脳内一キロバイト

高間晴

茶飲みの生活

 紅茶を淹れる。

 百均で運良く手に入れた一リットルの大きな計量カップ。それに水道水を六百ミリリットル汲む。その水を電気ケトルに入れて百度のスイッチを入れる。この電気ケトルは数年前に買った、四十から十度刻みで百度まで温度調節が出来る代物だ。


 お湯を沸かしている間に、茶葉の入った小さなタッパーを開ける。茶葉の香りがふわっと漂う。今日はルピシアのベルエポック。これはアイスティーでも美味だが、今日は何となくホットで飲みたい。

 大さじ二杯分の茶葉をお茶のパックに入れる。それを茶こし付きのガラスのティーポットに放り込む。

 タッパーや計量スプーンを片付けても、お湯が沸くまで暫しの時間がある。ぼんやりと電気ケトルの青い光を眺める。


 今日は湿度が高いので、エアコンは除湿モードで運転している。涼しい部屋で熱い紅茶を飲めるのは嬉しい。冬の寒さに耐えかねて熱い紅茶をすするのとはまた違う。


 思えば、うちの計量カップはほとんどお茶を淹れるための水しか計ったことがないし、計量スプーンも茶葉を計るためだけに買った。


 ようやく電気ケトルが電子音を鳴らし、沸騰を告げる。手早くティーポットにお湯を注いですかさず砂時計をひっくり返す。三分間。この間はガラスのティーポットに抽出されていくお茶の色を見て楽しむ。私がガラスの茶器を好む理由は、ここにある。


 砂時計がの砂が落ちきったら、取り出した茶こしをティーポットの縁で軽く叩いて、充分に紅茶の雫を落とす。よく知らないけれど、紅茶はラストドロップが重要だと聞いたことがあるからだ。


 私は茶器を温めるという工程は、面倒くさいというだけの理由で省いている。でもまあそんなでも美味しい紅茶は飲めるし、そもそも一人暮らしなのでこれを飲む人間は自分だけだ。

 紅茶を茶葉から淹れる、なんて言うとこだわっているんだろうなと思われるかもしれないが、飲むのが自分だけなら好きなように淹れればいいと思っている。茶葉の量や抽出時間はあくまで目安でしかない。色々試して自分の好みの味を見つける。それもまた紅茶の楽しいところだと勝手に思っている。


 よく雫を切った茶こしを小皿に置く。ルピシアの紅茶はたいてい二煎目まで楽しめる。

 そしてティーポットを手に、机の前に戻る。紅茶を注ぐのは、ティーカップなんて洒落たものではない。百均のタンブラーだ。何気なく買ったものだが、取っ手がついていないのと手に持ちやすいサイズと形状で、うちで一番使われる食器になってしまった。

 そんなこんなで、自分流で淹れた紅茶を飲みながら、これを書いている。

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