第41話 事の真相
皇帝達が吸い込まれてしまい兵士たちは混乱していた。
サーブルがハンナの後を追って穴に入ろうとするが、風が吹き荒れていて上手く入れない。
「サーブル!モンテス!こちらに来るんだ!」
エトワールが二人を呼んだ。
「私の近くに居なさい。」
そう言うとエトワールは先ほどの壁に刺さった矢を抜き呪文を唱えた。するとその矢はスルスルとゴムの様に伸びて三人にくるりと巻き付いた。そして矢の先が、ハンナ達の吸い込まれた穴の中に入っていくとそのままエトワール達三人も吸い込まれていった。穴の中は真っ暗で風の音がゴオオオっと聞こえているだけだった。
黒い穴から出るとそこは彷徨いの谷の近くの草原だった。
「ハンナ嬢。ここに見覚えがあるのでは?」
ロスタルがハンナに聞いた。
「ここは…遠い昔に来た事があります。私が生れてまだ間もない頃…。」
ハンナは困惑した。
「なぜ、このような所に来たのですか?貴方は不死鳥の卵を私のゆりかごに入れたと言いましたよね?その事と関係があるのですか?」
ハンナはロスタルが何者なのか何が目的なのか見当もつかない。
「君がまだ赤ん坊の頃、君たち家族がここに来ていた時に悪党達が不死鳥の卵を狙って巣を攻撃したんだ。卵は三個あったがその攻撃で二つはダメになってしまった。僕はやっとの思いで君のゆりかごに一つの卵を隠し助ける事が出来た。だがその卵を僕に託した一人の人間が命を落としてしまったのだ。僕は不死鳥を守ろうとして死んだ者の魂を呼び寄せる為にここに来たんだ。」
「どういう事なのです?あの日、私達家族がここに来た時に何があったのですか?」
「あの日、不死鳥の卵を巣から盗み出したのはデグラスだ。」
「何ですって!?」
ハンナは呆れ果ててモノが言えなかった。どこまで貪欲なのだろう。
「あの時、いくら探しても見つからなかった卵はお前が持ち出していたのか。」
ハンナの背後から皇帝の声が聞こえた。
「皇帝!?それにアンベス!コット!」
ハンナは後ずさりをした。
「あの日、兵士を引き連れて不死鳥の卵を探しに出たのだ。千年に一度のチャンスは逃せないからな。」
皇帝は説明を始めた。
「千年に一度なのに卵がある事が分かったのはなぜなの?」
ハンナがデグラス皇帝を睨んだ。
「いい質問だ。それがエフェの力だ。エフェは不死鳥の居る所などを言い当てる事が出来たのだ。エフェには不死鳥の卵の在処を教えてくれれば離縁していいと言ったんだが、あいつはエトワールと離れたくないと言い出して来て参ったよ。こちらとしては卵の在処を教えてそのまま大人しく両親の元にでも帰ればよかったのに。子供が可愛いなどといって本当に面倒くさい女だった。」
「そんな言い方酷いです!母親が子供を愛するのは当然です。」
ハンナはデグラスを心底、軽蔑した。
「おいおい。私の子供でもないエトワールを育てて来たのだぞ。むしろ感謝されてもいいと思うがな。」
「それは、皇帝がエトワール皇子の力を自分の物にする為でしょ!全部自分の為じゃない!」
「ふぅ……」
皇帝は軽くため息をつくとハンナの方へ来た。
「私をイラつかせるな。いい気になるなよクソガキ。」
低い声でそう言うとハンナの髪を掴もうとした。
「やめろ!」
ロスタルが皇帝の手を振り払った。
「私を怒らせたな。」
そう言うとデグラスは剣を抜きロスタルに向けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます