第六話:放課後の青

【SE:夕方のチャイム。遠くで部活動の声】


その日、空はどこまでも澄んでいた。

昼間の風がまだ残る放課後、僕は校舎裏のベンチで、ぼんやりと空を見ていた。


「ここにいたんだ」


振り向くと、紬が立っていた。


「探しちゃったよ」


「ごめん、なんとなく、こっち来ちゃって」


紬は隣に座り、同じように空を見上げる。


「……この青、なんか好き。透明なのに、深くて」


「うん。すごく、遠くまで見える気がする」


「……名前、つけられるかな」


「名前?」


「この空の色。なんか、ちゃんと覚えておきたい気がして」


僕は一瞬迷って、それから、ゆっくりと言った。


「じゃあ……“約束の青”とか」


紬は目を丸くして、それから、そっと笑った。


「……いいね、それ。ちょっと、くすぐったいけど」


二人で見上げた空は、どこまでも続いていた。


――あの日の青は、たしかに、僕たちの記憶に刻まれた。


【SE:風に吹かれるページの音。ゆっくりと日が傾く。】

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