第3話 防火水素「Hをしよっか」

理科りかちゃん先輩!僕も正式に入部したんで、もっと科学を教えてください!」


「じゃあ今日は、塩酸えんさんにしようかな?塩酸えんさんって言葉は、何度も聞いたことあるよね?」


「はい。でも学校の授業では何のことなのか、全くわからなかったんですよ。」


塩酸えんさんの正体は、実は塩化水素えんかすいそなんだよね。」


「そんなミステリーで犯人を暴くみたいに明言されても、僕には誰のことなのか全然わからないですよ。」


塩化水素えんかすいそを知らないの?」


「もしかして、あれのことですか?非常時のために、水を貯めておくための?」


「それは防火水槽ぼうかすいそうだから!」


防火水素ぼうかすいそですか?」


防火水素ぼうかすいそなんてないから!防火水槽ぼうかすいそうね!」


「じゃあ今日は防火水槽ぼうかすいそうの解説ですか?」


「違うでしょ?今日は塩化水素えんかすいその話だから!」


「一体、何なんですか?塩化水素えんかすいそって?」


塩化水素えんかすいそは、HClって書くんだよね。どっちやりたい?」


「また僕が選んでいいんですか?でも今回は3つもありますよね?」


「3つ?」


「HとCとLで、3つありませんか?」


「HかClを選んで。」


「その2択なんですね?」


「どっちでもいいなら、Hをしよっか?」


「えっ?今からHをするんですか?」


「うん。Hをしてくれるよね?」


「本当に?ここで?」


「うん。Hは知ってる?」


「僕の口からは、そんなこと言えないですよ!理科りかちゃん先輩は、Hを知ってるんですか?」


「もちろん。」


「もちろんって答えちゃうんですね?」


「Hは水素すいそのことね。」


「うん?水素すいそですか?」


水素すいそは知ってるよね?」


「はい。金魚とか入れておく容器ですよね?」


「だからそれは水槽すいそうでしょ?さっきも同じ会話をしたよね?」


水素すいそって水槽すいそうのことじゃなかったんですね?」


「今までずっと水素すいそ水槽すいそうだと思ってたの?」


「はい。いつも先生が最後の一文字だけ省略して言うから、ずっとなんでなんだろうって思ってました。」


「またその感じなのね?じゃあ私がClをするね。Clは知ってる?」


理科りかちゃん先輩は、Clになりたいんですか?飛行機の乗務員のことですよね?」


「それはCAでしょ?CAはキャビンアテンダントの略だから!」


「ああ!もしかして会社で事務をしている女性のことですか?」


「それはOLでしょ?Clは塩素えんそのことね。」


塩素えんそですか?」


塩素えんそは、しおもとと書くのね。ナトリウムと出会って、食塩しょくえんになるんだよね。」


「食塩って、しょっぱい調味料の食塩しょくえんですか?理科りかちゃん先輩は、ナトリウムと仲良くなりたいんですか?」


塩素えんそとナトリウムが手を繋ぐと、食塩しょくえんが生まれるんだよね。」


「その食塩しょくえんは、理科りかちゃん先輩とナトリウムの子供なんですか?そんなことになってしまって、僕はどうしたらいいのか、もうわからないですよ!」


「大丈夫だよ?水素すいそは、みずもとと書くのね。だから酸素さんそと出会って、みずが生まれるんだよね。」


「僕と酸素さんその子供が、みずなんですか?」


「しかも1人の酸素さんそが、2人の水素すいそと手を繋ぐんだよね。」


「えっ?それって二股じゃないですか?こんなことなら、僕も理科りかちゃん先輩がいいですよ!」


「1人の水素すいそと1人の塩素えんそが出会う場合もあるよね?」


「そうですよね!」


水素すいそ塩素えんそが手を繋ぐと、塩化水素えんかすいそが生まれるのね。」


「あれ?理科りかちゃん先輩と僕の子供が、実は塩化水素えんかすいそだったんですか?すごいミステリーだったんですね?」


「じゃあ今から水素すいそ塩素えんそが手を繋いでみよっか?」


「僕らが手を繋ぐんですか?」


「うん。今こうやって手を繋いだ状態が塩化水素えんかすいそね。」


「もう子供が生まれたんですか?まだ手を繋いだだけで、Hをしてないですよ?」


「そして私たち2人が手を繋いだまま、水の中に入るのね。」


「水ってお風呂とかですか?」


「お風呂でもいいかもね。」


「僕と理科りかちゃん先輩が、2人でお風呂に入るんですか?」


「うん。今から2人でお風呂に入ろっか。」


「そういう感じのHだったんですね!」


「私たちが2人でお風呂に入ると、繋いでいた手が離れるんだよね。」


「お風呂に入ったら、手を離しちゃうんですか?繋いだままじゃダメなんですか?」


「そうすると塩酸えんさんが生まれるってことね。」


「えっ?もう?それって、どういうHだったんですか?」


「科学をわかりやすく説明するのって難しいよね?」


「うん?それで説明は終わりなんですか?」

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