第5話 魔女の休日①
"天文の魔女"アスナ、いや、アスナ姉さんが家凸してきてから数日がたった。姉さんとはあの日連絡先を交換し、ちょくちょくやりとりをしていた。六賢者の一人であるから仕事の量も凄まじく、メールのやりとりではほぼ姉さんが仕事の疲れから愚痴って私がなだめるみたいなやりとりだった。ちなみに何の仕事をしてるかは企業秘密のようだ。ていうか、結局どんな魔法を使えるかとか全然分からなかったな
「はぁ、まったく愚痴を聞く私の気持ちも考えろよなぁ!」
今日は休日。学校もない。毎日の課題である魔法の修行はさっき済ませた。つまり、暇である。
「ホゥ」
「ん~?どうしたピグルス~」
「ホゥ」
「えぇ。外に出たい~?めんどくさぁい」
私はソファに寝っ転がりながら呟く。こんな体たらくな姿を師匠やアスナ姉さんに見られでもしたら一日中足つぼの刑にされるに違いない。そう思うと背中に悪寒が走るな。
…などと私が一人でぶるぶる震えていると「ピンポーン」とけたたましくインターホンが鳴り響く。
「はぁ、最近はピンポンピンポンうるさくて耳がピンポン球になりそうだよ…。」
私は自分でもわけのわからない事を言いながら重い足取りで玄関へ向かう。
「はぁ~い。この全世界美少女ランキング2位の私は忙しいのでお帰りくださぁ~い。」
「忙しいって見るからに暇そうだけど、それにそこは一位じゃないんだ。」
私が玄関を開けるとそのような的確なツッコミを返ってきた。そこには私の親友のココが呆れ顔で立っていた。
「なんだ。ココじゃん。何か用?」
「まぁ、そうだね。用があると言えばあるね」
「ふぅ~ん。まぁとりま上がりなよ。」
私はとりあえず話を聞くためにココを招き入れる。
「お邪魔しま~す。」
私はお茶をココに出して対面側に座る。
「へぇ~。最近来てなかったからゴミ屋敷になってないか心配だったけど、案外片付けられてるんだね!」
「おう。喧嘩なら買うぞ?」
この家に来る来訪者はみんな失礼な事を言わざるをえない呪いにでもかけられてるんか?
「あはは。ごめんごめん。そうムキにならないでよ」
「まったく。御託はいいからさっさと要件を言え!」
「はいはい。」
私がそう言うとココは真面目な顔で言う。 「あのね。私の知り合いの人の娘さん、ミミちゃんって言うんだけどね、そのミミちゃんが大切に育てていたお花の花壇がぐちゃぐちゃになってたらしいの。それで最近ミミちゃんがずっと元気なくて、私じゃ悔しいけどどうにもできないからイブを尋ねてきたってことなんだけど…。」
「いや、なんでそこで私が出てくるんや。この町には魔法を扱う人も多数はいるってのに、」
私も魔法は使えるし、私の魔法だったらなんとかできるかもしれない。でも私が魔法を使えることはココは知らないはずなのにどうして私の所に。
「確かにそうなんだけどね。でもね、なんとなくイブならなんとかしてくれそうな気がして。」
「そ、そうなんだ。それは嬉しいけど…。私は…。」
どうしよう。ココがわざわざここまで来てくれて私を頼ってくれているけど、魔法が使えるし事をここまできてバレるのはちょっとな~。それに単純にめんどくさい。
「イブ。お願い!助けて!」
はぁ。私はとんだお人好しだ。でも頼られるのは嫌な気分じゃない。それに他でもないココの頼みだからしゃあなしね。
「はぁ。分かったよ。できる限りの事はする。」
私がそう言うとココはパァっと笑顔を浮かべて「ありがとう!」と満面の笑みで言ってくる。一気に希望に満ちた表情になるココ。
「そのかわり今日のお昼ご飯奢ってね!」
「まったく。そういう所はちゃっかりしてるのね」
ココは私の言葉に肩をすくめながらも笑顔を浮かべていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます