1話 2 安全だと思ってたらこれ
「‥‥あなたがまともなロボだって祈ってる」
ため息混じりの私の呟きに、彼が何かリアクションを返す前に、通信が入った。
『本部より連絡。
先行した2組の死亡通知を確認。
視界外からの強襲による全滅と推測。
いずれもお前たちから北の地点、未舗装路上だ』
‥‥強襲?こんな場所で?
「問題発生地点の座標を受信、確認」
通信機越しにカインの声が響く。バイクが減速し、木の陰で静かに停車する。
直接彼の体自身が座標を受信したのだろう。何らかの端末を取り出すような動作もなく確認を報告している。便利な体だ。
私も手首に装備したパッドを起動して座標を確認する。
私たちは道なりに進まずに東の目標地点に向けて直進していたおかげで味方が襲撃を受けた地点とはずれている。
カインが続ける。
「当機現座標において空陸域、敵機未検知」
ここから目標地点までは、味方の保持エリア内だけを通ることになる。
だから私たちの移動には非武装だが高機動のホバーバイクで移動するよう指示があったわけだ。
しかし運の悪いことに、こんな時に限って――おそらく調査目的の敵車両がこちらの基地の近くをうろついていたというわけだろう。
『了解。航空支援を要請する。
お前たちは戦闘を避け敵機掃討が完了するまで自分たちの安全を確保しろ』
私たちの装備は、車両戦を想定していない。
指示通り、戦闘に参加するよりも、安全な場所に移動するなりして攻撃に巻き込まれないようにするべきだろう。
たぶん、到着まで10分程度かかる。
臨時の出撃要請とはいっても、このあたりは即応戦力が置かれていないエリアだ。応答が遅れるのは当然。
「了解。現地にはそっちで連絡入れておいて。遅くなっても文句言うなって」
通信を切った。
「南東基地の攻撃支援範囲まで避難。発進に備え、姿勢保持を推奨」
いちいち安全アナウンスしてくれる律儀さが、いかにも機械って感じ。
「了解」
バイクは進行方向を変更し、カインはより慎重に周囲をうかがっている。
見通しの良い場所に差し掛かるたびに左右を目視確認している仕草は妙に人間っぽくて、
無骨な金属製のボディとのギャップがなんだか笑える。
「通信対象:平原南東基地。応答を要――」
カインのその声が基地に届いたのかは分からない。
言い終わる前に突然、叫び声とも悲鳴ともつかない金属音が、全ての音を塗り潰した。
鼓膜の奥へと鋭い音に押し入られるような衝撃に襲われ、一瞬息が止まる。
可聴限界ギリギリの高音に脳が壊されそうで、思わずバイクのサイドバーを握りしめる指が震えた。
音の正体を推測する間もなく、地面から急に白く濁った蒸気が立ち昇り始めた。
滞空維持できなくなったバイクが、バウンドしながら慣性に押されるように腹を地面に擦る。
飛び降りるタイミングを失い、今にも身体が放り出されそうで、堪らずカインの硬い背中に頭を押し付ける。
右に左にと大きく揺れる車体をなんとかカインがバランスを取りながら脚を踏み込み、足で地面をえぐりながら土煙を上げ、ようやく止まった。
浅い呼吸を繰り返しながら、地面に彼のつま先で引かれた線を見つめていた。
現実感を取り戻すのに、少しだけ時間が必要だった。
もし彼が制御してくれなければ――
想像しただけで膝が震えた。
恐る恐るバイクを降りる。あの金属音は収まり、静けさが戻っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます