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えっと――どういう意味なんだ……?
えーっと、最後にレナが残っていたけど、あれはルナだったのかな……? ルナと同じことを言っていたし。二人はよく似ているという設定なのだから、入れ替わったのかもしれない。
入れ替わって……ルナがレナになって、彼女がもらう財産を手にした? それはルナと同じところから来た使用人たちも共犯だった? そういう……話なのかな?
奇妙な劇だった。というか、なぜだかわからないけど、途中で変な居心地の悪さを感じてしまった。何かよくないことやっている、という気持ち。これ以上、深入りしてはいけないという恐れ、そして、不安――……。
客席が明るくなる。日の光が入ったせいか、不安が薄れていくのがわかった。私は千早のほうを向いた。
「ね、千早、どういう話かわかった? ルナがレナを殺して入れ替わったの?」
それから――13月って、何? そうだ、これは劇中で明らかにされることはなかった。
千早は私を見て、真面目な顔で言った。
「冬馬に訊けばわかる」
ま、そうかもしれないけど。
――――
文化祭二日目は、夕方から夜にかけてキャンプファイヤーをやることになってる。音楽が流れてそこでカップルが踊ったりするんだ。
場所はグラウンドで。私がそこへ行くと、隅の木にもたれかかって四季がいた。
秋は日が暮れるのが早い。辺りはもうだいぶ薄暗くなり、すでに火が焚かれている。陽気な音楽が流れ、踊ってる子たちも何人か。
空気はひんやりと冷たかった。私が近づくと、四季が気づいてこちらを見た。
「踊りに来たの?」
四季が言う。私はあいまいに答えた。
「うーん、どうしようか」
相手もいないし……。あ、四季は目の前にいるけど、私と踊りたいかどうか。
「四季は踊らないの?」
今度は私が尋ねた。四季は明るく冗談めかして言った。
「僕はもてないので。誰も僕を誘ってくれないよ」
もてないってことはないと思うけど。四季は綺麗な顔をしてるし。クラスメイトはみんな四季が好き。
でもそうだな……、みんな好きだからこそ、何か遠慮の気持ちがあるのかもしれない。
そうだ、遠慮だ。みんな四季が好きで、何か特別な存在だと思ってて、だからこそ、むやみに近づくのを恐れてるんだ。そんな感じがする。
私も――四季を踊りに誘うのは何か戸惑ってしまう。
「文化祭、楽しかった?」
私の質問に、四季はいい笑顔で答えた。
「うん! 参加できてよかった。最近、体調があまりよくなかったから心配だったんだけど。でも本当に、参加できてよかった」
四季がはしゃいでる。珍しく。そんな姿を見てると私まで嬉しくなってしまう。
はしゃぐ様子が、四季を普段より幼く見せている。私は夢の中の男の子を思い出してしまった。あの子は成長していた。ひょっとしてこれからどんどん大きくなるのかな。そして最終的には――四季になる?
「冬馬の劇、ちょっと難しかったね」
私が言うと、四季がはっとした表情になった。でもたちまちそれは消えて、穏やかな微笑になる。いつもの四季に戻ってる。
「メイドがお嬢様に成り代わった、ってことだよね」
四季が言う。私は同意した。
「そう! そういう話だよね!」
「でも……13月って、なんなんだろう」
13月……。タイトルにもなってるというのに、説明はなく終わってしまった。13月……メイドや使用人たちがそこからやってきたという。
それはどんな世界なの?
私は、流星群の夜のことを思い出した。四季が13月の話をして、そして倒れてしまったんだ。だから、私はなんだか心配になってきた。四季に、13月のことを意識させてはいけないような気がする。
「学園7不思議だよ。ただの噂」
私はそう言って笑い飛ばす。四季は私の言葉を聞いていたのかな。私に横顔を向けて、視線を地面に落としている。
「13月……か。それは、君たちの……」
小さな声で、四季がつぶやき、そして視線をあげた。その先にはキャンプファイヤーの炎と集う生徒たちと、こっちにやってくる人影と。あれ、やってくるのは如月だ。
「君の仲間だ」
四季は如月を見て、笑ってそう言った。そして私のほうを見て、「じゃあ、僕はこれで」と言い、去っていく。
え、なんで、どこ行くの? でも如月がこちらにやってきてるわけだし、私は動けずに木の下にいた。
如月が私のそばまで来て尋ねる。
「四季はどうしたんだ?」
如月が去っていく四季の背中を見る。私もそれを見る。四季は校舎のほうへ戻っていくようだ。寮に帰るのかもしれない。昨日、今日は体の調子がよかったけど、やはり無理をせず早く休もうということなのかもしれない。
「わかんないけど……。無理はしたくないのかも」
私はあいまいに言ったけど、如月はそれで納得したようだった。そして今度は私のほうを見た。私もまた視線を如月に戻した。
如月は背が高い。私は見上げてしまう。如月の視線が私と合って、そして照れたように、如月が言った。
「俺と――踊ってくれる?」
如月が手を差し出す。私はあまり考えることもないまま、その手に自分の手を重ねた――。
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