第5話 調査
渡邊明美。35歳。半年前に女子高生が行方不明になる事件を担当している刑事である。半年たった今、この行方不明事件が解決できないのには、ある理由がある。
それは、行方不明者がまだ見つかっていないというとても単純な理由だ。女子高生の家近く、学校近く、友人宅の近く、自殺者が多いことで有名な樹海付近、ありとあらゆる可能性のある場所を懸命に探したが、見つからない。町中の監視カメラを辿ってみても、女子高生の姿は見当たらない。
「これは神隠しなのかもな。」
冗談のように話しかける角田警部。誰にでも胡散臭い笑顔を見せる、少し苦手な人だ。
「そのような根拠のない現象を私は信じません。」
私がきっぱりそう言うと、
「じゃあ、これが神隠しじゃないっていう証拠を見つけてから報告するんだな。」
フンと鼻で笑いながらその場を立ち去る角田警部に咳払いをして、そんなものがあるわけないと主張した。
監視カメラの話に戻るが、監視カメラに映った女子高生の姿はある場所を境に映らなくなっていた。それは、▽□通りの少し先を曲がった先の狭い路地に入るところである。あいにくその路地には監視カメラが設置されていない。そもそも、人気が無いと路地なので、そのようなものは必要ないと思われるが。その路地の先を15分程歩くと、大通りに繋がっているため、その大通りを抜けたのだろうと誰もが考えている。確かに、そう考えるのが普通であるが、私はこの“狭い路地で行方不明が起きた”のではないかと考える。そのためにその路地周辺の聞き込みを行った。予想通り聞き込みが出来たのは周辺に住む3名だけだった。しかし、3名とも路地にはそもそも入ったことがないと言っており、それ以上の情報はつかめなかった。
「だめか。」
それならと、路地の中に入り、何とかして怪しい者や証拠はないかと探そうとした。
路地に足を踏み入れようとした瞬間、自分の3歩先ほどに小さい影が見えた。子どもがこんなところにいるのかと驚き、
「ここは危ないよ。」
と声をかけると、
その子ども、少女の瞳は光を失っていき、黒い虹彩が瞳全体を覆った。まるで何かの映画に出てくる地球外生命体の様だった。恐ろしいその姿につい声を上げてしまった。
「ここに何の用?また、撮影でもしに来たの?」
少女はゆっくりとそう言った。
これこそ何かのドッキリではないかと思った。でも、私は刑事だ。証拠を何としてでもつかむ。
「事件に関係があるかもしれないから、調べてきた。それに、“また”ってことは、ここを撮影しに来た人がいるってこと?」
意を決して、尋ねる。
「そうだよ。自分の前世を知ろうとしたんだ。でも、その後…」
「その後に何?」
聞き返そうとすると、強い風が吹く。思わず目を閉じ、もう一度同じ方向を見ると、少女の姿は無かった。逃げたのか?この一瞬で?
でも、今しか無いと思い、路地の中へ足を踏み入れる。路地内を撮影しながら、歩きまわり、1往復したところで、撮影した内容を確認し、署に戻った。
AIを用いて、先ほど撮った映像を添付し、この場所を撮影している、ネット上にアップロードされている動画を見つけてほしいという旨のプロンプトを打ち込む。しばらくして、一番上に出てきた動画のサムネイルを見て、これで間違いないと思った。
「ニコニコチャンネル…最近メンバーが事故に遭って、亡くなったところか。」
P”ypfqb”y]94
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます