8.少年との思い出2

 少年の夏休み中、一番記憶に残っているのは少年に海水浴に誘われたことだろうか。

 八月上旬、図書館が熱帯のような暑さをしている時、扇風機では限界があると思い扇子で自身をあおいでいた日、少年がいつもの勉強道具が入っている鞄とは別にもう一つのカバンを持ってきた日があった。

 少年は着々と宿題を進めていたおかげで、その日の午前中に宿題が終わったようだ。

 少年は宿題を片付け終わると、いつものように外で昼食を取ろうとしていた。私はパラソルを持って少年と一緒に外に出た。少年と一緒に昼ご飯を食べていると、少年が

「司書さん、今日って暇ですか?」

 と、聴いてきた。私は、特には用事がなかったので

「今日は暇ですよ。」

 と、何気なく答えた。すると、少年は満面の笑みを浮かべて

「なら、海水浴に行きませんか?」

 と、聴いてきた。私はあの大きな手荷物の正体がわかると同時に自分の水着がないことに気がついた。私はそれを理由に断ることが申し訳なかったので

「なら、泳ぎはしませんがご一緒させていただきます。」

 私はそう言って、大きめのタオルとブルーシート、パラソルを持って少年に着いて行くことにした。少年は、司書室で着替えさせた。

 少年は青色の海パンに白色のライフジャケットを着て出てきた。私は少年がはぐれないように少年と手を繋いで村の名所である入り江ではなく、近くの海岸に向かった。

 入り江とは違い人がおらず、貸切状態だった。私はズボンを捲り上げ、少年と一緒に膝まで海に浸かった。夏の海は陽の光と夏の爽やかな温かさを受けて、あまり冷たくなかった。

 私と少年は、少年が持ってきた色鮮やかなボールを使ってキャッチボールをして遊んだ。日頃から運動しない私にとってはハードな運動だったが、少年はとても楽しそうで、私もいつの間にか楽しくなっていた。

 日が暮れる少し前に渡しと少年は図書館に戻ってきた。少年にタオルを渡して司書室で着替えさせた。私はその間にはその間に脚を拭いて、少年が出てくるまで待っていた。少年は出てきた後、濡れた司書室の床掃除を手伝ってくれた。

 日の暮れ初めた頃に、私は少年を家に帰るように促した。そして、帰っていく少年を手を振って見送った。

 いつの間にか、これが年に一回の行事になっていた。

 その時の私の心の色は忘れたが、少年の心の色は覚えている。それは、「喜び」と「楽しみ」を表す、とても綺麗なコレオプシスを思わせる黄色だった。

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