第5話 お悩み相談・煩悩寺へようこそ! 町の心霊トラブル解決します(たぶん)

梅雨も明けぬきれぬある日、煩悩寺の電話を寧々子が取る。


「白骨、檀家の家から相談だぜ。なんか位牌が仏壇の中でカタカタ動いて怖いから何とかしてくれってさ。」


和尚はすっと立ち上がり、黄色い袈裟を翻す。


その目の奥には――魂の火が灯っていた。


「……よし、今日は位牌の説教に決定じゃな」


れんが言う「いやどんな予定組んでるんですか!!」


相談①:動く位牌


相談者:小学生・たくみ君


「夜になるとおじいちゃんの位牌が、仏壇の中をカタカタ動き回って…怖いです……!」


和尚、部屋の中の故人の遺影の横に飾ってある鉄道模型を見た。


「故人は鉄道が好きだったようじゃな…」


「そうですが……?」


「……こうじゃ!」


和尚は、仏壇の前にプラ〇ールを敷き、位牌を乗せた。


「おじいちゃん急行、出発進行じゃ!」


ヒューーーッ、カタンカタン……


位牌から声が響く「信号ヨシ!」「ブレーキヨシ!」「ポイントオーライ!」


「……あれ? 楽しそう?」


「霊も遊びが必要じゃ。これからは毎晩、仏間にプラレー○を敷き位牌を乗せておけばいずれ収まるじゃろうて。」


♦♦♦


事態を解決し寺に戻るとまたもや心霊相談の依頼が入っていた。


れん「またなの?!」


和尚「夏が近いからかのう。」


蓮「リアル霊障と季節、関係あるの?!」



相談②死者の声


相談者:松尾 透(25歳、配達業)


「僕が乗った時だけ車のカーナビがおばあちゃんの声で、僕の名前を呼ぶんです……もうホラー映画の導入ですよ!」


和尚、ナビに語りかける。


「霊よ、なぜ呼ぶ?」


(ナビ)「……だって、孫が最近……墓参り来てくれないんだもん……」


「可愛いかよ!!!!」


和尚、すぐさま町営墓地の側のガソリンスタンドに電話をかける。「あ、ご主人?松尾君という子が来たらガソリンクーポン格安で出してやってくれんか?」


給油のついでにと、月命日の墓参りを欠かさないようにすると、おばあちゃんの声が煽り運転してきそうな車や子供の飛び出しを警告してくれるようになった。


「孫は元気にしとるぞ。成仏は急がんでもよい。ナビ霊は順路も愛じゃ」




夕暮れ、蓮と和尚は縁側で煮干しと麦茶をつまむ。


「……なんでこの町、カーナビに霊が湧くんですか?」


「……そりゃ、おぬし。霊も今どき、便利なもんに宿るのが当たり前じゃろ」


「昭和の亡霊が令和に順応してるんじゃねぇ!」

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