第28話 新たな寺の住人たちと蓮の悩み相談

 煩悩寺境内に建てられた一戸建て住宅サイズの悪魔神殿(内部はクラブ)にてバフォメットが陽気にアナウンスする。


「てなわけで、今夜も“バフォナイト”開催な! DJブースも用意してっから、みんなで踊って、叫んで、浄化されようぜェイ!」


クレオパトラ:「煩悩をリズムで祓うのね。美しいわ」


寧々子:「あたしも水芸しながらMCやろーっと」


比那子:「火花エフェクトの許可は役場に取ったからOKよ」


和尚(何故か磔台に拘束中、もちろん頭上にはロウソク):「ワシも腰に優しい鐘に生まれ変わりたいのう……」


蓮は、境内の隅からそんな一同を眺めながら、ふっと笑った。


蓮:「……なんなんだよもう。

これが寺の光景ってどう考えてもバグってるけど……」

「――でもまぁ、こうして皆でワチャワチャやるのも……悪くないか。」


夜空の下、DJブースの音が鳴り響き、鐘の「ウェーイ」が鳴り渡る。

地獄すらも笑いと踊りで飲み込んだ、そんな煩悩寺の夜が――今夜も始まる




もちろん、八百尼やおに招子しょうこもちゃっかり煩悩寺に住み着いていた。


◆煩悩寺・離れの茶室「八百庵やおあん」◆


──それは境内の奥にひっそりと建つ、苔むした小さな茶室。だがその玄関には、異彩を放つ貼り紙が──


『煩悩人生相談所・八百庵』


「やっとまともな施設が増えた気がする……」蛸津比売神社、教会堂、ピラミッド、悪魔神殿と茶室を見比べながられんが呟く


中では、小さな座卓を挟んで、和服・尼さん装束に数珠という姿、合法ロリ尼僧カウンセラーという設定(事実)の八百尼やおに召子しょうこが、香を焚きつつ笑顔で相談者を迎える。。


「ほほほ、お困り事かえ? 人の数だけ煩悩ありじゃ。さあ、話してみい――」


「ワシは鎌倉時代の生まれ、煩悩の酸いも甘いも噛み分けておるよってな!」


評判は良かった。


「たまに長命設定のホラ話が入ってウザイけど心に来る」


「話を聞いて道が開けた」


「失くし物探し占いが超当たる、あの子絶対エスパー」


「ショウコたんハアハア」


一部変な意見もあるが。好評だった。

特徴:

 - バリアフリー完備(相談所は意外と現代的)

 - 一人一煩悩、相談者に煩悩番号を割り振る

 - 人間だけでなく、妖怪・幽霊・AI・動物も相談可能



さて、その『煩悩人生相談所・八百庵』


静けさに満ちたその空間に、一人の悩める亜妖怪が訪れていた


八百尼やおに 招子しょうこ:「ほれ、どうぞ。菓子は落雁らくがん、茶は薄め。腹にも心にもやさしゅうしてあるでな」


小山田こやまだ れん:「……あ、どもっす」


ちょこんと正座し、湯呑を持つ八百尼は――どう見ても●学生にしか見えない。

だが口を開けば、その口調には数百年の重みがあった。


招子:「で、おぬし、寺男のままでおるか、和尚の弟子となるか、迷うとるんじゃろ?」


蓮:「……はい……」


招子:「迷うは煩悩。悩みは成長の兆し。よいことじゃ」


蓮:「俺、元々はただの高校生で……なんか流れで寺バイトになって、流れで妖怪とも関わって……

気づいたら和尚の助手?みたいになってて。正直、よく分かんないまま来ちゃったんですよ」


招子:「『流れ』とは川のごとく。逆らうより、いかに泳ぐかが肝要じゃ。されど、いずれは岸に着く。降りるも良し、進むも良し」


蓮:「だけど俺、和尚みたいにぶっ飛んだ凄さもタフさもないし……霊とか妖怪相手に話すの、まだビビってますし……」

招子:「蓮よ、忘れるでない。おぬし、いつもあの騒がしい連中の中で“常識の代弁者”でおる」

「それは簡単なことではない。叫び、呆れ、ツッコミを入れながらも、一歩も引かぬ者。――和尚も、そういう弟子を欲しとるのじゃろ」

蓮:「……」

八百尼は、小さな手で蓮の湯呑にもう一度お茶を注いだ。

招子:「骨は生身より軽い。骨の弟子を重く考え過ぎれば道を見誤りかねんぞい」

蓮:「……ちょっと、考えてみます」

招子:「考える者に門は開かれる。行くも良し、しばし迷うも良し――それが人生じゃよ」



煩悩寺縁側にて

茶室を出た蓮が、縁側で涼みながらつぶやく。

蓮:「……あの人、“ロリババア”とか言われてるの、ホントに正しかったんだな……」

隣に座る、和尚が煮干しをポリポリしながら笑った。

和尚:「招子はの、見かけより中身が恐ろしい。人(?)生800年でようやく“少しばかり落ち着いた”と言っとったからな」

蓮:「つまり、あの姿で800歳!? ……やっぱ煩悩寺だなぁ…」

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