第7話

はい、承知いたしました。以下に日本語訳を記します。登場人物の語り口や雰囲気を保つよう心がけました。


おそらく私の落胆を察して、熊兄が口を開いた。


「おい」


熊兄は、引っかき傷と腐食による白斑だらけの胸当てを外すと、自動清掃槽に放り込み、突然、私の方を向いて無理やり笑顔を作った。


「今日は…なかなかやるな! チビらず、足引っ張らず、桐谷が切りかかってきた時はちゃんと頭を低くしてた! 鈴賀(スズガ)の初っ端よりずっとマシだ!」


鈴賀が近くで不満そうに呟いた。


「熊兄よ! いつだよそれ!?」


熊兄は彼を無視し、こっちに歩いてくる。分厚いペンだこで覆われた大きな手が、今度は軽く私の肩をポンと叩いた。


「行くぞ! いい所、案内してやる!」


彼の眼に、滅多に見せない、温かい人間らしい光が一瞬、走った。


「『老瘸腿(ラオチェイトゥイ)』の所に、新しい美味いもんが入ったんだぜ! あのクソみたいなエネルギーゲルより一万倍マシって話だ!」


その「いい場所」は、第十二区ニュータウン外縁のにぎやかな市場にあった。


中核にある書庫区域の死んだような厳粋さとは違って、両側には様々なスタイルの店や屋台が立ち並び、ネオンサインやホログラム広告が点滅している。色とりどりの制服(ほとんどは本探しや、もっと下級の整備工たち)を着た人影が行き交い、会話の声、値切りの声、何か奇妙な音を発する楽器の音が混じり合い、奇妙な喧騒を形成していた。


「老瘸腿」の店はそこにあった。看板は、歪んでいて、発光するパイプで作られた、びっこを引いているロボットの絵柄。店はさほど広くなく、人混みであふれていた。空気には、焙った小麦の香り、発酵した果実の酸味、キャラメルのような甘ったるい匂いが強く混ざり合い、漂っていた。


店主は片眼、明らかに中古品を寄せ集めたような機械の義肢を装備したジジイで、煙をくゆらす奇妙なパイプをくわえ、残った一方の充血した眼で、ざわつく客たちを見回していた。


熊兄たちを見つけると、その片眼がぱっと輝いた。彼はカウンターの下から、油紙に包まれた四角いものを幾つか取り出した。


「熊さんよ! 運がいいぜ! 最後の三つ、蜜漬けの果実核(はちみつづけのかじつかく)だ! 出来立てだぞ!」


老瘸腿の声は、サンドペーパーでこするような嗄れ声だった。熊兄が豪快に信用点の袋を放り投げ、油紙包みを奪うようにして受け取った。我々は人混みをかき分け、店の外の比較的静かな隅っこを見つけた。熊兄は待ちきれずに油紙を破いた。


中には、手のひらサイズの、深い琥珀色をした、硬めのケーキに似た四角い塊が入っていた。表面は油で光り、キャラメルとドライフルーツが混ざった魅惑的な香りを漂わせている。


熊兄は一片をちぎると口に放り込み、目を細めて満足そうに、もごもごと言った。


「むぅ…このジジイ…腕は落ちてねぇな…エネルギーゲルよりずっとマシだ…」


私も見よう見まねで小さな一片をちぎり、口に運んだ。食感は予想外だった!


外側はサクッと、内側は驚くほど柔らかくしっとりしていて、蜂蜜と発酵したベリーのような濃厚な甘さ、それにほのかなナッツのような深いコクが後味に広がる!


温かい口当たりが食道を滑り降り、身体の冷えを追い払っただけでなく、胸の奥に続く鈍い痛みさえも、この純粋な甘さによって一時的に麻痺し、癒やされるかのようだった。


これは、この世界に来てから初めて、本当に美味いと言えるものを味わった。


「どうだ? 嘘じゃねぇだろ?」


熊兄が得意げに首を振りながら、また大きくちぎって口に放り込んだ。


桐谷と鈴賀もそれぞれ黙々と食べていたが、さっきまでこわばっていた眉間は明らかにほぐれていた。


この単純な甘い食べ物は、特効薬のように、流刑地からもたらされた暗がりと、越境者たちから受けた巨大な挫折感と落差感とを、一時的に追い払ってくれた。


食べながら、手にした半分だけになった蜜漬けの果実核に目が留まった。その深い琥珀色の輝き、柔らかくしっとりとした質感…なぜか、伶(レイ)の顔が浮かんできた。彼女はこれを味わったことがあるだろうか?


