入浴下手くそ選手権

 自慢じゃないが、私は風呂に入るのが下手くそだ。


 シャンプーを洗い流した後にコンディショナーを手に出そうとしてまたシャンプーを出してしまう、なんてことはよくある話。

 これは詰め替えの手間を減らすために大容量のポンプボトルを買ったせいだと思う。透明なので中身の減り具合がすぐわかる。だが、同じもの二つで揃えてしまったため、シャンプーなのかコンディショナーなのかは上部に貼った小さなラベルで判断するしかない。

 なにぶん眼鏡が顔の一部と化している人間だ。さすがに眼鏡を掛けたまま風呂に入るわけはいかないから外すのだが、そうするとものの輪郭が全てぼやけてしまう。当然ラベルはかなり近距離で目を眇めてもよくわからない。結果、ボトルの配置で毎回、こっちがシャンプーでこっちがコンディショナー、みたいな判断をしている。

 どうにかならんのか、とは思っている。その反面、まあ間違えたところで死ぬわけじゃなし、という適当さでなんとかやり過ごしている。


 この前、LINEで友人と肝油ドロップの話になった時、「美味しすぎて小さい頃に一缶を三日くらいで食べ尽くしたことがある」と話したら「ビタミン中毒起こすぞw」と笑われ、反射的に「今生きてるから!」と返してしまった。でも私の人生はたぶんその「今生きてるから」の積み重ねで成り立っている。

 死ぬこと以外はかすり傷。そう思わないとやってられない。


 あと、メイク落としも兼ねた泡の洗顔フォームは口に入ると苦い。当然のように顔を洗うのも下手なのでよく口の中に洗顔料が入ってしまうのだ。

 あれか。これは子供が誤飲しないようにとの配慮か。リカちゃんの靴とか、Switchのソフトみたいに、わざわざ無害な苦味を添加してあるのか。

 でもビオレのジェル洗顔料はなんか甘い気がする。なんでだ。


 そんなこんなで体を洗ってシャワーを止めると、体を拭くバスタオルやバスマットを忘れていることに気づくときもよくある。そういうときは仕方ないので、脱いだ服で適当に水分を拭ってから部屋まで戻って、洗濯済みのバスタオルを引っ張り出すことになる。


 それでも私が毎日入浴するのは、一人暮らしで自分専用の浴室があるのが嬉しすぎるからである。実家にいた頃は、家族が入浴していないか時間を見て入らねばならなかった。それに入浴剤はいつも決まったものしか使えなかったので選ぶ自由もなかった。

 それが今の生活では、自分が入浴したいと思った時にはいつでも入浴できるし、入浴剤だって好きなものを入れられる。

 当たり前なのかもしれないが、それが贅沢に感じてしまうのだ。

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