第10話 触手とHENTAIとタコ邪神、あるいは文化の受容について

ある夜、絶土港の上空に異様な黒雲が渦巻いた──

そして、触手うねる巨大な影が現れた!


邪神:「──ククク……ワタシは狂気と冒涜の象徴、触れてなお呪われ、見てなお狂う……

おぞましきタコ邪神、クトゥる◯△◎ッ!!」


漁師たちが悲鳴を上げて逃げる中、ひとりれんが立ち尽くしていた。


れん:「……え、タコじゃん」


邪神:「What?!」


蓮:「煮ても焼いてもおいしいよ。寿司ネタの王様だよ」


邪神:「whyyyyyyy!?」


川女神河童 寧々子も言う


「日本では“タコさんウィンナー”という愛らしい姿で、弁当にも入るぜ。子供達が大喜びするオカズだ。」


邪神:「な、なにィ!? ワタシの触手が……ウィンナー!?」


クレオパトラ「可愛いマスコットのモデルにもなる愛されキャラよ。」


邪神「Noooooo!!」


極めつけに、白骨和尚が背後からヒョイと顔を出す。


白骨和尚:「成人アニメでは、触手持ちは竿役じゃな、男達の心の友じゃ」


邪神:「Abaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!」


触手をぶるぶる震わせながら、邪神はしおしおと縮んでいった。


岸壁の上にうずくまり何やら呟いている

「No…I’m devil fish… I’m so terrible…」


蓮が言う「何かちょっと可哀想かも……」


その時、どこからともなく光が差し込んだ。


大身病鎮命が姿を現し、優しく語りかけた。


「眷属においで。うちの境内に君の社を立てよう。疫神も怨霊も邪神も、祀り崇めてもらえるのが日本なのだ。」


タコ邪神は感涙にむせび、口にする


「glory be!!(ありがたや!)」


和尚は満足げに頷いた。


「煩悩が芸術へと昇華する、HENTAI日本の懐の深さがあ奴を救ったのじゃ。」


「なんか違う気がする……。ねえ和尚、なんでクトゥる◯△◎の邪神って『冒涜的』なんですか?」


「一神教だと力ある邪悪な存在が実在するというのは冒涜なんじゃ。」


「『荒ぶる神』が文化に根付いてる日本人にはピンとこないですね。あと巨大宇宙人はヒーローものではやられ役だし。」


「じゃな、『恐怖と神秘と邪悪』というより。『力ある不思議な存在』、日本人にとってはそこまで不気味とも言い切れんわ。」


「確かに、二次創作で『嫁』にされてるし」


「はっはっは、ま、これからはあ奴も町の一員じゃて。」


夜の港に、不思議な安堵と笑いが漂った。


◆◆◆


身鎮大社しんちんたいしゃの社殿が建立するまで煩悩寺に下宿することになった人間サイズのタコ邪神。


しかし彼に宛がわれた部屋では、夜な夜な何やら不穏な音が響いていた。タコ邪神がタブレットを凝視しながら変に裏返った声で「ジャパニーズHENTAI、ソー、ファンタスティック…」などと呟いている。


蓮はこっそりとタブレットのアクセス履歴を確認した。

『姫騎士と触手」『女子学生触手地獄』『触手に堕ちた若奥様』


「触手エロアニメを大量に視聴している……?」


蓮は心配になった。


「周りの女性たちが危険なんじゃ……?」




遂にある晩、タコ邪神の部屋からつややかな女性の喘ぎ声が聞こえてきたた。


「誰かが襲われている!!」


慌てて踏み込んだ蓮が見たものは、なんと――


金髪白人娘の姿で、自らの触手を体に巻き付けて悶えるタコ邪神だった。


畳の上に乱れた金髪。全裸姿に白人特有の豊かな乳房が揺れる。形の良い足を軽く開き、その間や、脇の下を通ってタコの触手がズルズルと白い女体の上を這い回る。


(そもそもメスだったんかい!!そういえばタコ状態の時も声が妙に甲高かったし!)


蓮は奪われかける視線を必死に引き剥がし、そっと襖を閉じた。




その後「日本文化にハマってるが日本語が中途半端で英語が混じる白人娘」

状態になり、姿も背中からタコの脚が生えたままの白人娘で固定されるのだった。







https://kakuyomu.jp/users/xaren/news/16818792435605443062


6/29の近況ノートにて登場人物紹介とwhisk作成のメインキャラのイラストをアップしています。


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