第11話 蛸津比売命の二重生活

煩悩寺での日々を終えたタコ邪神改めタコ娘は、ある晴れた日に大身病鎮命おおみやまいしずめのみことの元を訪れた。


「蛸よ、そなたに新たな名を授けよう。」


大身病鎮命は厳かに告げた。


「これよりそなたは『蛸津比売命たこつひめのみこと』。

我が身鎮大社しんちんたいしゃの眷属として、この名を持ち神として祀られるのだ。」


タコ邪神は背中の触手をそっと撫で、嬉しそうに頷いた。


「Glory be!これで正式な神様ネ!」


その日を境に、蛸津比売命たこつひめのみこと身鎮大社しんちんたいしゃへと引っ越し、町の守り神として祀られることとなった。


蓮は少し寂しげに呟く。


「タコ邪神も神様になってしまったか……。」


和尚はにやりと笑った。


「煩悩も昇華すれば神となるのじゃ。

絶土町にまた一柱の神が加わったのじゃよ。」


身鎮大社しんちんたいしゃの境内には、新たに蛸津比売命たこつひめのみことの小さな社が建てられ、

訪れる人々は不思議な神を拝み、笑いと奇跡の物語を語り継いでいくのだった――


しかし、彼女の夜の過ごし方が原因で、早々に問題が起きた。


毎晩ひとりで触手プレイに耽り、その声や音が霊視を持つ巫女たちの間で苦情となってしまったのだ。


巫女A「また昨夜も変な声が聞こえて……眠れません!」

巫女B「境内の神聖な夜が台無しです!」

巫女C「社殿から時々触手がはみ出る時もあります!すごくウネウネしてて…!」


大身病鎮命おおみやまいしずめのみことも頭を抱え、蛸津比売命たこつひめのみことに直接注意した。


「もう少し節度をもって欲しいのだが……」


蛸津比売命はしゅんとしながら答える。


「I’m sorry…でも夜は、私の“touchy desires”が、ね…

ひとり触手playしないと眠れない体なの……」


ため息をつきながら大身病鎮命は言い渡した。


「……夜は、煩悩寺に帰りなさい」


結果、蛸津比売命は夜になると煩悩寺に戻り、境内に建てられた『蛸津比売たこつひめ神社 分社』で過ごすことになった。


「蛸津比売命もまた、絶土ぜっと町の煩悩に囚われておるのじゃな。」


「お寺、ピラミッド、神社……

寺の敷地が宗教過積載状態になってきてる……。」


こうして、身鎮大社の神として昼は神々しく、夜は煩悩寺で秘密の時を過ごす、蛸津比売命の二重生活が始まったのだった。







https://kakuyomu.jp/users/xaren/news/16818792435605443062


6/29の近況ノートにて登場人物紹介とwhisk作成のメインキャラのイラストをアップしています。

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