第40話 誰の子?

「いい加減にしてください!皇帝は国民を物の様に扱い、不死鳥までも自分の物にしようとしてそれが国を治める者がやる事なのですか?」

ハンナはもう黙ってることは出来なかった。

「怒った顔も美しいな。お前が初めからこんなに美しければ初めから我が妻に出来たのに。あんなヒョロヒョロとした飢えたガキの様な容姿だと貴族達に馬鹿にされてしまうからな。それに隣に置いておくのも気持ち悪かったからな。」

皇帝は何も悪びれる事無く言い放った。

「最低です。皇帝が何と言おうと私は離縁させてもらいます。」

ハンナは皇帝とアンベスの方を見た。

「そんな事が許されると思うな。アンベスはお前によくしてくれただろう?」

皇帝が諭すようにハンナに聞いた。

「よくする?ここの皇族のよくするとは自分の妻を差し置いて第一皇子の婚約者に手を出したり、残飯をかけたり、侍女に熱々のスープをかける事なのですか?まあ、こんな低俗な方達ですから仕方ないですけどね。」

ハンナは思い切り嫌味を込めて言い返した。アンベスはバツの悪い顔をしている。

「本当に、私の息子は出来損ないなのだ。アンベスは野心はあるがとにかくバカだ。私があれだけハンナと仲良くしろと言っていたのにこのザマだ。コットにもよい地位を与えようと第一皇子の婚約者にしたのだが、面倒な事にエトワールが目覚めてしまったからなあ。」

皇帝は半笑いで話した。

「父上、貴方はなんという人なのだ。この人の血を引いてる自分が情けない。」

エトワールはそう言うと膝から崩れ落ちた。


「エトワール。心配するな。お前は私とは血は繋がってはない。」


皇帝のその言葉にそこに居た全員が驚いた。

「何だって!?」

エトワールは顔を上げた。

「お前の母親はここに嫁いで来た時には既にお腹にお前を身籠ってやがった。まあ、別に私はエフェが好きで結婚したわけではないからどうでもよかったが。“世界の平和”だの国民の幸せ“など鬱陶しい奴だったからな。」

エトワールはデグラス皇帝と血は繋がっていないと分かったが複雑な心境だった。

「つまりお前の母親は純粋そうなふりして、とんだアバズレ女だった。まあ、でもお前の血を飲み今の魔力を持てたのだから感謝はしないといけないな。」

そう言って皇帝はニヤリと笑った。

「おっと、こんな無駄話してる場合ではないな。おい、不死鳥を捕まえろ。それとハンナ、いい子だ。こちらにおいで。でないとサーブル達がどうなっても知らないからな。」

皇帝は兵士に不死鳥を捕まえる様に命じた。兵士たちは見た事もない大きく美しい鳥を捕まえる事を少し躊躇った。

「皇帝。ここは私が先にハンナ嬢を頂きます。」

ロスタルはそう言うとハンナを抱きかかえ、不死鳥の方に歩いた。

「おのれ!ロスタル!何をする気だ、ハンナを大人しく渡せ!」

「ロスタル侯爵!何をする気なのですか!?」

ロスタルは皇帝とエトワールの呼びかけにも一切反応しなかった。

「紫の不死鳥よ。あの時の復讐の為に今、ここにお前を呼んだ。私をあの場所へ連れて行っておくれ。」

ロスタルが紫の不死鳥に向かってそう言うと、大きく翼を広げ何回か羽ばたいた。すると黒い小さな穴の様な物が出来て少しづつ大きくなった。

「何だ、あれは。」

サーブルがその穴に気付いた時に一気に大きくなりハンナ、ロスタル、皇帝、アンベス、コットを飲み込もうとした。

「ハンナお嬢様―!」

サーブルは必死で呼んだが、ハンナが振り向こうとする間もなくその穴に吸い込まれた。

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