第四話:ノートのすみで

【SE:教室のざわめき、黒板をこするチョークの音】


新学期が始まって数日。僕と紬は同じクラスになった。

とはいえ、席は少し離れた窓際と廊下側。


「やっぱり、また隣がよかったなぁ」


そう言って紬は笑ったけど、どこか少し寂しそうにも見えた。


僕も同じ気持ちだった。

けれど、今さら「隣がよかった」なんて言えるはずもない。


昼休み。僕は何気なく開いた国語のノートに、彼女の名前を書いてみた。

それだけで少し、心が落ち着いた。


そして数日後、ノートを整理していると、そのページのすみに、こう書き足されていた。


「わたしも書いてた。君の名前。」


――筆跡は、紛れもなく紬のものだった。


僕の心は、ふわりと浮かび上がるような気がした。


【SE:遠くで誰かが笑う声。春の午後。】

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