20話「楽園(2)」

華やかな色の自然。

明るく照らす空。

真っ白な建物。


………………そして。

ー故の視点ー

私達___________いや。私に敵意を向ける、刃物を持っている天使達。

灰のような色の自然。枯れている植物。

輝くように、この場所を照らす空。

ただの真っ白な建物が、この場所の不気味さを出してしまっている。

入り口となっていた場所は茨で覆われ隠された。

(逃がすつもりはない……みたい。)

(………………これ、お兄様には視えてるのかな。)

見えていても、視えていても。これは言わない方がいいという事だけはわかる。

…………言えば、多分死ぬ。

(…………他の天使達にも気付かれないようにしないと。この感じだと、指1本のズレも見せられないな。)

天使に敵意を見せないように。天使に身体の怯えと震えを見せないように。



私はお兄様の後ろをついて行く。




今から始まるのは、楽園へと足を運んだとある3人組のお話です。


最初に死んだのは、高貴な女性のように美しい容姿のバニーガールでした。

そんな彼は、他2人を楽園の入り口となった場所付近に置いて行き、楽園の中に足を踏み入れました。

彼の服にはヴァレリィナのような形の布が付いていて、それを見た天使達がヴァレリィナだと勘違いをしてしまいました。

天使達は彼に踊りを頼みましたが、彼は踊れません。なので拒否をしました。

それを聞いた天使達は怒ってしまいました。


彼の身体に茨が巻きつき、外側から絞めつけます。

天使達のうちの1人が、持っていた鉈で彼の頭を飛ばしました。




次に死んだのは、温かそうなカーディガンを着ている青年でした。

置いていかれた後、2人で行動をしていたのですが、途中ではぐれてしまったのです。

少し歩いたとき。彼は近くにいた天使に目を付けられてしまいました。

それに気付いた彼は逃げていましたが、とうとう設置されている拡声器がある場所まで追い込まれてしまいました。彼に目を付けている天使は、とある事を聞きました。

「人間が自殺をするのはどうしてなの?痛くないの?」

彼は自分の意思を伝えました。

それを聞いた天使は、探究心が湧いたのか彼でとある事を試す事にしました。


彼は設置されている拡声器に括り付けられた縄で首を吊らされて死んでしまいました。

彼が抵抗しない事を知っていたのか、彼の身体に巻きついた茨は絞めつけるのではなく優しく包み込むように彼の身体を覆いました。




お兄様の背中を追うと、楽園ここにある花畑に着いた。

「ここね、ボクのお気に入りなんだ。」

「へぇ〜、そうなんだ。」

枯れた花。散った花びら。

ここがどんな場所なのかは、なんとなく想像できる。だから、その通りの反応をすればいい。

「奇麗だね。」

「でしょ!」

お兄様が座る。私も座る。

お兄様が横になる。…………私も横になる。

「見て。」

お兄様が近くにあった花を1つ。1つ摘んだ。

「白い花。」

「……奇麗…………。」

……お兄様は、多分私が見ているものを知っている。だって、お兄様は楽園にいる天使のうちの1体なんだから。

だから……これから起こる事も、今までに起こった事も、全部知っている筈なんだから。

「…………ねぇ。お兄様。」

「ん……何?」

「私…………その……。」

なら、隠さずに言ってしまった方がいい。

「私、視界が…………」

「知ってる。ここに来る人は皆、じきにそう視えるようになってるから。」

「…………そっか。」

「…………ちょっと待ってて。あの人に色々と許可取ってくる。あと他の天使達に説明してくる。」

「…………うん。」

横になっていたお兄様は、身体を起こした。

「そのままここにいて。寝ててもいいよ。」

「うん。」

「…………ここにいて。永遠にここにいて。」

「……うん。」

お兄様。

「…………ずっと、死んでも、死に続けてもここにいて、お願い。」

私はお兄様の事しか見てないから、ずっとここにいられるよ。

ここにいたら、お兄様の事がもっと好きになれる気がするから、ずっとここにいられるよ。

お兄様だけを見て、お兄様だけを想って、お兄様だけに愛される。

それが、私の思考だから。

私の単純すぎる思考はこれだけで作られているの。

だから……ずっとお兄様の事を好きなままでいられるのなら…………

「うん。私はずっとここにいる。」

「ずっとここ楽園の中にいるから、行ってきて。」

灰の色に枯れている視界のままの肉体がそう言った。




(お兄様…………いつ見ても綺麗……………………♡)

「ふふ……。」

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