第6話 魔女の休日②

そうして私はココに案内されながら町を歩いていた。町は相変わらず賑わっており、魔女や魔道士もちらほらいる。魔法で手品を魅せる魔女や怪しげなポーションを売る魔道士など、いろんな人たちがいた。ちなみに魔道士は魔法を女性ではなく男が使う場合のことを魔道士と呼ぶ。

「すごい賑わってるね。」

「まぁ、今日は休日だしね。みんな出掛けたりしてるんじゃない?あんたは家でゴロゴロしてたみたいだけど。」

「だって外に出るのめんどくさいしぃ。」

「まったく、家にいるんならせめて宿題くらいしなさいっての」

ココは呆れながらそんなことを言う。私はココの言ってることがごもっとも過ぎて返す言葉もなかった。

「でもさ、めんどくさいとか言ってるくせに今は困っている人のために動いてくれてるもんね。やっぱイブは優しいよ!」

いきなりそんな事を言ってくるココ。私は思わず顔を背ける。

「別にそんなんじゃないし、昼飯奢ってもらうためだし…、」

「ん~?どうしたの?もしかして照れてる?」

ココはニヤニヤしながら顔を覗き込んでくる。

「照れてねぇーし!ただ飯のために仕方なくって言ってる!」

「ふぅ~ん?まぁいいけどねぇ~」 

ココはそう言いながら再び歩きだす。

ああ、そうだよ。いつも世話になってる親友の頼みを断れるわけないだろ。 

私は内心でそう呟きながらココの後を追う。

すると一つのお店が目にとまった。それはお花屋さんだった。

「うわぁ!懐かしいなぁ!このお店、そういえば最近いってなかったっけな」

「このお店がどうかしたの?」

ココが尋ねてくる。

「前はこのお店でよく花を買ってたんだよね。私の家の庭にたくさん花があったでしょ?あの花も全部ここから取り寄せたの。」

「へぇー。でもイブ、花になんて興味あったんだ。」

「多少はあるよ。それにこのお店に前はとても優しい女性店員がいてさ。その人、とっても優しくて、私にもよくしてくれてさ。お母さんのような存在だったよ。その人のおかげで花を好きになれたってのもあるほどだよ。」

「前はって、今はどうしてるの?」

ココがそのような事を聞いてくる。私は少し間を置いて答える。

「亡くなっちゃったんだ。突然、そんな情報が入ってきた。」

「あ、ご、ごめん!わたし…」

「大丈夫だよ。気にしてないから。でもどからかな。そのミミちゃんって子がお花関連で困ってるなら助けてあげたいって無意識に思っちゃってさ。なんでだろうね。でもきっとあの人も、ウミさんもそれを望んでると思う」

「イブ…」

そして数分後。私たちはある一軒家の前にいた。都市周りの森から近い位置にある家だ。私がそんなことを思いながら周りを見ているよそでココはおそらくミミちゃん?が住んでいるであろう家のインターホンを鳴らす。すると年齢からして40歳前後の男性が出てきた。

「おぉ!誰かと思えばココちゃんか!それと君は…。」

男性はココから私に視線を移して、それから言う。

「あぁ!君がココちゃんの言っていた子か!」

私はとりあえず自己紹介をする。

「イブ・ソーサリーです。よろしくお願いします。」

「ルイス・ブライアンです。こちらこそよろしくね。さぁ二人とも立ち話もなんだし入って入って!」

私とココはリビングに案内され、ソファに座る。男性も私たちにお茶を出した後対面側に座る。

「じゃあ改めて自己紹介しようか。」

ルイスさんはそう言った後、少し間をおいて告げる。

「僕の名前はルイス・ブライアン。一応この町では医者をしている。改めてよろしく!」

ルイスさんの自己紹介が終わるとココがで言ってくる。

「ルイスさんはね、この町でも指おりの医者でね。かなり有名なのよ。」

「へぇ~それはすげぇ」

私は思わず感心する。

「そうだね。確かに自信はあるけどね。他の医者に比べたらまだまだだよ…。」 

「そんなぁ、謙遜しちゃって~」

「ほんとねぇ。どっかの誰かさんとは大違いね。見習ったら?イブちゃん?」

「もう名前出してるやん。確信犯め」

「あははは。君たちはほんとに仲が良いんだね。」

私たちが言い合っていると突然ルイスさんが笑いだし、そんなことを言ってくる。

「そんなんだよぉ。私たちはもうそりゃ婚約した仲だからね!ね、ココ?」

「は?」

「ガチトーンやめません?怖いよ?」

「あははは!ほんとに面白いよ。君たちを見ていると!」

それからしばらく笑い合って数分した後、改めて本題に入るためにルイスさんは真面目な面持ちになる。

「じゃあそろそろ本題に入ろうか。イブさんも聞いてると思うけど、実は…。」

そうルイスさんが話しだそうとした直後、玄関から「ただいまー!」と大きな声が聞こえてくるのだった。

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