第26話 煩悩が為に鐘は鳴る ロリババ尼僧の情念





四体目の妖怪――“百呪媛ももろひめ”が、禍々しい妖気をまといながら、ぬぅ……と、進み出る。

蓮:「うわ、何かもう見た目からして呪われてる……ってか俺? 次、俺なの!?」

和尚「安心せい、煩悩とは向き合ってこそ価値があるのじゃ――

そのとき、門番・八百尼やおに召子しょうこがにっこり笑って、

八百尼:「ひよっ子をなぶる趣味は無いわい。そやつにきまっとろう」

と、指をまっすぐ――和尚に突きつけた。

和尚:「え“」

蓮の顔がぱっと輝く。「あ、助かった!」

比那子「……あの状態でですか?」

寧々子「動けるの?」

八百尼:「安心せい。こやつの攻撃に三時間耐えきったら合格にしてやるわい。お主らも異存無いな?」

一堂:「どうぞどうぞ(満面の笑顔)」

和尚:「お、おぬしらあああああああっ!!」

その瞬間、百呪媛の髪がバァンと舞い、和尚の骨格が宙に飛び、空中で捕縛される!

和尚:「ほゲェーーーっ!!!」

八百尼:「さあ、始めい!“骨まで愛して地獄の拷問タイム”じゃ……♡」

(背景が地獄色に染まり、火の輪と呪符の嵐がぐるぐる回り始める)

蓮:「和尚ーーがんばって下さーい!」

和尚:「助けてくれええええぇぇ!!!」



三時間後、地獄のような異空間の拷問試練が終わった……かに思えた。

だがそこに待っていたのは、

もっと恐ろしい――というより、もっと「根が深い」責め苦だった。

八百尼招子の膝の上には、部分的に砕けて欠けた和尚の頭骨だけが乗っていた。

和尚(頭だけ):「あの……そろそろ、許しては……?」

八百尼:「さて、聞けぇぇぃっ!」

和尚:「ひいっ」

八百尼:「あのときのことじゃがのう……そち、わしが土産に買うてきた南部せんべい、“おしゃれ煎”の方だけ全部食うたじゃろがああああっ!」

和尚:「そ、それは……日持ちが……その……!」

八百尼:「理由は聞いとらん!!おしゃれ煎の方がココナッツで美味いのはワシしっとったからなあああっ!」

和尚:「うわあああああああっ!!」


一方そのころ――

残りの一堂は、完全に別空間の和室風座敷に通されていた。

寧々子:「え、ここでお菓子?めっちゃ和菓子あるじゃん!」

比那子(サクッとせんべいをかじる):「この歯応えいいな、八百尼さんの手作り?」

クレオパトラ(見事な所作で抹茶を点てつつ):「お抹茶の香りが……まるで古代テーベの香草のようですわ……」

蓮:「何このギャップ!?和尚は地獄にいない!?俺たち違う意味で地獄の入口ににいるけど!?」

ふすまの向こうから、八百尼の怒声が断続的に響いてくる。

八百尼の声:「しかもじゃな!あのとき『“おでんのタマゴ”は嫌いだからワシにあげる』と言っていたくせに、次の日には“やっぱり卵食べたかった”などと言いおって!」

和尚の情けない声:「す、すまぬぅぅぅ……!いやぁぁああああ!!」

蓮:「ねぇこれ……精神的に一番効くヤツじゃない……?」

クレオパトラ:「これは……愛が拗れた“膝詰め拷問”ですね。」

寧々子:「まー、昔は色々あったんだろうさ。ま、あたしたちは団子でも食って待ってようぜ?」

蓮(煩悩の試練……やばすぎる……)


和尚の苦難は続くが、茶と和菓子は至福だった。



黄泉洞窟・国際会議室

――地の底、陰気な岩のトンネルを進む一行。

先頭には、頭部だけの白骨和尚が、八百尼の胸に抱えられて進む。

蓮:「なあ……この構図、なんかこう……怖くない?」

寧々子:「妙に神々しい気もするけど、」

クレオパトラ:「(目を逸らしながら)……エジプトでも、こういう祭礼は見たことないわ……」

比那子:「この隊列で外国の地獄行くのって如何にもな感じ有りますね。」

やがてトンネルの先、立派な鋼鉄製の自動ドアが開く。

無機質な音声:「ようこそ。地獄国際会議室・会議体D23へ。デーモンエントランス承認済」



ドアのやたらと広い石造りの円卓会議室。

天井には磔のようなレリーフ、壁には「無間」「焦熱」などと書かれた横断幕が揺れている。

一同が席に着いた中央の石の円卓には――

ろうそくの灯りがひとつ。

いや、違う。

ろうそくを立てられた“頭骨”がひとつ、どっかりと安置されていた。

蓮:「和尚!?なんで蝋燭刺さってるの!?」

和尚(頭骨):「招子が“祭壇っぽく”した方が威厳が出ると言うてのう……」

クレオパトラ:「あなた、便利に使われすぎよ」

比那子:「ていうか、祭壇にされるのって、どんな坊主なの」

寧々子:「てかさ、これ絵面どうすんのよ。骨の頭にロウソク立てたやつ囲んで、地獄で会議待ちって」

蓮:「AIに描かせたら絶対拒否られるヤツだよ!」

八百尼招子:「静まれ、来るぞ」

天井から重低音のような「ズゥゥゥン……」という音が鳴り響き、円卓の奥側に赤黒い魔法陣が浮かび上がる。

それは燃えるように脈動し、煙のような闇を立ち昇らせて――

パンッ!と乾いた音とともに、煙の中から一人の男(?)が現れた



大悪魔との交渉が始まる

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