8話「七不思議の休日.3(六番目視点)」

毛布(もしくは布団)を肩のところまで掛ける。

……時刻は真夜中。皆はもう、眠ってしまった。


異常なくらいに長い髪を壁の方へと追いやる。

(…………布、取ったのはいいんだけど……。)

顔を見られたくない。

今のワタシの顔を思い出せない。

だから、どんな顔だったか…………判るまでは見せたくない。

(……顔の上に被せておこうかな。)

ひらひらとした、透けることの無い布を顔の上に乗せた。

(…………おやすみ、皆。良い夢を。)

瞼を下ろし、布団によって埋もれた手でいんを書くように動かしてから意識を落とした。





なんだか、周囲が騒がしい。

「ん゙……。」

ただ騒がしいんじゃない。まるで、何らかの場所にいるような……そんな感じの騒がしさ。

「…………。」

周囲を見回し、一瞬だけ身体が軽く震えた。

(なんで、ここに……。)

「久しぶりダネ〜!」

「お久しぶりですね。」

豪華なドレスを着た女性と、その女性の腕に乗せられている子供サイズの人形。

…………見覚えしかないその姿。

なんか目立つ壁と床、色鮮やかな照明。やっぱりカーニバルだ。



遊園死カーニバルはワタシが二度目の死を迎えた場所。もう二度と行く事はないと思っていた………のに。

「もっかい遊んでく〜?イイヨ〜。」

「私達は構いませんよ。」

(なんでこんな事に…………。)

「……いや、ワタシは…………」


ワタシは…………ワタシ………………もう……




……というか、ワタシはなんでここに?

「ワタシは……まず、どうしてここにいるの?」

「理由は簡単です。」

「最近、変な組織に住み着かれてサ〜??今回はソレで喚んダ〜。」

「あら、先に取られて言われてしまいました。」

「…………前のやつは関係無い?」

「マァ、今回はネ〜〜!」

「…………なら、まぁいいや。」

「いいの〜!?ヤッタァ!」



「で、それは何処いずこに?」

「ここから結構近いヨ。」

「相手はカルト宗団です。お気をつけて。」

(知ってるなら自分達で行けばいいのにねぇ…………。)



__________そのとき、何かが歪む感覚がした。

「「「あっ。」」」



瞼が上がり、そのまま勢い良く(上半身が)飛び起きた。


どうやら、あの状況で途中で起きてしまったみたいだった。

布団の中のいんはまだ発動していないらしかったので、自力で起きれたらしい。

(自力で起きれるくらいには成長してるんだなぁ。)

(……でも…………。)

(う〜ん……。)

まぁ、もう1回寝ようかな。



重い髪を壁へと押し付けて、もう1回枕に頭をのせた。

そして、瞼を下ろした。





2人の人物が、夜の都市の建物の上を駆けている。

「椎名さん、わたしはこっちに避けずれますので!」

「りょ、うかい!」

少し小柄な人物が少し遠くの建物へと移動するように駆け飛び、椎名さん、と呼ばれた女性の足が一瞬ふらついた、がすぐに体制バランスを直してそのまま走る。


「椎名さん!もう!思いっきり撃ってください!!!」

「OK!」


「………………いくよ。」

弾と魂タマはそれぞれ3つずつ。

それを銃に装填をする。

『思いっきり撃て!椎名さん!』

「撃ってください!椎名さん!!!」

ナビゲートをしている人物の声と、それを見守る人物の声が重なる。

「当たれぇぇぇぇぇ!!!」


銃身からキュルキュルと音が出たと思えば、膨大な距離に及ぶビームが放たれた。






「お相手さん、やっぱり手強いてごわいです……。」

「今回も生き残ってるみたい。ごめん。」

『今回もダメだったか。……まぁ、次回に回すか。』




少しずつ、意識が浮上する。

夢を通して現実を見るのは、いつでも楽しい。



次に瞼を上げれば、早朝の四時となっていた。

(ん、多分四時とかかな。起きよう。)

身体を起こして髪を櫛で軽く整えて、布の紐を後ろで結ぶ。

そして、窓から飛び降りて外へと出た。

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