第2話

月曜の朝、冷気がまだ完全には抜けきらない空気の中を、黒沢が旋風のように教室へ駆け込んできた。いつもより一層輝く目をしていた。


「パンッ!」と、しわくちゃで赤ペンで縁取った紙を、彼は俺の机に叩きつけた。


「空塵よ!我輩の壮大なる計画の青図(ブループリント)、ここにあり!」


彼は声を潜めて、ほとんど神聖とも言える熱狂を帯びて言った。


「我、悟りし!凡庸なる学園生活こそ、無形の『日常の結界(ノーマリー・バリア)』に封じられているのだ!宿命を打ち破るには、力を蓄積せねばならぬ!故に——」


彼はわざと間を伸ばし、その紙を大きく広げた。


「『霊能探検部(スピリチュアル・エクスプローラーズ・ギルド)』、本日より正式発足す!我輩が部長兼至高総帥(グランド・コマンダー)!そしてお前、我が畏友にして唯一の忠実なる騎士(ナイト)たる空塵君!名誉副官兼軍師参謀(ストラテジスト)を拝命せよ!我ら組織の最重要任務は、この『凡界(マンデーン・グラウンド)』の底に潜む『霊脈ノード』と『古代秘宝(アーティファクト)』の発掘なり!」


俺はその「青図」とやらを手に取った。極めて中二病的でやや稚拙な筆跡で、「霊能探検部」の宗旨(科学を超えた真実の探求)、活動計画(瞑想、儀式、遺跡探索)が書かれている。


改悪された落書きと丸印に囲まれた「部章」すらあって、不規則な六芒星が稲妻の記号と重なったように見える。最下部には太字で書かれている:創設者:聖光戦神・雷煌騎士(セイコウセンジン・ライコウナイト)ゼン。


「どうだ?この名の破邪顕正なる偉力(パワー)!」


黒沢は興奮して両手をこすった。


「我、探査済みなり。我らが拠点として最も適し、霊力(オーラ)も最も漲る『聖地(ホーリー・グラウンド)』こそ、学校の旧校舎屋上、あの廃墟と化せし小露台(テラス)!放課後、我らが初の『元素共鳴の儀(エレメンタル・ハーモニー・セレモニー)』を執り行い、我らが伝奇(レジェンド)の扉を開くぞ!」


黒沢の燃え盛る情熱の前では、いかなる現実的な反論も無力に思えた。俺は眉間を揉みながら、結局頷くしかなかった。


「…わかったよ龍之介、でも『儀式』は静かにね。明日、教頭先生にお茶会(呼び出し)は御免だ」


黒沢は瞬間に歓喜のあまり跳び上がり、自分が雷霆(らいてい)の鎧をまとい、魔群(まぐん)を睥睨(へいげい)する姿をすでに見ているかのようだった。


午後の「元素共鳴の儀」の場所——旧校舎の屋上テラスは、「聖地」というより、壊れた机や椅子、落ち葉が積もった片隅で、手すりのペンキは剥げ落ちていた。


だが、そんなことは黒沢の神聖さには何の影響も及ぼさなかった。彼は真剣な面持ちで小さなスペースを片付け、色の異なる石っころ(赤い小石、灰色のコンクリート片、半分に折れたチョークの切れ端)を「地火風水」と彼が認識する方角に配置した。


「天地初開(てんちしょかい)、混沌(こんとん)よ帰墟(ききょ)せよ!吾(われ)、雷霆の名において、この世界に眠る力を呼び覚ます!」


彼は目を閉じ、厳かな表情で手を舞わせた。まるで印を結んでいるのか、それとも体操の変形バージョンのように。一陣の風が通り抜け、床の埃を巻き上げ、彼の目に入った。


「ぷっ…げほっ、ごほごほっ!」


苦心の神秘的な雰囲気は一瞬で台無しだった。


儀式は強制中断を余儀なくされた。黒沢は赤くなった目をこすりながら、頑なに叫んだ。


「この程度の障害、取るに足らぬ!これぞ試練(トライアル)!元素が我らの意志を試すのだ!空塵参謀!偵察を行い、我らの意志によって呼び覚まされた霊力の兆候(サイン)を探れと、命じる!」


笑いをこらえながら、俺はこの荒れ果てた小さなテラスを見渡した。埃がちょっと増え、雀が数羽彼の「咆哮(ほうこう)」に驚いて飛び立った以外は、何の変化もないように見えた。俺の視線が隅の、ずっと放置され錆だらけのブリキのビスケット缶に止まった。何かがキラリと光っているように見えた。


