6.村の伝承

 少年の話を聞いてから数日後、私が折り紙を折っている時、ふと村の伝承本の存在を思い出した。

 私は気の向くままに伝承本を手に取って読み始めた。その中には虹のイラストと、その隣に虹色の魚のイラストが載っていた。そのイラストのすぐ下に、虹色の魚の名前が載っていた。その名は「虹宿魚こうしゅくぎょ」。虹宿魚はこの村にある「虹の入り江」に月が空の頂点に昇ると同時に、その身に虹を宿して現れるらしい。

 私は次に、虹宿魚のイラストの隣にある虹のイラストの下の文章を読んだ。それは、虹についての伝承だった。虹はあの世とこの世を繋ぎ、死者の魂をあの世へ送るための橋となっている。

 虹宿魚と虹につての伝承を合わあせて考えると、虹宿魚は虹の代わりに死者の魂を導く存在と見て間違いないだろう。

 少しページを捲ると、虹の入り江についての伝承も載っていた。虹の入り江で死んだ生物は死の覚悟が決まるまでは死ねない、という内容だった。

 私は半信半疑で読み進めていったが目ぼしい情報がなかったため、伝承本を閉じた。

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