第4話 欠席者
「私の小学生の頃の話ですか…?
そうですね、もうこの歳なんであんまり覚えてはないんですけど、一番仲良かった友達との思い出なら話せますよ。名前は柏原充希って言うんですけどね、そう、「みつき」って名前だからミッキーって呼ばれたりなんかして、まあ、その子とは家も近くて、家族ぐるみで仲良かったんですよ。
ていうか、この話で良いんですよね?良いんだ、なら続けますね。出会ったのは、小学校に入学する前だったかな。母親と一緒に明日から入学する学校をちょっと見ておこうかなと近所を散歩してたら、ぴかぴかのランドセルをおばあちゃんらしき人から貰って喜んでいる子がいて。その子が充希です。母親から「もしかして、明日から●●小学校に通いますか?」って聞かれたら、充希は恥ずかしそうに俯きながら頷いたんです。その時、私はこの子とは仲良くなれそうだなって直感で思ったんです。なんて言うか、自分と同じような人見知りだけど、悪い子ではないなって。それから入学して同じクラスになって、同じ時間を過ごしていくうちに親友と呼べるほど仲良くなりました。
小学校って言えば、沢山イベントごとがあるじゃないですか?運動会とか遠足とかキャンプとか修学旅行とか…あ、でも充希は修学旅行の時にはもういなかったんだっけ。転校というにはちょっと急すぎて、言葉で表すなら、
失踪…ですかね。何がきっかけかはあんまり覚えていないんですけど、強いて言えば、充希の様子が変だと感じたのは、5年生のキャンプが終わってからですかね。まあ、でもキャンプ中は何か変なことが起こるとか、そういう事件とかは特に起こらなかったので、充希は個人的に悩み事があったんじゃないかなと今なら思いますね。キャンプに行ってから、しばらくして充希はずっと難しそうな本を読んでて、あの子今まで漫画しか読んでこなかったのに、おかしくないですか?読んでる本は何かって?えーとですね、、うわ、思い出せないな。ちょっと待ってくださいね。読んでる本の題名は覚えていないんですけど、表紙なら何となく覚えています。こんな感じの赤い色が全体に塗っていて、黒と青が星みたいに散らばっている感じ。まあ、これだけの特徴で人が分析するのは限界があるかもしれないけど、ほら最近はコンピュータ、特にAIとかさ優秀なんじゃないですか?そちらに任せちゃえば、どうにか分からないですかね。あ、話に戻りますね。充希はその難しい本を読み始めて1週間しないうちに、不登校になっちゃたんですよ。皆からいつも欠席している人っていう印象が充希に抱かれ始めたころ、席替えがあったんです。当然充希の席も一応移動させるので、私が持ち上げたんです。でも、なんかその机すごく重いんですよ。あれ?と思って、引き出しの中を見たんです。そしたら、」
その時、勢いよくドアが開いた。
「渡辺さん。例の場所について至急確認したいことがあるので、すぐに来てもらえませんか?」
関係者から聴取をしていた渡辺のもとに後輩である桐谷から声がかかる。
「今、大事な聴取をしているので、少し待ってもらえないか?」
「でも、すぐにと、上の方から言われてまして…」
こうなれば、仕方ない。いったん聴取を止めるしかない。
「加藤さん、お話ありがとうございます。続きはまた今度でもよろしいでしょうか?」
「私は構わないですよ。充希の思い出話を出来て、なんだか懐かしくなりました。」
「すぐにまたご連絡させていただきます。今日は本当にありがとうございます。」
いえいえと言いながらさっきまで話をしていた加藤蘭は部屋を出ていく。
「それより、桐谷。至急の話とは何?」
「先輩がにらんでたあの占い屋。あの動画は確か一か月前のものと渡辺さんはおっしゃってましたよね?」
「あぁ、カメラマンの方には会って、そう聞いているから。」
「その場所、“存在しない”んです。」
「どういうこと?」
思考が止まる。私はあの場所を地図でも確認した。住所もつかんでいた。何なら今日の聴取が無かったら、単独で乗り込もうとさえ思っていた。
「詳しいことは会議室で皆さんと一緒に話します。」
こちらは次の日に放送されたニュースである。
「次のニュースです。
昨夜未明、東京都K区〇▽マンションで女性の死体が発見されました。
遺体の身元は加藤蘭 45歳です。
自宅で発見され、警察を自殺であると判断しています。」
加藤の自宅には小さな紙切れが遺体のそばに置いてあった。
そこには、
「私は前世が知りたかった。」
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