第3話海へ

 失恋と言えば…の海へ向った。勿論1人で。

自宅から40分位で着くこの場所は私の大好きな場所だ。久しぶりに来たが潮風が気持ちよく開放感が半端無く良かった。

 少し前は彼と一緒に見た海。今日は寂しいさと悲しみと、憎しみ嫉妬色んな感情で眺めていた。気持ちの整理がつかなくて中々前に進む事が出来ない。どうしたら良いのか。このままストーカーの様な事を続けて行くのも嫌だし。いくら海を眺めて居ても答えは見つからなかったが、どっぷりとこの気持ちに浸る覚悟をして私は海を後にした。

 ホントは彼女をズタズタにしたいがそれが出来ないから私は自分の手首にカミソリを充てた。鈍い痛みと赤い血が流れた。この痛みを誰かに知って欲しい。彼に解って欲しい。私の心の痛みが形になって深く長く残れば良い。

 昼間はなんとか仕事に行き彼女を見ないようにして過ごそうとしたが、意識すればするほど彼女の姿を探しどうして彼が好きになったのかそれを探った。彼の声が聞こえると勝手に私の心は〝好き〟と呟いて彼の気配を感じると勝手に視線が動き…私は失恋を楽しんだ。苦しむ事さえ幸せと感じる、こんなに好きなんだと好きで居て良いんだと自分に言い聞かせた。心がこれ以上壊れない様に身体に傷を付けた。忘れたいのに忘れられない。彼と過ごした日々。無かった事になんか出来ない。あの時確かに愛された。私は満たされていた。思うことはいつも矛盾していて私を混乱させた。

 願いはもう一度彼に愛されたい。彼に触れて欲しい。彼にもう一度私と向き合って欲しい。話がしたい。


「助けて。」


私はコミュニケーションが苦手な彼を上司からも彼の部下からも庇って来た。彼の事をいつも考えて身体の心配をして沢山の物を貢いできた。彼は〝そんな事頼んでいない。〟そう言うだろう、私が勝手にしたこと。私の思いは報われることはない。

 辛い思いを楽しめる強い自分が欲しい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る