18話「見知らぬ怪異は新たな七不思議の座をご所望らしい」

ー存在の足りない怪異視点ー

とある噂を聞きつけて、とある学園へとおもむいた。


なんとなくで校門を抜け。

なんとなくで学園の中に入り。

なんとなくで学園内の階段を上る。

そして、なんとなくで屋上のドアを開く_____。

ギイィィィィ、と耳障りな音を鳴らしてドアが開く。

そして、屋上を正面から歩く。


「あ、お兄ちゃん。来たみたいだよ。」

「来たみたいだね。」

「こ……この人が……?」

「多分な。」


「あ、先生なので私がお話してきます。」

「ん、よろしく。」

視界に捉えたのは……

恐怖が足りない女性。顔つきが同じである兄妹。萌え袖の女子生徒。黒髪の女性。顔を布で隠している人物。天使。

……これが、この学園の七不思議なのだろうか?……七不思議にしては容姿のクセが強いな、と。

そう思った。



目の前へとやってきた人物と話をする。…………雰囲気としてはバイトの面接に近い気がする。




結果として、目の前の人を泣かせてしまった。なんかごめん。

「うわ……こぉんれはやってるねぇ。」

「確かに……やってるなぁ。」

「処すか?」

「まぁ……処すよねぇ??」

天使の人と顔を布で隠している人がそう言った。

「あ、それ、わたくしに殺らせてくださいな。」

見知らぬ怪異の人がそう言う。

「あ、初陣行っとく?ボクはいいよ。」

「ワタシもよぉ〜し!」

「じゃ、頭が爆発しないように耳を塞いでもらって…………。」

「もしかして、生前使ってたのって脳振盪属性だった?」

自分抜きで会話が進み続けている。もう内容の意味がわからない。

「うん。……能力が音関連だったから相性が良かったんだ。」

「確かにそこは相性いいよね。音関連の能力者は脳振盪取っとくのが安定って感じ。後は派生の鋼鉄系の属性とか。」

…………いつまでこれを聴けばいい?いつまで放置されればいい?


(な〜んかムカついてきた…………。)

ついうっかり。攻撃を放った。



攻撃が当たったと、そう信じていたのに。

自分の正面に現れたのは、白く溶けた腕2本と球体関節人形の腕2本を持っている女子生徒だった。

球体関節人形の手には鞄の持ち手が握られている。

「……いらっしゃいませ、お客様。手元の御品はそちらで宜しいでしょうか。」

「え、誰。」

「えぇ……??」

「…………もしかして、故?」

「はい。私は故ですよ。」

萌え袖の要素はどこへいってしまったのか。彼女の制服の袖は半袖になっていた。

背の低さはどこへいってしまったのか。今、ここにいる怪異の中で1番背が高いのは彼女かもしれなかった。

溶けている腕にはナイフが握られていた。自分が避けるのが早いか、彼女が刺すのが早いか。

その勝負だった。それだけの事だった。

自分は避けた。彼女は刺した。






相討ちだと、思っていた。

ぬるい風が、一瞬だけ肌を撫でた。







最初から…………何も無かった。

全てがうしなわれていた。

虚像。偽物。



自分が居た場所は屋上でも学園でもなかった。

何も無い、崩壊と厄災の地壁の外



______________自分は、見知らぬ人に刺し殺されていた。




血と体温が肉体を離れていく。その感覚も少しずつ失われていく。

「あぁ……変な奴に会っちまったな。」

「お前、まさか怪異か。…………面倒だな。」



「わたしのラボ拠点に入れるわけにもいかないし…………まぁ、適当に野垂れ死んどけよ。」

「神に潰されるよりかはマシ……だろ?」




自分の最期の視界を埋めたのは、赤い髪と白衣だった。

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