「親方」


私は立ち上がり、「老瘸腿」のにぎやかなカウンターに再び割り込んだ。


「これ…まだありますか? もう一つ…買いたいんです」


老瘸腿は片眼で私を一瞥し、私が握っている信用点(さっき熊兄が分けてくれた分)を見て、カウンターの下をごそごそ探り回り、ようやく同じ油紙に包まれた一つを引っ張り出し、ぶっきらぼうに私に押し付けた。


「最後の小さな端っこだ! 安くしてやるよ! さっさと持って行け!」


私はその温かく、誘惑的な甘い香りを放つ塊を注意深く受け取り、綺麗な油紙で丁寧に包み直し、制服の胸元の内ポケットにしまった。


「おーお? おい、愛想やるねえ?」


熊兄が私の動作を見て、濃い眉をひょいと上げ、からかうような笑みを浮かべた。


「あの『泣き虫ちゃん』の分か?」


私は黙ってうなずいた。


「よし! 身内を思いやる気持ちがあるってのはなかなかだ!」


熊兄がドシンと私の背中を叩いた(今度は咳き込まずに我慢できた)。


「行くぞ! 帰る! 今日はもうヘトヘトだ!」


彼らと別れ、私は独り帰途についた。懐の中の油紙に包まれた蜜漬けの果実核が、歩く度に胸にこすれて、奇妙な温かみをもたらした。甘美な香りは生地を貫くかのように、鼻先に執拗にまとわりついてきた。


ドアを押して入ると、やはり伶は眠っておらず、小さな体がソファに丸まっていた。肩が微かに震えていて、扉の音を聞くと慌てて顔を上げた。目はウサギのように真っ赤に腫れ、目尻には拭いきれていない涙の痕が光っていた。明らかにまた一人で泣いていたのだ。


「主…主人!」


彼女は慌てて立ち上がり、思わずエプロンを引っ張って涙の跡を隠そうとしたが、その動作がぎこちなく、自分でつまづきそうになった。


薄暗い灯りだったが、彼女の鼻先と目の周りが真っ赤になっていること、髪が少し乱れ、頬に張り付いているのが見て取れた。まるで露に濡れた花びらのようだ。


私だと分かると、その濡れた大きな眼がパッと輝いたが、すぐに深い憂いがその光を押しつぶした。


「ご無事で…? 熊様達は…流刑地…」


彼女の声は次第に小さくなり、何かを驚かせることを恐れてか、かすかな嗚咽の余韻を帯びていた。


その嗚咽の余韻に、私の胸は軽く掻きむしられるような痛みを感じた。あの固くてピカピカの鎧、轟く銃声、死の冷たい匂い…それらすべてが今、異様に遠く、現実味を帯びていないものに思えた。


「大丈夫、全部終わったよ」


私はなるべく声を落ち着かせ、彼女を包む不安を追い払おうとした。


「これだ」


私は深く息を吸い、懐の体に密着したポケットから、油紙の包みをそっと取り出した。


「熊兄たちのおごりだ」


彼女に差し出しながら、軽い口調で言った。


「エネルギーゲルより一万倍マシだってさ、食べてみる?」


彼女は驚いたように少し体を引くが、私の差し出すものを見た。


油紙のざらざらとした質感が彼女の冷えた指先に触れ、その馴染んだ温もりの中に包まれた、奇妙な、未知の甘い香り…あれは本当に温かだった。


包みを通して微かに浸み出るその温もりが、寒さに敏感になっている皮膚に触れ、彼女の目はわずかに見開かれた。その中には純粋な当惑が溢れ、まるで存在し得ない夢を見定めているようだった。


片方の指で、そっと、本当に慎重に油紙包みを触れてみた。その動作は蝶の羽が冷たい石に触れるかかのように軽かった。


「これ…何ですか?」


彼女は問いかけた。指先はまだ油紙の温かみに残ったまま、離そうとしなかった。


「開けてみなよ」


私は励ますように促した。伶はためらいながらも、ようやく慎重に、渋皮色の油紙の包みを解き始めた。


それは、太古の文明から来た貴重な遺物を解いているかのような細心の集中ぶりだった。


部屋の中は異様に静かで、油紙の折り目が開かれる時に発する、細かく柔らかな音だけがしていた。


油紙が一枚また一枚と開けられるにつれ、濃厚で、信じがたい甘い香りが解放された。まるで小さくまとまった金色の麦畑と果樹園がそっと解き放たれ、空気の中で突然に広がるかのようだった。それは無遠慮に、しかし惜しみなく、部屋を満たしていった。