「おや?」


好奇心に駆られて近づき、注意深く缶を蹴飛ばした。中には予想された秘伝書や遺物はなく、空き瓶や丸められた包装紙、それに汚れたコインが数枚あるだけだった。


だが、ガラクタの一番底に、金属の缶が一缶——見知らぬブランドの、期限切れのソーダ缶だった。名前は磨り減って判別できない。缶体は凹んでいて、残留液はとっくに蒸発しており、不審な結晶の痕跡が残っているだけだった。


「うむっ?!」


黒沢は獲物の匂いを嗅いだ猟犬のように飛び込んできて、その缶を掴み取った。目は銅鈴のように見開かれている。


「こ、この結晶の残留物…この歪んだ缶体…むう——!」


彼は息を呑み、声は震えるほど興奮していた。


「これは凡物(ざつぶつ)にあらず!こ、これは『空間乱流(スペース・ディストーション)』の衝撃後に残った『次元精髄(ディメンション・エッセンス)』と『容器の残骸(ヴェッセル・レムナント)』か?!感ずる!狂暴な歪みの力(ちから)が僅かに封じ込められておる!」


彼は俺の方を振り向き、力強く俺の肩を掴んだ。


「空塵!見つけたぞ!これこそ『秘宝(アーティファクト)』だ!力は微弱で不安定ではあるが、紛れもなき異界のエネルギーが残した痕跡だ!我ら、空間の共鳴を引き起こしたのだ!これでわが理論は証明された!」


彼はその錆びたガラクタを高々と掲げ、まるで新大陸を発見したかのような狂喜乱舞の表情を浮かべた。それはあたかも本当に稀代(きたい)の至宝(じほう)であるかのように。


たかが期限切れのソーダ缶一つで、跳び上がらんばかりに興奮する黒沢の姿を見て、衛生面や科学常識に関するツッコミは全て喉元で詰まってしまった。


彼のあの純粋で、熱烈で、無鉄砲なまでに奇跡を信じ切る眼差しが、簡単に壊してしまうには忍びなかったのだ。


たぶん、この凡庸さ極まる日々の中では、この愚かさすら微かな光を放っているのだ。


「わかったよ…龍之介卿(きょう)」


俺はため息をつき、できるだけ「敬意」が込もっているように聞こえるよう声を整えた。


「これは確かに…尋常ならざるものだな。注意して保管し、研究する必要がある」


(内心では思った:明日こそ機を見てこっそりあの生物兵器級のものは彼に処理させるつもりだ。)


帰り道、黒沢はその壊れた缶をずっと抱えながら、興奮して将来の「雄大なる計画」を語り続けた:その上の「異界文字」を解読する、同類の「遺骸」を収集する、「エネルギー感知陣(フィールド)」を設置する…など。


夕日は、跳ねる彼の背後の影を長く伸ばし、彼が手にする「秘宝」にも温かくもどこか現実離れした光の輪を添えた。


ドアを開けると、慣れ親しんだ空気が全身を包んだ。


「お兄ちゃん!」


小遥は相変わらず飛び込んできた。今日はガーリーイエローの小さなパーカーを着て、顔には水彩絵の具がついている——黄緑が混ざった斑点は、いたずら好きな精霊にキスされたばかりのようだった。彼女は濡れた画用紙を振りかざしていた。


「見て!新作!青いゾウさんと虹の雨!」


「すごいな、うちの小遥」


絵用紙を受け取ると、抽象的で色彩豊かな雨粒の中で踊るゾウさんが描かれていた。子供ならではの自由奔放な想像力に溢れていた。


「お帰りなさい?今日、学校はどうだった?」


台所から母の優しい声が漂ってきた。今日は大根の煮物を作っているらしく、鍋がグツグツと泡を立て、濃厚な昆布と醤油の香りがリビング中に満ちている。


「うん、まあまあだよ」


リビングでは、あのオレンジ色のタングステンランプがすでに点り、小さな、しかし確かな太陽のように輝いていた。


父は専用のアームチェアに座り、いつものように新聞を手にしていた。だが、よく見ると、彼の今日の様子は少し違っている。


彼はうつむき加減で、眉間にほとんど気づかれないほどの皺が寄っていた。何か集中して見極めなければならない問題に直面しているかのようだった。


だが、父の笑顔は変わらず穏やかだった。立ち上がり、俺のそばまで来て、そっと、しかし確かに自然に手を伸ばし、髪を撫でた。その触れあいは温かく、重みがあり、心を和らげる力に満ちていた。


