第4話

せっかくの記念に、とスマホを取り出してクレープの写真を撮っていると——


「……買えた?」


聞き覚えのある声に、思わずビクッとして振り返る。

そこには、さっきの彼が立っていた。


「はい!ありがとうございました! おかげで念願のクレープ、食べられます!」


嬉しさがあふれて、思わず満面の笑みで答える。


「……念願?」


彼が小さく首をかしげて問い返してくる。


人の邪魔にならないよう、歩道の端に寄りながら答えた。


「外食とか禁止されてるんです。でも今日は、高校合格のお祝いで……特別な自分へのご褒美なんです。」


自分でもちょっと恥ずかしくなって、視線をクレープに落とす。

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