第3話 魔力草さがし
「お願い...?」
さっきまで泣いていた少女の顔は凛々しい顔へと変わっていた。
「単刀直入に申し上げます。この私、アイリスとこの町を復興してください」
彼女の赤い瞳には涙が込み上げていたが、太陽の光が反射して炎が燃え上がっているようにも見えた。
「もちろん、やらせてくれ」
すでに決意が固まっていた俺は、そう即答した。
◇ ◇ ◇
翌日、アイリスとともに近隣の森であるものを探しに来ていた。
そのあるものとは
アイリスは木々の間を飛び回り、周りを警戒してる。
出発する前にアイリスから、彼女は強い魔力を持つ種族と人間のハーフであることを聞かされていたため、彼女に護衛を任せることにした。
「このあたりに魔力草が生息しているはずです」
だんだんと薄暗くなっていたため、俺は周囲を警戒していた。
ガサッ
ガサガサッ
「グアウッッ!!」
草むらから飛び出してきたオオカミのような化け物に、手を嚙みつかれそうになる。
幸い、アイリスに押し飛ばされたことで俺は無傷だった。
「ぐっ....すまない」
「まだ警戒を解かないでください!やつらは群れで行動するフォレストウルフ、一匹や二匹の攻撃で終わるはずがありません」
「グアッ、グルルル!」
前に三匹、左右に一匹ずつ、そして後ろに二匹のフォレストウルフが攻撃態勢でうなっていた。
「ウエダ様伏せてください!
アイリスから放たれた炎の玉はフォレストウルフ達を焼き尽くした。
この世界に来て初めて魔法というものを見たが、なんとも幻想的で...その破壊力はひどく恐ろしいものだと感じた。
「お怪我はありませんか、ウエダ様」
「あぁ、問題ない、助かったよ」
俺のスキルはあくまでも<設計士>だった。戦闘能力は皆無で、拳一つでモンスターに立ち向かったとしても全く歯が立たないだろう。
だからアイリスの魔法を見て、俺はとても心強く感じていた。
その後、何度かフォレストウルフの襲撃にあったが、そのたびにアイリスが蹴散らしてくれるため俺は安心して採集に没頭できた。
その成果もあり、背負ってきたリュックからあふれるほどの魔力草を手に入れることができた。
「そろそろ帰ろうか」
「そうですね、魔力草も十分集まりましたし」
帰り道、来た時よりも濃い霧の影響で俺たちは軽い迷子になってしまっていた。
アイリスは「ウルフ達の気配がする」と、臨戦態勢に入っている。
「ウエダ様、気配が近くなっています、気を付けてください」
俺は頷き、出発前に街の元武器屋から借りたナイフを構えた。
「...っ!ウエダ様、逃げてください...!」
次の瞬間、今まで見ていたウルフより二回り以上大きいウルフが俺の頭を噛み砕こうとしていた。
「火球!!」
アイリスの魔法でウルフの攻撃が逸れ、首から上がなくなることは避けられたが、牙が頬をかすめ血が垂れ流れていた。
「ウエダ様!こいつはさっきまでのウルフとは格が違います!私が時間を稼いでいる間に街まで逃げてくださいっ!」
俺の力では手に負えない...!街に行って助けを呼ぼう!
俺は恐怖で震える足をおさえ、走り出した。
必死で走っているせいか、はたまた頬の傷が痛むせいか、今まで感じたことのないほどの早い鼓動が脳内に響いていた。
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