第21話 ロシアン種付けおじさんを封印せよ! (後編)

慰められた翌朝、煩悩寺にやってきたルミコ。和尚の前で神妙な面持ちで頭を下げた。


「和尚様……わたし、弱かった。けど……何としてもラスプーチンを倒したいのです。」


和尚はうなずき、般若湯をすすりながら言った。


「ふむ、お嬢さんには調伏者としての才がありそうじゃ…宜しい。まずは女としての“格”を積むのだ……クレオパトラに学ぶがよい。“女王”とは何たるかをな」


奥から現れたクレオパトラ8世は優雅にうなずき、


「ふふん、女の威厳ならば私の十八番、任せなさい」


ミチコは数日に渡りクレオパトラから“品格ある所作”と“睨みのきかせ方”を徹底的に学んだ


和尚が言う「宜しい、次は「女王様」としての『制圧力』じゃ。女王様たるもの奴隷をしっかり制圧拘留できねばプレイは成り立たん。」


「ちょっ!女王様ってそっちだったの?!」


寧々子登場「なになに、関節技サブミッションを覚えたい?確かにあたしは

河童だから相撲つながりで、そっちの心得もあるけどさ。」


蓮「いや確かにsubmissionは『服従』って意味もあるけどさ…」


「プロレス技コースは割とSM業界ではメジャーなコースじゃぞ。」


「しょうもない情報を知ってしまった…」


「うむ、あと寧々子は小太刀にも心得があったじゃろ?そっちも教えてやってくれい。短い棒を素早く振る技術が必要なんじゃ。」


寧々子「??護身術か??別にいいけど。」


「どっちかというと邪神ラスプーチンの調伏じゃな。乗馬鞭を鋭く振るための基礎よ。」


「あー、なるほどな。あたしもあいつの行動はちっと、目に余ると思ってたんだ。よし!任せとけ!」




その後のある夜、ルミコはラスプーチンの治療院に向かい、宣言した。


「今日こそ、あなたにお灸を据えるわ……下僕」


「おやおや、これは威勢のいい――なにぃっ!?」


ルミコは素早くラスプーチンの手首関節を極め治療院内に引きずり込んだ。



手錠で治療台に拘束されたラスプーチン。猫耳カチューシャと皮の首輪がよく似合う。

「さあ、言ってみなさい。“ご主人様、ありがとうございました”と!」


「ご、ご主人様~~っ!ありがとうございましたぁぁ!」



翌朝、満足げな顔で「ロシアンルーレット」を後にするルミコ。様子を見に来た一同の中のクレオパトラと寧々子に一礼する。


「ご指導、感謝します。これで私は“真の女王”です」


クレオパトラは顔を引きつらせながら言った。


「だから私は! そういう“女王様”じゃなーーーいッ!!」





女王ルミコを見送ったった後の煩悩寺縁側。和尚が湯呑を手に、満足そうに語る。


「昔、ラスプーチンの奴はのぉ……“プレイならMもオツなもんだよ”とかぬかしておってな……。わしは覚えておったよ。八方、丸く収まったわい……ふぉっふぉっふぉ」





一か月後、町の歓楽街に突如オープンした新店舗――その名も「女王様ミチコの懺悔室」。内装はゴシック調で高級感のある仕上がり。昼は喫茶店、夜は本気。


そこに現れる黒服姿の長身男性――

「こんばんは、女王様に今夜も仕置きをして頂きに参りました。」


「いらっしゃい、ラスプーチンげぼく。今日は特に厳しくいくわよ。」

町の闇に、新たな業がひとつ増えた。





さてSMクラブには、客から嬢へのプレゼントのワインや高級菓子、名産珍味が「貢物みつぎもの」と称してが贈られることがよくあるという。


――しかしルミコの経営するSMクラブに届くのは。


「奉納」


ミチコ「…………はぁ?」


どうやら、邪神ラスプーチンを鎮める“慰め巫女”としての存在が町に知れ渡り、半ば宗教的な意味合いで崇め奉られつつあるらしい。


町の有志が立てたクラブの非公式Webサイトには、**「現代に蘇りし巫女と邪神封印の聖所」**と書かれ、某知識系動画投稿者が「絶土町七不思議」のひとつとして紹介していた。


ついにミチコは店の名前を変更する。


その名も――SMクラブ「タナトス」


ギリシャ神話において、古代の巨神タイタンたちが封じられた地の名。死と封印、そして欲望の象徴。


絶土町の歓楽街、異様な静けさをまとった一角に、妖しくも美しい鳥居がある。

深紅の木材に筆文字でこう記されていた。


多難都須たなとす」――


その鳥居をくぐると、薄明かりに照らされた石畳が伸び、奥には格式ばった和洋折衷の建物が鎮座する。


そこがクラブ「多難都須たなとす」、いや、“邪神封印の聖所”である。


待合室には朱塗りの賽銭箱。だがその上には木札が掛けられていた。


奉納チップ箱」


中には一万円札のほか、やたら高級なワインなどが納められている。


その奥の玉座には、黒のミニスカ留袖にロングブーツという異様な出で立ちのルミコが傲然と座しているのだった


ミチコ「……洒落のつもりだったけど、最近本当に鎮めてる気がしてきたのよね……」


夜ごと通ってくるラスプーチンは、今夜も縄で吊るされながら笑っていた。


ラスプーチン「いやー、この“信仰”が深まるの、悪くないね!」


ミチコ「黙ってなさい、邪神ブタ


多難都須には今日もルミコの鞭の音が響く。




蓮「……あれはもう、宗教」


クレオパトラ8世「うん、あの邪神を唯一鎮められる存在……」


寧々子「つまり“慰めの巫女”か……」


スミレ「なんか宗教っぽくなってきましたね。」


蓮「でもまあ、封印できない以上はミチコさんに頑張ってもらうしかないな」


和尚「ふむ……人間の女王様にして、神を鎮める巫女……。妙に神聖・荘厳じゃのう」


蓮「いや、神聖にはするな、荘厳はともかく」





尚、その後間もなく『ロシアンルーレット』は「霊力が尽きました」という張り紙と共にめでたく(?)廃業した。




https://kakuyomu.jp/users/xaren/news/16818792435605443062

6/29の近況ノートにて登場人物紹介とwhisk作成のメインキャラのイラストをアップしています。


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