第3話 アイスクリーム
私の通学路の途中に、小さいアイスクリーム屋がある。
友達と放課後、そこでアイスを買って、食べながら帰るのが日課だった。
お店自体は地味で立地もまあまあ悪いけど、
何より店員さんが美人だった。
色白で綺麗な顔立ちをしている。
友達もその店員さんのファンで、だからそこが行きつけになったという理由でもある。
夏休みにもう少しで入るという頃。セミが鳴き始めて、じっとしていても汗をかいてしまうような日。この日も友達と一緒にアイスクリーム屋に入った。
「いらっしゃい~。あ、また来てくれたんだね。」
いつも通りにこやかで綺麗な顔の店員さんが声をかける。
「今日も来ました!めっちゃ暑いので、こういう日に食べるアイスは格別だなと思って!」
「その気持ちとても分かるわ。私もこのお店のアイス全部食べちゃいたいくらいよ!」
「私も食べる!」
友達がそう言うと、二人でバニラとチョコのアイスを買い、お店の前で食べながらダラダラしていた。
「ね、葵ってさ、将来何するか決めた?」
今日の授業で進路について話があったからか、急に話題を変えられた。
「え~、全然。そういう光は?」
「私は看護師かな。お母さんもそうだし、人の命に携わる仕事がしたいな。」
「素敵だね。」
両親がいたって普通の会社員とパートの私には縁のない話だ。
「逆にさ、、」
光が一瞬何かを思い出すようにして言いかけた。
「過去のこととか。興味ない?自分の前の人生はどんなだったのかなみたいな。」
「自分の前世ってこと?私はあんまり…」
私はそのようなスピリチュアルというか神とか天国とか魂は信じていないタイプだった。
「なに?光はもしかして興味ある感じ?」
揶揄うように私が言うと、
「でも、この前、葵が休んだ時、私一人でここに来たんだけど。店員のお姉さんがそのことを話してて。」
「え、あの人、そういう系だったの?」
聞こえないようにお互い声を潜めながら話す。
「今度から、変に意識しちゃいそう。」
「だから、それから、なんか信じるようになっちゃて。葵は信じてないの?」
私は否定するように首を横に振る。
「そっか、まぁいいか!変なことを考えないでおこう!」
「「ごちそうさまです!」」
2人でアイスを食べ終わり、家への帰り道でお互い別れる時、
「ね、私達さ、さっきの会話前にもしなかったけ?」
「さっきのって、何の話題だっけ?」
私は訳が分からなかった。
「前世について。」
その言葉を口にした光は見たこともない他人のような顔に見えた。
「してないけど。誰かと勘違いしたんじゃない?」
私がそう答えると、
「いや、絶対に貴方と話した。」
強い口調でそう話す光は、光ではなく、他の人と話しているような気分だった。
私はなんだか怖くなり、逃げるように家に帰った。
今から24年前の話です。
私の昔話にすぎませんが、当時友達だった光はこの後すぐに転校してしまい、どこで何をしているかも知りません。
あのアイスクリーム屋ですか?
多分もう無いかと。私は高校を卒業してからは、あの辺りには行っていませんので。
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