第3話 突然の襲撃!野良怪人、悪逆非道……なのか?
世界には、闇がある。
秘密組織ネビュロス愛知支部は人々を支配し、闇の帝国を築き上げようと日々暗躍している!(*週休2日・各種手当完備・福利厚生充実・ボーナスあり)
そして、闇を打ち倒さんとする光がある!
魔法少女連合愛知拠点は日々、人々のために奮闘している!!!
(アットホームな職場、やりがいのある仕事です!)
また、人々はなにも闇に震えているわけではない。
闇と光の闘争の手助けのため素早く動画配信し、応援を通して魔法少女たちを助けている!
(初見さん大歓迎、応援【スパチャ】が魔法少女の助けになる)
この物語は、闇と光と人々による闘いの日々を描いた物語である!
~愛知県名古屋市某商店街~
とある休日の商店街、そこは人々がにぎわい栄えていた。
そんな場所に見慣れぬ怪人が一人表れた。
「こ、ここが名古屋か~、建物が多いずら~」
彼は怪人「ジャガネン・ノゲギリ」。
とある田舎から怪人のスターを夢見て上京した、ジャガーのような見た目をした青年である。
「よーし、ここから、おれの下克上が始まるんだ……っぺ!」
「見ててくれよな、おっかあ、弟たち……、絶対にビッグになってやるっぺ!」
彼のチャームポイントである腕についているノコギリをぶんぶん振り回し、気合を入れた。
そんな姿を通りすがりの人たちは温かい目で見ていた。
*
ジャガネンは商店街のシンボルである銅像によじ登ると、両手を広げて高らかに宣言した。午後の日差しに照らされた彼の影が、下を行き交う人々に落ちている。
「ギャヒャヒャヒャヒャヒャッ!」
「この商店街は、この『ジャガネン・ノゲギリ』が支配してやる~」
「さあ、恐怖しろ!絶望しろ!そして我に従え~!」
立ち、商店街の人たちに告げた!
「あ、怪人だ、こんなところでめずらしーゲリラ活動なのかな」
「見たことない怪人だな、ガルムーン大佐の新人教育か?」
「きゃー、きもかわーがんばってねー」
周りの人たちは怖がらず、暖かい目で怪人ジャガネンを見ている
「あ、あれぇ?なんか、おかしいずら……」
ジャガネンは困惑した表情を浮かべた。想像していた恐怖に慄く人々の姿はどこにもない。代わりに見えるのは、まるで珍しい動物を見るような温かい視線ばかりだった。
そこに老人たちが近づいてきた。
「あの~、そこの怪人さん。少しええじゃろうか」
「エ、アノ…なんだっぺ?俺に何の用だ、ジイさん共!」
「あんた~、ここらで見ない顔じゃが、県の怪人登録はすんどりますかの?」
「なん、え?がいじんとうろく?そ、そんなもん知らねぇずら!」
突然の質問に困惑する怪人に、続けて別の老人が問いかける。
「そうじゃ、その登録がないとその県で怪人活動は禁じられておるんじゃ、悪いことは言わん、怪人登録をしてくるのじゃ」
「そ、そんなもんせんでも……お、俺ひとりでなんとかなるっぺよ!」
「悪いことは言わん、講習を受けて怪人登録を済ませたほうがお主のためじゃ。」
「う、うるせーーー! 講習がなんだっぺ!登録がなんぼのもんずらーーー!」
激高した怪人が腕についているのこぎりを振り回し、飛び降りつつ足元の銅像を破壊し始めた。
「ひゃー、こ、こりゃいかん、早く警察に連絡と緊急配信をするんじゃ!」
慌てた老人は安全な場所に避難しつつも、一緒にいた別の老人に指示を出した。
視聴者数:2,758人
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
*〇〇商店街チャンネル 緊急生配信
<公式>ただいま、この〇〇商店街に怪人登録のされていない怪人が表れました。至急秘密組織ネビュロスに連絡の上、保護をお願いいたします。
<コメント>ひさびさに表れたな、野良怪人
<公式>今、こちらに秘密結社ネビュロスから返答が来ました。早急に対応に来てくださるそうです。状況把握のため、このまま映像は放送させていただきます。
<コメント>対応乙
<コメント>やっぱしっかりしてんな、あの組織
<コメント>ここらへんの地区だと大体1年ぶりくらい?
