第4話 河と砂、水上の女相撲
――ぐらり、と地鳴りがした。
煩悩寺の境内から湧き上がる妖気。やってきたのは、女河童の「寧奈子(ねねこ)」。和尚の愛人?にして、今は川の女神。
寧々子:「表のピラミッドは何だい。和尚、アンタ、あの干物女とよりを戻したのかい?」
和尚:「いや、干物というか……ミイラ?ファラオ じゃが?」
そこへ、奥の間から黄金の光を背に襖が開く。
ファラオのミイラから生き返ったファラオの冠とスリット入りタイトドレスの下に包帯を纏ったエジプト風美女、「クレオパトラ8世」が登場。
「お黙りなさい、ぬるい河童女。私とこの方は二千年の時を越えて出会い結ばれたのよ!」
「なによその乳! ナイル川の氾濫か!? いい気になってんじゃないよ!あと今は川の女神だよ!」
「だったら、自分の頭にまず水をやったらいかが? ウィッグずれてますわよ」
寧柰子は顔を赤らめてウィッグ直し。「うるさい! アタシの前でヅラと髪の話すんじゃねえよ!」
和尚「そのウィッグ、ワシが贈ったんじゃ、愛用してくれて嬉しいのう」
蓮「いや今どこに感動してんだよ和尚!!」
◆◆◆
舞台は煩悩寺裏の池に移る。
蓮:「なんで池の上に土俵作ってるの!?」
和尚:「水場は河童の領域、エジプトもナイルに栄えた。
ならばここが中立地! 戦うがよい」
蓮:「そういう問題なの!?」
土俵の上で対峙する二人。
クレオパトラはファラオの冠はそのままに、その浅黒い艶やかな肌を惜しげ無くさらし、豊かな胸を包帯を斜めに巻いてビキニの水着のように覆う。下半身はTバック状に包帯を巻いて張りのあるヒップの双丘を見せた際どい姿。
寧々子は白い肌が眩しい。スラリとした長身の体付きに控えめの胸をサラシで横巻き。こちらの下半身は剥き出しの尻に相撲のまわし姿だ。
蓮「眼の遣り場に困る………」
和尚「眼福よのう。」
そして始まる女のバトル。
寧奈子「食らえ!尻子玉奪取抜き手!」
クレオパトラ「なんの!エジプシャン・ベリーダンス払い腰!からの!食らいなさい!砂嵐旋風脚!」
「やるな!ならこっちは第大瀑布すくい投げだぁ!」
水柱と砂嵐のエフェクト(?)付きで飛び交う必殺技に池の水が吹き飛び、蛙とナマズが空中回転していく。
ちゃっかり和尚を盾にしながら蓮が叫ぶ「環境破壊ぃぃ!!」
***
秘術を尽くした戦いは1時間にも渡ったが、決着は付かず両者ともボロボロになり池に浮かんだ(ウィッグとファラオの冠は池のほとりに漂着)。
蓮が言う「で、どうすんのこれ……」
水流と砂嵐で胴体が吹き飛んだのか、頭骨状態でちゃぷちゃぷ浮かぶ和尚が言う「ワシは女という川に流されるだけの男よ……」
「色んな意味で溺れてんじゃねーか!」
大の字になって池に浮かぶ女二人
「……カッパのスモー・レスリング強者伝説、思い知ったわ…」
「…あんたこそ、スカスカのミイラにしちゃあイイ蹴りしてんじゃん…」
「……元河童の女神なら、やっぱりキュウリとか…好きなの…?」
「…あたりめえだろ…とくにこの絶土町産のキュウリは最高だぜえ…」
「ホントに!昨日スーパーで買ったキュウリ食べたら美味しくて!私がまだ“生身”だった頃、好きだった”ククミス瓜”にそっくり!ビックリしちゃった!キュウリ党になりそう!」
「だったら台所にメチャ新鮮なキュウリあるぜ。食ってみるか?」
「いいの?!」
「おうよ!キュウリ好きに悪い奴はいねえ!!」
「ありがとーっ!いただくわ!!」
ザバザバと池から上がった女二人は包帯Tバックとマワシの尻を揺らしながら足早に寺の食堂へと去って行く。
池のほとりにはウィッグとファラオの冠が放置されていた。
蓮「何だったんだ……」
和尚(池の端に漂着):「……蓮よ、女という沼もまた、煩悩なのじゃ……」
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