第12話 煩悩寺パジャマパーティーの夜
ある日、
案内役はもちろん、
「フレンドシップ!ジャパンスタイル・スリープオーバー!ピローファイトするヨ!」
「えっ……あ、はい!?(この人、テンション高すぎる……)」
戸惑いながらも、身鎮大社とは違う空気に興味津々のスミレは、パジャマを持って煩悩寺へ向かった。
分社の畳部屋に足を踏み入れると、そこにはクレオパトラ8世と、河童から昇格した川女神・
寧々子は冷たく言い放つ。
「……あんた、なに若い娘連れ込んでるのよ」
クレオパトラも厳しく付け加える。
「強制触手プレイは絶対NGよ、NG!」
蛸津比売命は必死に釈明する。
「え~!?ワタシは純粋に友情とカルチャーエクスチェンジを……!」
あわや緊張が走りそうになるも、クレオパトラがエジプト直輸入のスイーツを広げ、寧々子が秘伝の和風キャンドルに火を灯すと、部屋はたちまちふんわり女子空間に変わった。
やがて、クレオパトラと寧々子が口喧嘩しつつネイルを塗り合い、蛸津比売命が無理やりスミレにアニメを布教。
最終的にはみんなで枕投げとなり、触手が乱舞してクッションが宙を舞った。
クレオパトラ8世「…たまには、こういうのもいいかもね。」
スミレが笑顔で答える。
「はい!楽しいです!」
パジャマパーティーはスナックやスイーツ、ジュースと女子トークで絶好調に盛り上がっていた。
そんな中、
「このお茶とおはぎを持って行くのじゃ。何なら混ざってきてはどうじゃ?」
「流石にそれは…女子会ですよ。」
蓮は裏口から社殿へ入った。
「和尚から差し入れだよーって、うわー女子空間……。」
蓮が現れると、一瞬で全員の視線が集中した。
蛸津比売命が声をかける。
「蓮!君も混ざル、友情の証にネイルヨ!」
クレオパトラ8世も続ける。
「ふふ、少年の爪に黄金の輝きを!」
寧々子は笑顔で脅す。
「断ったら池に投げ込むわよ!」
逃げる間もなく引きずり込まれ、蓮の指はピカピカのネイルに、髪はスプレーで触手風にアレンジされ、顔にはおしろいで化粧が施された。
「なんだよこれ!!俺は男子だー!!!」
だが女子たちは大爆笑。
「かわいい!」
「映える!」
「写真撮ろう!」
スマホと触手が蓮を囲む。
その声を遠くに聞きながら、煩悩寺の縁側で煮干しを齧る白骨和尚は静かに笑っていた。
「……若いってのは、よいのう。」
夜空に笑い声と蓮の悲鳴が響く、絶土町の夜は更けていった。
パジャマパーティーの喧噪がひと段落し、分社の縁側に蓮とスミレは並んで座っていた。夜風が静かに吹き、星が瞬いていた。
スミレはそっと口を開いた。
「……蓮さん。
私、小さい頃から人に見えないものが見えたの。
だから、親から……気味悪がられて。
親戚の家を転々として、結局、身鎮大社に引き取られたの。」
蓮は黙ってスミレの横顔を見つめた。
淡い月明かりに、スミレの寂しげな微笑みが浮かんでいた。
「大身病鎮命さまが父親みたいに優しくて、
眷属の海亀の女神さまは母親のように私を見守ってくれた。
……でも、巫女仲間たちは大体みんな帰る家のある『見えない』人たちだったから、どこか壁があったの。」
そっと胸に手を当てるスミレ。
「でもね……あの子、タコツヒメさまだけは……
最初から私をまっすぐ見てくれたの。
壁なんて感じなかった。」
蓮は少し照れくさそうに、笑った。
「……タコなのに、すげぇな。いや、タコだからヌルっと入ってきたのか?」
スミレも小さく笑った。
「うん……本当に、不思議な人。」
そこに蛸津比売命がトテトテと現れる
「ナーニ?ワタシの話?」
「あー、いやタコツヒメは急に英語まじるなーって話?」
蛸津比売命はにっこり笑って答える。
「ごめん、I try my best to be ジャパニーズ。
でも、やっぱり、ちょっとだけナチュラルEnglishが出ちゃう。」
蓮は笑いながら言った。
「ま、変わってるけど悪くないぜ。な、そう思うだろ?」
「はいっ!」
蛸津比売命はちょっと得意げ。
「Thank you, レン、スミレ!We’re the ベスト フレンド!」
「和尚辺りは『友情もまた煩悩、良きかな、良きかな』とか言いそうだな」
蛸津比売命は満月を見上げ、
「煩悩?オーマイガー、それってデンジャラスだけど…
でも、人生はファンタスティックじゃなきゃね!」
三人は笑い合い、夜風に庭のススキが優しくく揺れた。
https://kakuyomu.jp/users/xaren/news/16818792435605443062
6/29の近況ノートにて登場人物紹介とwhisk作成のメインキャラのイラストをアップしています。
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