<コメント>でも、ここに現れたのは運がいいのか悪いのか
<コメント>怪人が保護に来る:運がいい
<コメント>魔法少女が退治に来る:運が悪い
<コメント>逆なんだよなぁ…
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「ギャヒャヒャヒャヒャヒャッ!俺は組織なんてものには縛られねぇ!この腕っぷしで天下を登り――」
その時、空が薄いピンク色に染まった。商店街の人々がざわめき始める。
「あ、あれは……」
「魔法少女だ!」
ジャガネンが気づいた時には、既に遅かった。ピンク色の光線が彼を直撃する。
「ぎゃひーーーーー!」
「はい、敵でもなんでもなくただうるさいのでビーム撃ちます☆
撃っちゃった☆」
ピンクの髪をなびかせて、空からふわりと現れたのは魔法少女アウロラ・ロゼ。
光線を当てた怪人に向かいニコリと笑った。
視聴者数:10,141人 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
<コメント>結果:大凶
<コメント>よりにもよってピンクかよ…
<コメント>怪人ー!早く来てくれー!
<コメント>トラウマになっちゃうから早くその魔法少女から逃げるんだ!
<コメント>立派な怪人になる前に廃人になっちゃうよ(激うまギャグ
<コメント>はいはい、おじいちゃん、ご飯はさっき食べたでしょ
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「お、お前は魔法少女か!急に攻撃してきていいのかよ!変身とか口上とかあるんじゃないのか!?」
「ステージ上では必要なんだけど、今は緊急事態だから、特にないんだよね」
「え?」
困惑の表情で魔法少女を見る怪人。
「登録してない怪人さんには、『指導』してもいいってルールがあるんだよ☆」
アウロラ・ロゼの笑顔が、一瞬だけ別の表情を見せた。それは宿敵を見るような、冷たい表情だった。
視聴者数:17,889人 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
<コメント>野良怪人が魔法少女の洗礼を受けてる…
<コメント>ま、魔法少女様の戦い方じゃない…
<コメント>がんばれ野良怪人!あと少しの我慢だ!
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「は、はぁ?お、おめぇみでぇな女が俺をわからせ―――ギャッ!」
セリフを言い終わる前に、魔法少女から無詠唱のビームが怪人に当たった。
「そしてぇ、イベントステージ以外では、緊急退治法が適応されて、
バトルステージ外だと、ちゃちゃっと退治してOK☆って決まっているんだよ☆」
「ちゃ、ちゃちゃっと…?」
「そう、ルールも力加減もわからない怪人がそこかしこで暴れると、人々に迷惑が掛かるでしょ?
だ☆か☆ら☆
君を確実に退治してあげる☆」
明るい声で話しているが、冷たい表情のまま怪人を見ている。
「ご、ごめんな」
「いっくよー☆確殺☆デス★ビィームッ!!」
超高速のビームが野良怪人を狙い、怪人に襲い掛かった。
「そう、そして怪人側にもルールがある」
低く響く男性の声。その瞬間、アウロラ・ロゼの必殺技が見えない何かにはじかれ、真上に逸れた。
「へぇ☆」
空を見上げる魔法少女の視線の先で、黒い翼が大きく羽ばたいている。
視聴者数:23,480人 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
<コメント>来た!クロウ来た!これで勝つる!
<コメント>よかった、助かったな野良怪人
<コメント>これは惚れる
<コメント>あきらめなさい、彼は私のよ
<コメント>ヒェ
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
怪人クロウが翼を広げ、ジャガネンを守るように現れた!