彼女がついに最後の一枚の油紙をはがした時、その小さな塊、蜜漬けの果実核の全貌が明らかになった。


光の下では、それは深く魅惑的な琥珀色を呈し、表面は油で潤い、こもったような柔らかな光沢を帯びていた。固まった蜂蜜の湖のようだ。


炙られた細かい焦げ目のついた表面の模様がはっきり見え、内側には、見えないけれども心に染み入るような、じっとりとした柔らかさを蔵している。


果肉とナッツの細かい粒塊が、甘い基質に包まれ、ところどころにのぞいていた。


「蜜漬け…果実核?」


彼女は私から聞いた名前をそっと呟いた。声は吐息のように軽く、確信できない気持ちを探るような響きを帯びていた。


彼女はそれを鼻先に近づけ、深く、深く息を吸い込んだ。その瞬間、肩がほんのわずかに、しかし確実にゆるんだのを感じた。


私はうなずいた。


「食べてみる?」


彼女は迷いながら、私とその奇跡の食べ物の間を数往復するかのように眼差しを泳がせ、現実を懸命に確かめているようだった。


ついに、彼女はとても大切そうに指先でほんのわずかな一片をそっと折り取り、口の中に入れてみた。試すようにそっと唇を閉じた。


その柔らかくしっとりとした、蜂蜜と濃厚な果実の芳香を放つ甘さが舌の上で弾けた。温かな流れが金色の小川のように、冷えと孤独で固くなっていた彼女の身体の奥深くにゆっくりと注ぎ込まれていく…


突然、彼女の大きな涙が一度にこぼれ落ちた。それはあっけなく、流れを断たれた真珠のようで、すぐに油紙と彼女自身の粗い制服の前襟を濡らし、濃い色の染みを残した。


「うっ…」


低い嗚咽が喉の奥から漏れた。微かな息詰まる音が伴っている。彼女は慌てて腕を上げて拭おうとしたが、涙はどうしようもなく、かえって次々と流れ落ちた。熱い涙がその深い色の蜜漬けの果実核に落ち、ゆっくりとその油潤った表面にしみ込んでいった。


「バカな子だ、何を泣いてるんだ?」


私は胸が痛み、心が優しくほぐれるのを感じながら、声をひそめて尋ねた。


伶は力強く首を振り、何か言おうとしたが、出てきたのは一つに砕けた嗚咽だけだった。


彼女はようやく指を伸ばし、冷たさが残る指先で、またしてもぎこちなく、しかし注意深く小さな一片を折り取り、口に放り込んだ。涙はまだ絶え間なく流れ落ち、口角を滑って、その貴重な甘みの中に混ざっていく。


咀嚼する動作は遅く、大切にしていた。その一つ一つが、この世を離れた極上の珍味を味わっているかのようだ。


彼女の顔に浮かぶ表情が変化していった。溢れ出ていた、ひどい悔しさと心配、そして突然もたらされた貴重な安らぎが引き起こした涙の勢いは次第に弱まっていった。


すすり泣きも少しずつか細くなった。彼女はうつむき、相変わらず涙を流し、身体は微かに震えていたが、何かを必死に抑えているようだった。


その瞳は、油紙に包まれた琥珀色の塊を見つめ直し、不思議そうに見つめていた。


ゆっくりと、彼女は顔を上げた。頬は涙で濡れており、鼻先と目はまだ真っ赤だが、口元にほんの少し濃い色の破片がついている。


「…」


そして、彼女は笑った! 涙を含んで、恥ずかしそうでありながらも、偽りのない笑顔が、涙に濡れたその顔についに咲いた。それは持てるすべての勇気と温かさを尽くしたかのようだった。


「…甘い」


彼女は重い鼻声で、声は羽が落ちるかのように軽かったが、はっきりと私の耳に届いた。


彼女はさらにうつむき、ごく小さな一片を今度は、その温かい琥珀色を見つめながら、唇をぎゅっと結んで、真剣に、厳かに、もう一口味わった。


「ん…」


私:「美味しい?」


彼女が食べ終わりそうになったのを見て、ようやく私は小声で尋ねた。


伶は最後の一口を飲み込み、私の方を向いて力強くうなずいた。


「うん!」


今回は声に少し弾みがあった。まだ泣き声の痕は残っているが。彼女は手を伸ばして、最後の一片を私に差し出した。


「あんた…も、食べて」


彼女は私を見つめ、暗がりの中で驚くほど強く輝く眼差しだった。その輝きは、極めて真摯な執着に源を発している。


私は手を伸ばし、その小さな甘さを、彼女の冷たい指先から非常に大切に受け取った。指の先が触れた瞬間、彼女はまるで何かに触れたかのように微かに震え、その手を素早く引っ込めた。


私はそのほんの小さな琥珀色を口の中に運び、じっくりと味わった。


窓の外には、満天の星!

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