10.5.5話「夏祭り3日目(一番目視点)」
祭事の日でも学園内の保健室にいる先生が居た。
「蛇塚先生!蛇塚先生!■■ちゃんがケガしたみたいで……。」
「診せてください。」
「は、はい!」
手当てに必要な物はいつでも触れるよう、全て手の届く範囲にある。
「む。」
「これは怪我ではありませんね。」
「え、え?え??」
「おかしな出来事等はありませんでしたか?」
「おかしな事おかしな事…………あ」
校庭側のドアを勢いよく開けられ、彼女の次の言葉が止められる。
「ドアは優しく開けてください。」
「先生!……あ、それはごめんなさい。」
「まぁいいですよ。急ぎでしょうし。」
「あ、そ、そうなんですよ先生!」
「神ですか。組織ですか。」
「組織の方です!校門の前で生徒会の人達が止めてるんですけど、もう持たなそうで……。」
「……学園長は?」
「神が動き出した事に気付いて今はそっち行ってます!」
「…………成る程。なら、私が出ます。」
「でも、先生…………七不思議の中でも1番弱いし、戦えないって……。」
「……それは今の話でしょう。」
「あと、七不思議の中で私が一番目なのは、他の方の生前が能力者やそもそも人間辞めてる方だからですよ。人間基準ならそれなりには強いかと。」
「え、そうなんですか!?」
「生前は一応7位で、中央都市の騎士をしていました……と、雑談はここまでで。」
「私は行ってきますので、代わりをお願いします。」
「は、はい!」
校門へと少し早足で歩きながら、思い出す。
この学園は、学園側と七不思議側が手を取り合って今の学園が形づくられている。
それは自殺を見守る役が七不思議達に全任せされているから。
なので、七不思議側が何をしようが、生徒も先生もさほど気にしない。
なので、噂を他校の人に聞かれようが軽々と答える。
この世界で1番難しいのは、手を取り合う事。それがこの学園で出来るのは、普通だから。
しかし、世間は普通を好まない。だから、普通を辞めさせる為に組織の者が話し合いをしようとするときがある。
……何事も無く校門前へと着いた。
(私が付けていたパーツは、なんだったか。)
騎士、という事で防御を硬めていた憶えはある……が、そこまでである。
(人数が多い。から一発で決めてやった方がいい。)
ちらりと、生徒会の子達を見る。
組織の者の数名がもう武器を持っている……のに対して、彼彼女等は素手だ。
能力者ではなく普通の一般人なので武器を持てない為、素手だ。
(……組織側はもう我慢できないみたいだし、本当に一発で決めないと。)
(……【パーツ全起動】)
「少し……少しだけどいてください…………!」
私の声を聞き取った生徒がいた。
「蛇塚先生……!」
「全員中央を開けて散れ散れ!!」
「りょ、了解……!?」
(【
馴染みのある盾が手元に現れ、それを掴み、思いっきり組織の者達の足元の地面へと当てる。
狙いはただ遠くへと吹き飛ばす事………………ではなく、ここに着いたときから組織の者達の後ろに見えていた、造神の足元へと吹き飛ばす事。
(
(いや、造神が来てる事は大問題だけど。)
狙ったところへと吹き飛ばされたらしく、組織の者達は造神の巨大な足によって潰された。
「や……やった…………!?」
「蛇塚先生……。これ、先生が来てくれなかったらどうなってたんだろ…………。」
「わかんない……けど、別の事を考えないといけないみたい。」
「……そうですね。
「……し、学園長が向かったのは神の方でしょう?」
「そうなんですよね……。」
「…………どうしましょう、これ。」
どうにも出来ないと解っており、諦めていたとき。
その造神の後ろの空間にヒビが入ったのが見えた。
そして、それはパリパリと、ガラスの破片のように地面に落ちていく。
____真っ赤な時空を背に、七不思議の六番目が現れ、そのまま背後から持っている武器を一振りした。
それだけで、この造神は跡形も無く消滅した。
「あれぇ?先生戦えたの?」
「あ、いえ、アレは…………護っているだけなので……。」
「……確かに。盾だもんね〜。」
「でも……よく見えてたねぇ。」
「まぁ…………はい…………?」
「んふふ。疲れて会話がおかしくなってるや〜。」
「先生は保健室に連れて行きます……!」
「あ、じゃあよろしくね〜。」
私は生徒会の子達と一緒に、保健室へと戻った。
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