第二の旋律:静けさの記憶

それは、ある雨の夜のことだった。

どしゃ降りの雨音が、静まり返った家の中でただ一つの響きとして存在していた。

古びた和室の隅、安藤はひとり座り、膝にギターを抱えていた。

娘たちが去った家は、あまりにも静かだった。

テレビも、音楽も、誰の声もない。ただ雨の音と、自分のギターの音だけが、かすかに心をつなぎとめてくれている気がしていた。

テーブルの上には、一枚の写真立て。

そこには四人の娘たちの笑顔が並んでいた──朱音(あかね)、泉音(いずね)、渚音(なぎね)、翠音(みどりね)。

「……今でも、音があれば何かが変わる気がしていた──」

その言葉と共に、指が弦を弾く。

その響きは、過ぎ去った日々の記憶を波紋のように心へ広げていった。

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