「あ、クロウおひさ~、彼女さんは一緒じゃないの☆」
「まだ、大学の授業中だ。
近くにいた俺に緊急依頼があり、授業を抜けてきた」
「そうなんだ…よかったね、そこのノコギリ君」
「あ、あなたは何で…」
「お前を助けたかってか」
クロウは苦笑しながら答えた。
「野良怪人が現れた場合は、その地区に拠点を置く怪人組織が保護を推奨される。それがルールだ」
しかし、彼の表情には義務感以上の何かがあった。同じ怪人として、放っておけなかったのかもしれない。
「君は本当に何も知らずに怪人活動をしたんだろ?」
「は、はい~、そうなんだ~」
「よし、この怪人は我々秘密組織ネビュロス愛知支部が保護する
彼により被害があった者たちは、お手数であるが被害状況をそろえて
『協会』に申請をしてくれ。」
「じゃあ、後はよろしくねー、じゃーねー☆」
自分の役目は終わったとばかりに、笑顔を振りまいて魔法少女アウロラ・ロゼは空に飛んで行った。
視聴者数:40,256人
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
<コメント>ノシ
<コメント>よかった、トラウマになってがたがた震える怪人はいないんだね
<コメント>こうして野良怪人は魔法少女からの恐怖に耐えきった!感動した!
<コメント>何かがおかしいが何もおかしくはないな、ヨシ!
<コメント>めでたしめでたし
<コメント>これで終わりかなー
<公式>無事、怪人が保護されたため、生放送はこれにて終了とさせていただきます。
<コメント>あいー
<コメント>おつかれさまー
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「さて、まずは一緒に我々の秘密結社まで来てもらおう」
「は、はい~、よろしく、お願いしやすっぺ……あ、間違った!」
「ハハッ、いい返事だ、そこで手続きや講習があるからしっかり学んで欲しい
今回の件ではお咎めを受けるが、それを乗り越え共に戦おうではないか」
「は、はい、頑張ります!」
「ほかにもいろいろあるが、向かいながら話そう。君のことも知りたいしな」
「わ、わかりました」
「さあ、さあ、風に乗って出発だ、しっかりつかまれよ、新入り。
秘密結社に着くまでだが、楽しんでくれよ!」
「え、う、うわあぁぁぁぁぁぁぁ」
クロウはジャガネンを抱え込み、すごい速さで飛んで行った
視聴者数:17,922人
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<公式>放送終了まで後1分
<コメント>おつかれさまー
<コメント>野良怪人も正式にステージで登場してほしいな
<コメント>クロウ様…
<コメント><●><●>
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*
「えー、寄ってらっしゃい見てらっしゃい!ただいまお肉屋NAKAMURAでメンチカツセールやってるよ~」
首に「罰則につき、奉仕活動中」と看板をぶら下げた怪人ジャガネン・ノゲギリが元気よく宣伝していた。
数日前、商店街に再び現れた怪人が謝罪に現れ、真剣な表情で話し始めた。
「この商店街でお騒がせしてしまった、おいらだけど
もし許されるんだったら、この商店街の“観光怪人”として活動させてくれねぇでしょうか。
……なんて、自分で言ってて何言ってんだべって思うけど……」
1テンポ、空白があったのち、 多数の拍手が聞こえてきた。
「田舎から出てきたんだろ?がんばれよ!」
「ちゃんとやらねぇと、魔法少女が来ちまうぞ!」
「壊れた建物は補助が出るから、気にするな!
次はちゃんとステージで暴れろよな!」
「ううぅ、皆さん、なんでこんなにやさしいんだっぺ~」
ジャガネンの目には、思わず涙が浮かんでいた。故郷を出る時、「都会は冷たい」と言われていたのに、この温かさは一体何なのだろう。胸の奥で、何かが溶けていくような感覚があった。
おっかあへ
都会はやっぱすごいところでした。
夢に見ていたトップ怪人の夢はまだあきらめてねぇけど、地に足付けてコツコツ頑張っでいくっぺ!弟たちにもよろしく言っといてくれ!
こうして、田舎から出てきた野良怪人ジャガネン・ノゲギリの初日は幕を閉じた。
しかし、彼の本当の試練はこれからだった。
◆次回予告◆
愛知県のとある商店街に突如現れた野良怪人ジャガネン・ノゲギリ。
あっという間に討伐され、秘密結社の保護下に入った
奉仕活動の前に、やらなければいけないことがある。
「この講習テキスト、分厚いっす!」
そう、怪人登録講習だ!
次回――「魔法少女と怪人、その成り立ちとは!」
怪人活動に必要な講習だっぺ、みんなも絶対に見てくんろな!
ステージ☆マジカル!~今日も戦いはエンタメです~ @yanagi4201
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