第27話 煩悩が為に鐘は鳴る 俺っち バフォ兄!地獄のカリスマさぁ!

八百尼やおに招子しょうこが言う

「静まれ、来るぞ」


天井から重低音のような「ズゥゥゥン……」という音が鳴り響き、円卓の奥側に赤黒い魔法陣が浮かび上がる。


それは燃えるように脈動し、煙のような闇を立ち昇らせて――


パンッ!と乾いた音とともに、煙の中から一人の男(?)が現れた。


黒ヤギの頭にニット帽、耳に金のピアス。


サングラスにゴールドチェーン、だぼだぼのパーカーに腰パン。口元にはニヤついた笑み。


バフォメット:「Yo!オレが噂のDJ地獄、魔界のスピリチュアル・ミキサー、バフォ兄参上ってな! …なんだこの空気、シケてんね〜〜!」


クレオパトラ:「……どこから突っ込めばいいのかしら……」


比那子:「登場がパリピ。なんであんたみたいのが地獄代表なのよ。」


バフォメット:「え〜?、これでも法務部と祭祀部とクラブ運営の三刀流っスからね、それなりカリスマなんだけど〜〜?」


蓮:「もうキャラが渋滞してる!!」


バフォメットは卓の反対側、ロウソクを立てられた和尚の頭骨を見ると、ウケたように腹を抱えて笑い出した。


「ギャハハ!なにそれ!キャンドル和尚!?TikTokでバズれるんじゃね?」


和尚(頭骨)「わしは今、バズるより許しを得たいい……」


八百尼招子:「バフォメットよ、お主、昔はもう少し神妙じゃったろうに……」


「あ? いやいや〜、だって時代は進んでんスよ、ショーコ姐さん。いまどき『無間地獄』だってSNSアカある時代っすから!」


寧々子:「(小声で)こいつホントに地獄の悪魔なのか……?」


比那子:「認識阻害して山羊頭を人間にしたら、ただのイベントMCね……」


バフォメットはクルリと円卓を一周しながら、頭骨和尚の前にぴたりと立つ。

そして、サングラスをずらして鋭い眼差しを見せた。


バフォメット:「で、和尚――鐘の話、聞かせてもらおうか。オレの顔パクって“めぇぇぇ〜〜”って鳴くアレ、誰の許可で作ったんスかぁ?」


一瞬だけ、会議室の空気がピリつく。

蓮:「(あ、今だけ悪魔っぽい……)」


和尚(頭骨):「そ、それは……徳を積むためじゃ!」


一同:「またかよ!!!」


バフォメット「いやいやリスペはあるっしょ? マジ、悪魔界でもオレ、結構カリスマなんよ。あんまダセー扱いされると、部下たちのテンション下がるからさ~。俺のパロディで稼いでんなら、チャリンといっとこうぜ?(指パッチン)」


比那子「金かよ」


バフォメット「まず、売上の1割ね。あと、鐘鳴らす前に『バフォ兄ィありがと~!』って拝む。動画も撮っとけ!」


和尚「1割……」


蓮「それ詐欺まがいというか、もはや宗教ビジネス……」


バフォメット「こちとら地獄界インフルエンサーよ?地獄TVのフォロワー、三千万だぜ?Respectくれなきゃ、呪うっしょ~!」


ここでクレオパトラが一計を案じる。


「ではこうしましょう。鐘の音、次回から『め”ぇー』じゃなくて『ウェーイ』にします。SNS受けは上がるはずよ。」


バフォメット「おお!それ、アリよりのアリ!」


比那子「うわ、簡単に乗った……」


バフォ兄、調子よく話していたかと思うと、突然――


バフォメット「あ”っ…っと、ちょ、腰が……いちちち……」


(腰を押さえてしゃがみこむ)


蓮「……バフォ兄ィ、もしかして……」


和尚(ニヤリ)「腰痛かえ? ならば叩く場所を鐘の頭じゃなく、腰にしてみてはどうじゃ?」


バフォメット「え、叩くとこ変えるだけでいいの?」


和尚「打ち据えることで、マッサージ効果も期待できる。これぞ“腰打ち鐘療法”」


蓮「勝手に新療法作るな!!」


バフォメット「……イーねえそれ!響きイイし、なんか効きそう!じゃあマージン、ナシでいいや!」


蓮「めっちゃ腰で譲歩した!?」


比那子「この交渉、地獄で一番くだらない説あるぞ……」


交渉は無事成立。バフォメットは上機嫌で地獄へ戻っていく。


「じゃーまたなんかあったらDMして!リツイもしとくから!煩悩寺、バズらせてこーぜイェーイ!」


蓮「バフォメット……いや、バフォ兄ィ、軽すぎんだろ……」


和尚「はー、なんとか済んだわい」


比那子「白骨、あなたの人脈、地獄にまで広がってるわね。」









無事国際黄泉洞より煩悩寺に帰還した一行の前では


\ウェ~~~イ!/


鐘突き棒が改めて腰にヒット。バフォ兄鐘から響くのはまさかの陽気ボイス。

SNS用の短動画で即バズり、コメント欄は「#慰めの鐘」「#腰に効く」「#悪魔ウェイ」とトレンド入り目前。


和尚:「“黒山羊慰めの鐘”――徳を積み、痛みを癒し、SNSを沸かす。これぞ新時代の供養じゃ」


蓮:「いや、おかしくない? もはや供養じゃなくてストリートイベントだよね?」


ちんまりと和尚の隣に立つ八百尼召子が言った。「ま、白骨の寺らしいわな」


蓮「八百尼さん!こっち来たの?!」




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