」

自分の事をアリス、と呼び続ける女性がそう言ったとき。とうとう無地の傘が見えた。

『お前さえいなければ、僕は処刑台に立たなかったんだよ。』

「……マニュアル通りに処刑を通します。」

(あ、来た。)




「『…………【調停属性:処刑罰吊り縄】』」

アリスという女性の首に深紅色の縄がかけられたかと思えば、そのまま吊り上げられた。

「ぁ、リスは…………本と、に…………しらな……い…………」

「『…………嘘を吐けば何処どこにも向かえない。』」

「『……それはよく解っている筈だ。』」

『「…………名前だけは偽らないのか、アリスと名乗る者。」』

「ゎ……しの……なまッ゙……え゙ぇ゙………………」


それを見続けていた調律者は、ただ一言言い放った。

『「…………謝罪も出来ないのか。もういい。死ね。消えろ。」』

吊り上げられたアリスという存在は、縄を絞められ続けそのまま息絶えた。




「……夜分に失礼した。僕は調律者の椎名 式だ。」

「…………そちら側、名は。」

「ボクは、■■■■だけど…………。」

「私は故だよ。」

「わたくしは…………その……。」

「…………言いたくない気分なら言わなくていい。」

「あのさ、調律者さん。」

(ここで引き留めないとすぐに去られてしまう気がする……!)

「……何。」

「その……君さえよければなんだけど…………。七不思議の二番目になってくれないかな……?」





「………………は????何故なぜ??????」

調律者は、聞いて当然の反応をした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る