第16話 イケニエ

「スペルムブレイズ!」


私から取り出した精力を使って、リッカさんは大量の刃を生成する精刃スペルムブレイズを放つ。


しかし、ヤマタノオロチにはさほどダメージは与えられていない。


「ちっ!」


スペルムブレイズは消滅する。


「手数はものすごいですけども」

「ひとつひとつは威力不足って言いたいんだろ?」

「そういうことですわね。硬い相手には厳しいですわ」

「でも、ジャンヌの剣だって、通用しないじゃないか」

「返す言葉もありませんわ。ヒロトがいれば、スペルムニウムで何とかなるかもしれませんけども」

「どうする? いったん撤退するか?」


すると、ナターシャさんが言う。


「いや、それだとあそこにいるイケニエが殺されてしまう」

「じゃあどうすんだよ。ナターシャのライフルだって通じねぇじゃねえか」

「私が近距離でオロチの口の中に撃ち込む。サポートを頼む」

「いけますの?」

「もちろんです、お姉さま」


ジャンヌさんとリッカさんは、オロチに向かって走る。

オロチの首がリッカさんを襲う。

ジャンプしてよける。

その首の上をジャンヌさんが駆け上がる。


「疾風斬!」


ジャンヌさんの斬撃。

しかし、刃はオロチの首の半分にも届かない。

別の首が、ジャンヌさんに向けてブレスを吐き出すために口を大きく開く。


「さすがです。お姉さま」


その口の中に、ナターシャさんがライフルを撃ち込む。


「グギヤィァァ」


首を1本撃破。

しかし。


「ぐぁ!」


ナターシャさんは、ライフルを撃った硬直時間を狙われ、吹き飛ばされる。


「ナターシャさん!」


私はナターシャさんに近づき、ポーションを飲ませる。


「ナルマ。助かった」

「この調子じゃ、あと7本倒す前にこっちがやられちまうぜ」


と、そのとき。


「うぉぉぉ!」


ナターシャさんが、突然、雄叫びを上げた。


「な、なんですの?」

「ナルマ、お前、ナターシャに何を飲ませたんだ!?」

「あっ…ポーションじゃなくて、正気を失う代わりに身体能力を上げる、バーサーカーリキッドでした…」

「まったく! ドジっ子が過ぎますわ!」

「おおおぉぉ!」


ナターシャさんは、叫びながら二丁拳銃を構えて突進していく。


【挿絵】

https://kakuyomu.jp/users/hm-ciao/news/16818792436409520910


オロチの首が次々と攻撃するが、ナターシャさんは驚くべき反応でかわし、弾丸を打つ。

とはいえ、拳銃では威力不足だ。


「リッカ! こうなったら私とナターシャで引き付けますわ! その間にイケニエさんを確保するのですわ! そして撤退、馬車にいるヤオたちと合流しますわよ!」

「了解!」


リッカさんはイケニエに向かって走る。

ジャンヌさんもオロチに突進していく。


「やぁぁぁ!」


ジャンヌさんの斬撃。

しかし浅い。

ブレスをかわす。

首2本の攻撃。

これもかわす。


「うぉぉぉ!」


そこにナターシャさんの弾丸。

と、そのとき。


「は!? 私は何を!?」


ナターシャさんが正気を取り戻した。

そこをオロチが襲う。


「ナターシャ!」


ジャンヌさんがナターシャさんをかばう。


「くぅ!」


ジャンヌさんは地面に叩きつけられる。


「お姉さま!」


ナターシャさんはジャンヌさんに駆け寄る。

ジャンヌさんは意識を失っている。

すると。


チュッ


どさくさに紛れてキスをした。


「お、お姉さまの唇を奪ってしまったぁ!」


なんでこのパーティー、こんな人たちばっかりなんだろう。


そのとき。


シュウウウウ


ナターシャさんの手に、白く光るライフルが出現した。


「こ、これは!? ひょっとして、お姉さまの唇を奪った天罰!?」

「違います! きっと、ナターシャさんの精なる力です! さっきのリッカさんのスペルムブレイズのような!」

「私が、精者?」

「それで、オロチを撃ってください!」


私は叫んだが、きっとライフルは1発で消えてしまう。

しかし首は7本。

どうすれば。


「そういうことなら任せろ。照準良し。発射」


【挿絵】

https://kakuyomu.jp/users/hm-ciao/news/16818792436410141250


すると、ライフルから白い光が放たれる。

そして、オロチの胴体、心臓部分を貫いた。


グガガガ!


<ヤマタノオロチを倒した!>


イケニエを助けて戻ってきたリッカさんが言う。

「精銃ってところか。名前をつけねぇとな」

「では、精銃スペリミックレーザー」

「いいんじゃねえの」


と、そのとき。


「がはっ」


リッカさんが倒れる。

イケニエは、姿を変えた。

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