「さあ、もうすぐご飯だ、お母さんのお手伝いしてきなさい」


夕食の空気は相変わらず温かく、小遥は虹色のゾウをぺちゃくちゃと話し続け、父は普段通り学校生活を尋ね、母は笑いながら丁寧に骨を取った焼き魚を俺の皿にのせてくれた。


俺がうつむいてご飯をかき込む一瞬、つい目尻で父のテーブルの端に置かれた手に目が行ってしまった——それは今、テーブルの縁にそっと置かれ、指関節がわずかに浮き上がり、指先には何年もかけてできた工具による細かい傷痕が刻まれている。


人々が眠りに就く夜の静けさの中、ベッドに横たわっても、ランプの光の下であのどうにも抑えきれない微かな震えは、依然として目の前にちらついていた。


それは、静かな湖面に突き刺さった棘のようで、深くに眠る、曖昧でありながらも重苦しい将来への憂いをかき乱していた。


学校の図書館での午後、高い窓から差し込む日光は大きな塊に分断され、埃をかぶった天板の書棚に静かに落ちていた。


黒沢の「雷霆の力(いかづち)の高次応用(結局は彼が電池と電線と磁石で『小実験』をしようとしているだけ)」についての長々としたおしゃべりから逃れるため、俺は自ら進んで、図書館管理を担当している老山田(おやまだ)先生を手伝い、寄付されたばかりの新しい(古い)本を整理することにした。


空気中には、紙とインクと埃が長年混ざり合った独特の香りが漂っている。


俺は高くそびえ立つ書棚の間を巡り、カビ臭く、表紙が黄ばんだり破れたりした本を分類した。


ほとんどは何十年も前の古い雑誌や辞書、すでに絶版してしまった文学書の類だ。


隅にある段ボール箱の底で、ひどく古ぼけた小さな本が目を引いた。


一般的な文庫本より一回り小さく、表紙は厚紙でできているらしいが、背表紙から完全に剥がれ、セロハンテープででたらめに貼り付けられている。


表紙の図案はほとんど消えかかっていて、おとぎの城と森の輪郭がかすかに見え、すでに判別できない書名がかすれている。


紙は粗く黄ばみ、端はひどく丸まっており、触ると乾燥して壊れやすく、少し力を入れると砕けてしまいそうな質感だった。


俺は慎重にそれを手に取った。開くと同時に、馴染み深くもどこか遠い感覚が、突然、心臓を締めつけた。


ページの端じりには汚点がこびりついている——正体不明の食物の油の染みや、埃で付着した黒灰色の指紋、さらには小さな、深い茶色の、とっくに乾いた染みもあって、まるで固まった血の滴のようだった。


ページ上の活字はかすれかかっているが、この本で最も特徴的なのはその内頁だった。


ほとんどすべてのページの空白や挿絵の脇に、青や黒のクレヨンや鉛筆(それに正体不明の絵の具も)、そして歪みながらびっしりと描かれていた。子供の落書きではなく、まるで…戦場を思わせるものだった。


小さな王子様は、濃い髭と太い眉を描き足され、凶悪な表情に見える。


豪華なロングドレスを着たお姫様は、自分より背の高い「大剣」(力強さを感じさせる荒々しい線)を振り回し、羽のはえたネズミめがけて必死で斬りかかっている。


次のページでは、美しい妖精はとがった帽子をかぶった「魔女」(下手な字で「わるい魔女!!」)に変わり、ゆがんだ赤い光線を戦士に向けて放っている。


のどかな田園風景が描かれた挿絵の片隅には、燃え盛る炎と波線で表される爆風が描き加えられている。


この稚拙でシンプルな線の「戦闘シーン」は一つひとつに、子供じみているものの、とてつもなく強い怒りと反抗がにじみ出ている。


この絵を描いた人物は、物語の中の美しいものをすべて塗りつぶし、自分自身の、もっと激しいバージョンに書き換えようとしているかのようだった。原画を粗暴に覆うその線は、子供には理解できず、変える力もない、外の冷たい現実を必死に消そうとしているかのようだった。


