第14話「闘力」

 ということで荒野に沿って、探索をする。



「あ、羽斬鳥がいる!」


 羽斬鳥。

 C級のモンスター。

 2メートルほどの大きさで羽が鋭利な刃状になっているのが特徴のモンスター。


 里では食用として討伐依頼があったモンスターだ。


焔弾バレット


 ——一撃。

 マホさんはそれをいともたやすく倒した。


「すご……」

「気づいてなかった。ラッキー」


 ラッキーとは言うが、C級を一撃とは……。

 改めて、A級との差をしみじみと感じる。


「食料ゲット。今日は焼き鳥」

「いいね~。ちょうどいいしここで野営しよっか!」


 ちょうど日が暮れたことと、食料が手に入ったことが重なり、野営することになった。

 焚火を囲んで、食事をする。


「ところでキタンさんは何級なんですか?」


 僕はキタンの等級を知らない。

 先ほどの動きの良さを見ると、僕よりも強いのは確かだろう。

 

「俺か? 里に入る前のやつになるが、A級だぞ」


 そういって、皮の衣服の中からA級の装飾品をだした。

 やっぱり、と謎の納得感があるものの、マホさんほどのレベルが3人。

 なんともプレッシャーを感じるものだった。


「にしても坊主がD級か、ちょっと手を見せてもらっていいか?」

「……? いいですが」


 なぜか、キタンは僕の手を取った。


「しっかり鍛えてるじゃねぇか。闘力もしっかりあるし、なんでD級なんだ?」


 闘力。

 またこのワードが出た。

 剣士が力を図る時はいつもこのワードが出る。


「知識不足……とも思うのですが、その……闘力というのがよくわからなくて」


 当たり障りの無い言葉を使った。

 するとアイラが口を開く。 

 

「ソウヤくん、闘力は技と一緒だよ~ビューンとやってビュン! だよ!」

「……」


 よく分からないというのはこれである。 

 アイラの説明はなかなか独特なところがある。

 センスもあるのだろうが、イメージがしづらいところである。

 見よう見真似で技を身に付けたが、技量が上がるほど難しくなっていった。


「え、もしかして、坊主のこと見てやったの剣士ちゃんか?」

「そうだよ!」


 アイラが自信満々に言うと、キタンが僕の方へ振り返った。

 

「……よく剣士ちゃんから技を身に付けれたな」

「えぇ!? なんでぇ!?」


 アイラはかなり驚いていた。


「剣士ちゃんはかなり感覚派なところがあるからな。ちょっと俺が見てやるよ」


 ちょうど食事を終えたところでもあったので、見てもらうことに。

 先ほどと同じように、キタンは僕の手を取った。


「俺の手を握ってみろ、なにも感じないよな?」

「はい」

「でも闘力を込めると……少し違うと感じないか?」

「……!」


 握っている手がだんだん暖かくなる。

 同時になにか、硬さを帯びたように感じた。


「闘力は意識してコントロールできる。闘力を込めることで、防御にも、攻撃にもできる。——こんなふうに」


 そういって、近くの木を正拳突きした。

 バキッと木は折れ、キタンの方へ傾く。

 そして倒れた木を、片手で軽々と受け止めた。


「……すご」


 これが闘力?

 人間技と思えない力だ。


「技は闘力を利用して放つものだ。だから坊主は闘力はあるが、完全に使いこなせていないって感じだろうな」

「どうやってコントロールを……?」

「力を纏うイメージ……かな。これは俺の感覚でしかない。使えるようにならんとなんとも言いにくい。闘力を掴むのに個人差があるが、坊主は技を意識して使えているだろう? その時に闘力は確実に利用している。技を出す時を思い出して、使いこなしてみろ 」


 そこは完全にイメージの問題みたいだ。

 最初に教えてもらった技を思い出しながら、鞘に手を置く。


 居合抜刀。

 先制にして、必殺の技。

 ひたすら同じ動きを反復練習したことで技として昇格させた。

 

「——居合抜刀」


 右手に力を込めて、引き抜いた。


「坊主、今右手に闘力を込めてるだろう」

「え、そうなんですか?」

「……いや、正確には抜刀の瞬間だけだな。闘力を使っているよ。あとは平常時でも意識的に使えるようにするだけさ」


 使えている。だったらあとは反復して意識的に使うまでだ。

 

「ありがとうございます。意識してみます」


 闘力。

 なんとなく、イメージがつきそうだ。

 みんなに後れを取らないためにも、使いこなしてみせる。


「眠い」

「はは、魔法ちゃんは眠そうだな。もう寝てていいぞ、夜の番は俺が最初な」


 そうして、その日は眠りについた。

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