小話「面倒事が表立ってきた」
耳鳴り。耳鳴り。
昔受けた手術のせい。
死神としての余生を生きるきっかけとなった出来事のせい。
「この■■になると、面倒事が増えるねぇ。」
もうじき夏休み。この世界に存在している長期休みは組織にとってとても都合が良い時期である。
今から細かい話をしきる前に、先にこの世界の組織の話をしようと思う。
この世界に存在している組織。それは仕事の組織とは違い、能力者を掻き集めて生まれた組織。つまり、本物の無法地帯。例えるならば巨大なスラム街がポン、と置かれているようなもの。
そして、そんな能力者まみれの組織にとって長期休みが都合が良いのには理由がある。
…………無所属の能力者を合法的に攫う。別の組織から能力者を引き抜く。これが増える。そして
まぁ……そういう理由で、これから面倒事が起こる事になる。壁の中だけじゃなくて、壁の外にあるこの学園でも普通に起こる。わりかし日常茶飯事になる。
なんて心の中の愚痴はいい。問題は、わたくしの手術を担当していた奴が普通に来るかもしれないという事だ。
正直面倒臭い。かなり面倒臭い。呆れるくらいに面倒臭い。顔すら合わせたくない。
「そうかもね。」
憩さんが占いながら話題を持ちかけてきた、という事は。まぁそういう事だろう。
「…………あ〜……数日後に1回起こるねぇ……。」
「は?早くない?」
「早いねぇ。……壁の中でなんか事件が起こったらしいから、そのせいかも。」
「……事件?」
「殺人マジシャン、って見出しでデカデカと……。」
「うわぁ…………いかにも、って感じ。」
「能力者が被害に遭ってるみたいだから……人数不足が凄いんだろうねぇ。」
「ね。」
わたくし達って怪異だし七不思議だしで全く関係ないんだけどね、コレ。
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