途中のページの挿絵をめくった。そこにはもともと、陽射しが明るく差し込む森、数羽の小鳥がさえずる絵が描かれていた。


だが、その一番明るい場所——クレヨンで描かれた陽射しの光輪の中心に、非常に稚拙な小さな人の輪郭が描かれていた。


他のキャラクターのようなはっきりした特徴はなく、ただポツンと描かれた簡素な人物画で、腕を広げて、あの陽光を抱きしめようとしているようだった。


そして、その小さな人影の背後には、巨大な、濃密な、黒いクレヨンで何度も何度も塗りつぶされ埋め尽くされた黒雲が重く垂れこめて、小さな人影と陽光の両方を飲み込もうとしているかのようだった。


黒雲に完全には覆われず、わずかに森の原画が見えている端っこに、震えたような未熟な筆致で、しかし一生懸命に書こうとした様子がうかがえる小さな青鉛筆の文字が書かれていた。


「ひ…かり」


指先がその粗い紙を滑り、ぎゅっと刻まれた「ひかり」の文字と、そして外の冷たい鉄柵(てっさく)を象徴する、巨大で絶望的な黒い雲を撫でた。


指先に伝わる感触は異常に明確で、紙のざらざら感、クレヨンの塗り重ねでできた盛り上がった粒々の感触、そしてあの青い文字が窪んだ紙の繊維に残した手触りは——まるである種の刻印のように時空を超えて、幼い頃の掌から伝わってきた。鉄柵の冷たい触感と、消毒液の匂いが漂う寮の片隅の静けさと絶望を伴って。


心臓が見えない手にぎゅっと掴まれた気がした。


幼い頃、灰色の高い壁に閉じ込められ、狭い隙間から外の世界を窺う息苦しさが、鉄の匂い、冬の浴室の冷たい湿気を伴って一気に押し寄せ、口と鼻を塞いだ。


喉の奥に突き刺さるような違和感が、前触れなく、猛烈に襲ってきた。長く抑え込まれた火山の溶岩が爆発するかのように。


「げほっ…げほっ!!ごほごほっ!!!」


激しいむせ込みが抑えきれずに爆発し、一度ならず次から次へと、胸を震わせて痛くさえなった。激しい震えで、反射的に手を口に当て、背中を丸めた。生温かい鉄臭さが一気に喉元へ押し寄せてきた!


俺はよろめいて、一番近い窓へ駆け寄り、庭へと続く窓を思いっきり開けた!午後の強い風が流れ込んだ。土と草の匂いが混じっていた。


ムカムカする吐き気を必死に押し殺し、俺は力強く、貪欲に、植物の生気を含んだ冷たい新鮮な空気を何度も吸い込んだ。喉の奥で渦巻くあの灼熱の鉄臭さと血の気を、払いのけ、押さえつけようとした。


「空塵?どうした?大丈夫か?」


老管理人、山田先生が物音を聞きつけ、書棚の向こう側から心配そうに首を出して尋ねた。


口を押さえていた手を離し、手のひらを広げた。血はなかった。不幸中の幸いだった。ほんの一瞬前の恐怖は窒息による幻覚だったのかもしれない。


しかし喉と胸の奥底に残る激しい痛み、そしてあの生々しい鉄臭さは、俺の不安が根も葉もないものではないことを思い知らせた。


「げほっ…だ、大丈夫です、山田先生」


俺は声を正常に戻そうと喉を鳴らしたが、抑えきれないかすれ声になってしまった。


「ちょっと埃を吸い込んじゃいまして…外の風でだいぶ楽になりました」


その古ぼけた童話本を素早く閉じ、ぎゅっと握りしめた。破れた表紙の端が手のひらに当たって、冷たい墓石の感触だった。


「おお、びっくりしたわい。それじゃ窓辺で涼んで休んでおれ、あと少しの本はワシが片付ける」


老山田は首を振り、再び書棚の後ろに引っ込んだ。


窓の外は相変わらず日差しが明るく、白い蝶が数羽、草刈りを終えたばかりの芝生の上でひらひらと舞っている。空気は澄んでいる。


俺は冷たい窓枠に寄りかかり、目を閉じた。ゆっくりと、深く、燃えるような濁った息を吐き出した。本を握りしめた指の関節は力の入れ過ぎで白っぽくなっている。


喉の奥、そこには慣れ親しんだ一点の刺すような痛みが、頑なに居座っていた。目を覚まし、闇の隅でじっと見つめている毒蛇のようだった。

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