7.少年との思い出

 あれから数日経った頃、少年は夏休みに入ったようで、毎日朝から夕方まで図書館に来ていた。この頃には、少年の心の色がうっすらと戻っていたような気がする。

 私は少年の課題を済ませながら、休憩がてら小説を読む姿を過去の自分と重ねながら眺めていた。

 昼食時になると、少年は図書館付近のわたしの行きつけでもあるパン屋さんで大人気のカレーパンを昼食として、図書館の外にあるベンチで食べていた。私は、パラソルを購入して少年と一緒にサンドイッチを食べていたことを思い出した。ちょうど今日みたいな快晴で、気持ちのいい潮風に揺られながら食べる昼食も悪くないと感じたのを、今でも覚えている。

 昼食を済ませると、少年はまた課題と向き合った。文系科目を後回しにするのがやりやすかったようで、理系科目を先に終わらせていた。私は少年の近くに座りながら読書をしており、少年に質問された時だけ勉強を教えていた。小学校時代の勉強が懐かしくなり、よく読書の手が止まっていたものだ。

 少年は頭が良かった。解らないと質問されたところは大人の私でも少し苦戦するような内容だった。その他の自力で解いた問題は全問正解だった。

 そして、少年の名前を知ったのもこの頃だった。少年が夏休みの課題名前を記入している時に初めて知った。少年の名前は「長谷川 豊はせがわ ゆたか」、小学三年生だ。

 私が時折季節の飾付け用に折り紙を折っていると、少年が

「僕も、折り紙してもいいですか?」

 と、年相応のことを言っていた時は安心した。心が治ってきているのだと思えた。

 私と少年はその日一日、黙々と折り紙を折っていた。少年はシワを作らないように丁寧に折っており、子供の集中力は侮れないものだと感心していたことを思い出す。

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